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とある男の長い人生  作者: あという人
第1章

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7/7

失意

事件は、和平締結から一年後に起きた。


聖域中央区。


夜。


セレナは魔族側使節団の代表として滞在していた。


リオルフは、その夜だけ任務で外れていた。


だから、


間に合わなかった。


爆音

悲鳴。


リオルフが駆けつけた時には、既に建物が崩れていた。


強烈な魔力反応。


暗殺だ。


しかも内部犯。


リオルフは瓦礫を掘り返した。


狂ったように。


血だらけになりながら。


そして、


見つけた。


セレナだった。


腹部を深く貫かれていた。


呼吸が浅い。


血が止まらない。


リオルフの頭が真っ白になる。


「セレナ!!」


彼は光魔法を発動した。


反動も気にせずありったけの魔力を使った。


だが。


乱れる。


魔力が震える。


術式が崩れる。


焦れば焦るほど、制御が壊れる。


「動け……っ!!」


魔法陣が安定しない。


光が散る。


治癒が届かない。


セレナが弱々しく笑った。


「そんな顔、しないで。」


「しゃべらないで。」


「……リオルフ。」


彼女が彼の頬へ触れる。


冷たい手だった。


「あなた、ちゃんと……」


咳。


血。


それでも彼女は笑おうとした。


「生きて。」


リオルフは叫ぶ。


「嫌だ。」


初めてだった。


彼が感情をむき出しにしたのは。


「死ぬな…!」


「頼むから……っ。」


光魔法がまた崩れる。


発動できない。


届かない。


救えない。


セレナは静かに彼を見た。


悲しそうに。


でも優しく。


「……好きだった。」


その言葉を最後に。


彼女の手から力が抜けた。


リオルフは、しばらく壊れた。


騎士団長を辞した。


聖域を離れた。


誰にも会わなくなった。


ただ、旅をした。


師からもらった剣はあの夜折れてしまった。


だから、


彼女の剣を持って旅をした。


それは彼女の形見でもあったから。


彼女の技を忘れないために。


彼女を救えなかった自分を許さないために。


苦手な光魔法を学んだ。


狂ったように毎日図書館に通った。


治癒術を研究した。


薬学を学んだ。


人体を調べた。


再生魔法。


浄化。


解呪。


蘇生理論。


「もう誰も救えないのは嫌だ。」


その執念だけで、生き続けた。


五百年。


長い時間だった。


彼は各地で“名もない薬師”として過ごした。


人を救い、


病を治し、


戦場を巡った。


たくさん感謝もされた。


だが、


心のどこかはずっと止まっていた。


湖畔。


夕暮れ。


笑う彼女。


そこから、ずっと。


進めなかった。


だから、


五百年後。


彼らに出会った時。


彼の時間は、ようやくまた動き始めたのだった。

ここでいったん区切りとさせてください。

ここからはメインストーリーを先に仕上げます。

それが終わったらこちらに戻ってくるかもしれませんし、並行して投稿するかもしれません。

何かしらの投稿は続けますので少々お待ちを。

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