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プロローグ
晩夏の空は、夕暮れになるとやけに赤い。
その赤さを見るたびに、胸の奥がざわつく。
この数年は、秋に入っても暑さが酷いのに、風には、どこか秋の匂いが混ざっていて、季節が変わる前の静けさが漂っている。
彼女はよく
「優しいね」
と言ってくれた。
それは褒め言葉だと思っていたし、実際に嬉しかった。
怒らないこと。
合わせること。
相手を優先すること。
それが恋を長続きさせる秘訣だと信じていた。
まさか、その優しさが――
晩夏の終わりと一緒に、彼女の心も遠ざけているなんて、思いもしなかった。




