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12 霧島さん

 沢木くんが、三年生の美人系女子のトップだ、と称していた霧島さんだが、実は今日、彼女と初めて会話をした。


 三組と二組が、体育で合同授業を行ったのだ。

 競技はバレーボールで、三組と二組が半分ずつに分かれてチームを組んだ。そのとき、ぼくは三組である霧島さんと同じチームになったのである。

「きみが、小岩井さんと妄想電波カップルとしてコンビを組んでいる、平井くんだね」

 霧島さんはやはり美人で背が高く、おっぱいも大きかった。中三なのに、たぶん、Eカップくらいはある。


「わたしはあんたみたいな、むっつりすけべが大嫌い。男子はみんな平井くんみたいに、表では性欲をあらわにしないくせして、実はわたしのおっぱいに見とれている。わたしはこんな、大きな胸に生まれたくなかった」

「残念だが、男子の全員が全員、君みたいな、でかいおっぱいが好きだというわけではないよ。いくら顔がいいからと言って、霧島さんは少々自意識過剰だな」

 ぼくは偉そうに、霧島さんに向けて語ってやった。ぼくは、昼休みの沢木くんの助言によって、またひとつ性への理解を深めたのだ。

 すると霧島さんが、きっ、とぼくを睨んだ。

「とにかく、わたしはむっつりすけべが嫌いなの。オープンすけべの方が、よっぽどまし」

「オープンすけべ。剣道部の田宮くんみたいな?」

「田宮ぁ? あんた、わたしを馬鹿にしてるの? あんなのただの猿じゃん。竹刀と一緒に、ナニも振ってるようなやつでしょ」

「美人なくせに、すげえ下品なことを言う女だ」

「わたしは、知性のあるオープンすけべがいい」

「知性のあるオープンすけべ。ならば、沢木くんみたいなやつか」

「沢木くん? 知らないなぁ。どんなやつ?」

 ぼくは、コートの中で華麗にクイックスパイクを決める沢木くんを指さした。性に活発な沢木くんは、運動の方もそこそこに活発なのであった。

「あれが沢木くん? 格好いいじゃん。あの人、わたしに紹介して」

 霧島さんは、有無を言わさぬ形相でぼくに命令した。




 放課後になって、ぼくは小岩井さんに、今日の霧島さんとのやりとりを教えてあげた。

 ぼくと霧島さんとのやりとりを聞いた小岩井さんは、きらきらと目を輝かせた。

「なんて、夢のあるシチュエーションなのかしら」

「そう?」

「だって昼休み、沢木くんは、霧島が一番かわいい、霧島愛してる、霧島ちゅっちゅ、とか言ってたのよ」

「後半は確実に言ってないと思う」

「つまり、沢木くんと霧島さんは両想いってことになるわ。絶対に付き合うわよ、あの二人。私の妄想もエンジン全開だわ。きゃーっ」


 小岩井さんは、なんだかものすごく興奮していた。ぼくは、沢木くんが、永遠に性の謎に酔いしれたいタイプの男だと知っているので、彼がほいほいと理想を手に入れるとは考えにくかった。しかし、ぼくの予想を裏切って、本当に付き合ってしまうということもありうる。

 霧島さんは、明日沢木くんに話しかけてみる、と言っていた。

 なんだかぼくまで、二人の行く末が気になってしまうのだった。

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