プロローグ
「ラウス!今回の作戦どうしたらいい?」
「T72戦車5台を主軸とし、先鋭部隊で敵陣を攻める。後方支援は魔法部隊を使いレイジを撃たせろ。その護衛はビースト部隊に任せる。」
「了解!ラウスはどうするの?」
「俺も先鋭部隊として敵陣を突く。俺が戦死後はムイ、お前に指揮を任せる。では作戦を伝えろ」
作戦が開始し、たった8分20秒の間で戦争は終了を告げた。この出来事が後に500秒戦争と言われ、その戦闘指揮者であるラウス・エヴェレットは他国へと名を轟かせた。
この世界は知識と技術によって決まる世界。だがたった1年の期間があるだけで最弱の国が最強の国を倒すことだってある。それを実現するためには異世界の人を手に入れ、異世界知識と技術を取り入れる必要がある。
「お、お前らはまた異流者を手に入れたのか!くそっやはり勝てないのか…」
「それはあなたもご存知の通り運次第でしょう?ね、ラウス」
「そうかもしれんな。だがだからと言って運だけで済ませては知識をくれた異流者や技術者、そしてそれを学んだ人達に失礼だな。運がないのなら今ある技術を進化させる。努力をして、来る時まで備えるのが強者になる為の秘訣だと俺は考えているがな。」
「くっだからと言って勝てるわけ…。」
「ラウス、この人どうする?殺す?」
チトセは少し言葉の選び方が雑だから相手を恐怖させることも、しばしばあるのだが戦闘技術はなかなかのもので我らの国を強国へと導いた1人でもある。でも扱いに困ると先鋭隊などから苦情がはいるのは何とかしてもらいたいところだ
「はぁやめろチトセ。トップを殺せば国は滅び多くの人が行き場を失う。」
「それくらいわかるでしょう」
「ムイうるさい。」
「うるさいって何よ!私より少しこの世界に来るのが早かったからって調子乗るんじゃないわよ!」
「乗ってない」
「乗ってる!」
この2人がこのやりとりを見てると昔のことを思い出す。戦場でのことを。俺が思考に耽り、2人が何度かやり取りを繰り返しているうちに敵の撤退が終わっていた。そろそろ止めて帰らなくては。幾ら自国領とはいえ帰るのにも指揮をとりつつ帰らねばならないのでどうしても時間がかかると容易に想像はつく。
「お前らそろそろ…静かにしろ!異流者が来るぞ。服と姿勢を正せ」
背後に皆を立たせ、異流者を待つ。
耳を澄ますとひゅーっという音が空から聞こえる。そしてドン!!という衝撃音とともに俺の前に人間が降ってきた。生まれてから誰しも一度は経験することだ。なにも驚きはしない。この世界で生まれ育った人ならな。そして落ちてきた人はみんな揃って同じような顔をする。
"ここは何処だ"って顔を
ムイとチトセも同じだったな。
俺が居るこの世界は他の世界から飛ばされて来る異流者…要は異世界転移者、漂流者が何らかの理由で訪れる世界だ。それからまた異世界へ行く者、自分の世界に帰る者も少なくはない。この異流者のおかげでいろいろな文化を取り入れ、様々な技術を発展させ先ほどの戦争をしている世界でもあるのだが、このような異流者を毛嫌いする人達も少数ではあるが存在する。そして俺もその一人だった。弟妹を亡くすその日までは。
この世界には幾つかの決まり事がある。どんなに毛嫌いしてる人でもそれを破れば刑罰に問われる。だから破る人はそうそういない。そしてその1つが初めて来た異流者に対してまず、言わなければならないことがある。
「ようこそ。ノートメアへ」
この世界の名前と歓迎の言葉だ。当たり前の事を当たり前にってやつだ。
それからある程度の情報を伝え、近くにある自国の都市への道順を教える義務がある。理由はノートメアの発展、自国の成長に繋がるかもしれないということが理由になる。都市ごと独自の発展をし、都市同士の戦争があるからだ。まだこの異流者は知らない。というよりも知らせていない。
「情報ありがとう!俺の名前はコジョウ・ヤスケ。また何処かであったらよろしく!」
そう言ってコジョウは都市の方へ走り去って行った。出会うことはもうないだろうけど、いい情報を伝えてくれよと心の中で呟く。
「はぁ、都市管理長に報告しないと。」
これも義務の1つ。正直言って面倒くさい。だがサボるとさらに面倒くさいことが起きる。
「帰るぞ。ムイ撤退命令を出して置いてくれ」
「了解です!」
さて帰ったらオンラインゲームというのをしよう。つい1カ月前に来た異流者がそのゲームというものの知識がすごく一度遊んでみるととても面白かった。なんとこのノートメアの何処かにもその技術が広まっていたらしくたくさんのプレイヤーがいる。
そして今日がそのサービス開始の日である。
「ラウスどうしたの?」
「いや、ちょっとな」
「悩み事あるなら相談乗る」
「ありがとう。問題ないぞチトセ…っとまたか。2人目だ。」
また上空から風切り音が聞こえる。1日に2人も出くわすなんて滅多にないのだけれど。ドンという衝撃音とともに現れたのはいるはずのない。いや、いてはならない人物。
俺の弟妹だった。
「「ただいまお兄ちゃん」」