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LUMINESCENCE:PHANTOM ECHO  作者: ハナサワリキ
四・斜陽
36/48

絶対領域

「さぁて、そんじゃとっとと片付けちまうか」


 ジェイクがニヤリと笑う。


「そうね、私、お風呂入りたいわ」


 ナディアも余裕の笑みを浮かべる。


(こいつら……)


 クロウの強さを知りながらも、この二人の態度には不思議な頼もしさがあった。


「フンッ、犬が三匹に増えたところで……!」


 クロウが地を蹴る。瞬時にジェイクへと詰め寄り、鋭い手刀を振り上げる。


「ジェイク! そいつの手は…!」


 龍之介が叫ぶ。


「!」


 ジェイクの耳に龍之介の警告が届いた瞬間、彼はパルスマグナムの銃身を盾にするように構えた。


 バチッ——!


 銃身がクロウの手刀を弾く。


「チッ……!」


 クロウが僅かに怯んだ、その背後。


「隙あり♡」


 ナディアがワイヤーで瞬時に回り込み、パルスナイフを振り下ろす。


「ぐあっ!」


 刃がクロウの背中をかすめ、彼は反射的に飛び退る。


 ——その先には、ジェイクのパルスマグナムが狙いを定めていた。


「ほらよ!」


 ——ズドンッ!!


 パルスマグナムの弾丸が炸裂し、クロウの胸部に直撃する。


「ぐっ……!」


 クロウの体が大きく吹き飛び、地面に転がる。


(こいつら……こんなに強かったのか……)


 自分が苦戦した相手に対し、ジェイクとナディアは息の合った連携で的確に攻め込んでいた。

 その圧倒的な手際に、龍之介は呆気に取られる。


 地面に転がったクロウが苦しげに身を起こし、歯を食いしばる。


「くそっ……なんなんだ、あいつら……適合者でもないのに……」


 その言葉を呟いた瞬間、クロウの目がわずかに見開かれる。


「!……フフフ……そうか、適合者じゃない……」


 次の瞬間、彼は不敵な笑みを浮かべた。


 ジェイクがそれを見て眉をひそめる。


「なんだあいつ? 笑ってやがるぞ」


 ナディアが肩をすくめ、軽く笑う。


「頭打っておかしくなっちゃったんじゃない?」


 クロウは腕にはめたATDに似た端末を操作する。

 その指の動きは自信に満ちていた。


「フハハハ……終わりだ!」


 言葉が放たれた瞬間——


 辺り一帯に淡い光の波が広がる。空気が揺らぎ、空間そのものが歪むような錯覚を覚える。


「うおっ……これは……」


 ジェイクが咄嗟に腕で顔を庇う。


「……入り口の時と同じ……」


 ナディアの顔が苦痛に歪む。その瞬間、2人は同時に苦しげに呻き、膝をついた。


「ジェイク! ナディア! どうした!?」


 龍之介が驚きの声を上げ、駆け寄ろうとする。


 クロウは勝ち誇ったように口角を吊り上げる。


「フフフ……ルミナスフィールドだ」


「ルミナスフィールド……!?」


 龍之介の目が見開かれる。


 クロウは余裕の笑みを浮かべながら、腕の端末を操作する。


「ああ、そうだ」


 龍之介を見据え、低く嗤う。


「適合者の戦場支配を目的として作られた環境制御装置さ」


 フィールド内の空気が圧縮されるような感覚が広がる。ジェイクとナディアの表情が苦悶に歪む。


「フィールド内では電子機器が無効化され、発生した重力場と神経への負荷により——」


 クロウが指を鳴らすように端末を操作した瞬間、2人の身体が僅かに痙攣する。


「非適合者の行動を著しく制限する」


 ジェイクが奥歯を噛みしめ、苦しげに肩を震わせる。


「くそっ……これは……っ!」


 ナディアも額に汗を浮かべながら立ち続けていたが、明らかに呼吸が乱れている。


「……つまり…この中は我々適合者の独壇場と化すわけだ!」


 クロウが不敵な笑みと共に、龍之介を睨み付ける。


「なるほど……じゃあ結局、俺がお前をぶっ飛ばすしかないってことか」


 目の前のクロウを睨み据える。


 クロウは嗤うように鼻を鳴らした。


「フンッ……やれるものならな」


 背後でジェイクが苦しげに声を上げる。


「龍之介……!」


 龍之介は振り返らず、ゆっくりと息を吐いた。


「大丈夫だ、やってやるよ」


 足元に力を込め、構えを取る。


「——あんた達も、LUXも、そして綾も……俺が守る!」


「ハッハハ!犬っコロ一匹で……何が出来る!?」


 クロウの瞳が鋭く光る。


 瞬間、クロウが地を蹴った——!!


 龍之介の視界からクロウの姿が消える。


 次の瞬間——


 ——ヒュンッ!!


 強烈な突風と共に、背後に鋭い殺気。


(後ろ——!!)


 龍之介は反射的に身を屈める。


 直後、クロウの手刀が空を裂く。わずか数センチ差、肩を掠めるようにしてかわす。


 龍之介は即座に反撃。ナックルを装着した拳を振り上げる。


 ——ゴッ!!


 衝撃音と共に、拳がクロウの腕に弾かれる。


(硬い……!)


 瞬時にバックステップし、再び間合いを取る。


 しかし、クロウも間髪入れずに動く。


 ——ズバッ!!


 低く鋭い蹴りが龍之介の足元を狙う。地を払うような軌道。


(読める——!)


 龍之介は跳躍。


 わずかに空中で体を翻し、クロウの蹴りをかわしつつ、真上から拳を振り下ろす。


 ——ドンッ!!!


 拳がクロウの肩に叩き込まれる。


 「……ッ!」


 クロウの体がわずかに沈む。しかし——


(手応えが薄い!?)


 龍之介が驚く間もなく、クロウの足が龍之介の腹へと伸びる。


 ——ドガァッ!!


 龍之介の体が吹き飛ぶ。


 宙を舞い、背中から地面へ激突。


(クソ……このままじゃ……!)


 すぐさま立ち上がる。


 クロウも、すでに間合いを詰めていた。


 ——バキィッ!!!


 拳と手刀がぶつかり合い、衝撃波が周囲に広がる。


 龍之介のナックルがクロウの腕を弾き、クロウの電撃を纏った手刀が龍之介の拳を僅かにかすめる。


 ——ジリッ……!!


 空間が歪むほどの強烈な摩擦音。


 互いに跳び退る。


 同時に地を蹴り、再びぶつかり合う。


 ——ゴッ!!  ——バシュッ!!  ——ドンッ!!


 鋭い拳撃と回し蹴りが交差し、衝撃が弾ける。

 拳と拳、蹴りと蹴りがぶつかり合うたびに、地面が小さく揺れる。


 互いに譲らない。


 呼吸は荒く、汗が額を伝う。


 龍之介が拳を握りしめ、クロウが静かに姿勢を低くする。


 視線が交差する。


 ——ピクリ。


 どちらが先に動くのか——


 空気が張り詰め、戦場が沈黙に包まれる。


 風が吹き抜け、砂塵が舞い上がる。


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