6月27日 三日目
三日目だな
目が覚めたら、目の前におにぎり、デジカルビ(わさび)が置いてあった。
あたりを見渡すと彼女はいなく、口も解放されていた。
とりあえずおにぎりを食た。彼女の買ってくるおにぎりは妙に美味しかった。だから今でも彼女の買ってきていたおにぎりをたまに買って食べているんだ。
おにぎりを食べ終わると、この荒廃したマンションらしい場所を探索した。
最初は彼女がよく眺めているひびの入った窓をのぞいてみた。
見晴らしはよく監視する場所としては最適だった。
しばらく眺めていると、僕の家があった。ここから家は近く、歩いて十分程度の場所だった。
こんなに近くても、行ったことのない場所はよくわからないものだと思ったよ。昼と夜でも景色は違って見えるよね。
眺め終わって、他の場所へ行こうとしたとき、物音と少女の声が聞こえた。
好奇心で行ってみると、やはりそこには幼い少女がいた。
少女は僕に気づいていないらしく、ガラクタやガラスの破片で遊んでいた。
僕が声をかけると、少女は怖がることもなくあいさつをした。
軽い自己紹介をすると、少女は殺人犯である彼女の娘で名前は照子で六才ということがわかった。久しぶりの会話だった。因みに殺人犯の名前は明子だ。
少女……照子はとても明るく、元気だった。その頃先生はとてもひねくれていて、彼女とは正反対だった。そんな僕だから、僕は照子を遠ざけた。
僕が元の位置に戻って寝転がっていると照子は近寄ってきて一緒に遊ぼうと言ってきたんだ。でも僕は彼女を無視した。すると照子は話しかけるのやめて、僕の顔をじっと見つめるようになったんだ。
先生はその頃あまり人にそんなふうに見られることはなかったからね、どうしたらいいかわからなくなって彼女と目を合わさないようにしたんだ。
しばらくそんなやり取りが続いた後、照子はなぜ僕が暗い顔をしているのか尋ねてきた。僕は誘拐されているからと答えた。でもすぐに照子はお母さんいないからいつでも逃げられるよと言い返してきた。照子はまだ幼いのに不思議なくらいしっかりしていたんだよ。
照子の返した言葉に僕は生きるのが辛いからだと答えなおした。すると照子はなんでと聞き返してきた。僕は具体的にどう辛いか、なぜ辛いかを言うことは出来た。でも、辛いものは辛いんだとうっとうしいように照子に言い放ってしまった。
※ここから未修正です。
ガラクタを積み木にしたり、それを崩さないように一つずつ取る遊びをした。
ガラスの破片は危ないことを教えた。
それでも、照子はガラスやびんの破片の端を削ってきれいな石みたいにした。
たくさん並べるときれいだった。
僕はガラクタが楽しい遊び道具になっていくことに感動した。
世の中には小さな幸せが散りばめられているのだと。
僕の世界観が変わった。
辛いと思い込んでいるから、こんな小さな幸せが見えないのだと感じた。
このとき照子は僕に少し幸せをくれた。
明子は手に持っていたレジ袋からおにぎりを二個取り出し、僕たちにくれた。
おにぎりは、マグロわさび入りとマグロだった。
僕はマグロのおにぎりを照子に渡して一緒に食べた。
それからはまた照子と一緒に遊んで、気がついたら疲れて寝てしまっていた。
後から気づいたが、今日は土曜日で幼稚園が休みだったから照子がここにいたらしい。