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宝石の輝士団クリスタルナンバーズ シリーズ

宝石の輝士団 クリスタルナンバーズ SIDE STORY -ルスカンティア王国、オリンスとバルビスト-

作者: 青船水宝

この度「短編」に挑戦しました。

クリスタルナンバーズ本編では書き切れなかった話を「サイドストーリー・外伝」としてお届けします。


今回話の中心となるのは、緑色の髪の騎士(騎兵)オリンスと、彼の友人であるバルビストです。


<主な登場人物の紹介>

◎オリンス・バルブランタ(男・28歳)

・緑色の髪をしているルスカンティア王国騎士団に所属する正団員(※1)である騎士。

馬にまたがり騎兵として戦うが、戦局によっては馬を降りて戦うこともある。使う武器は槍と斧。緑色が多い鎧と兜で全身を覆っている。愛馬の名はベリル号。

地理が好きなことから他国にも強い興味を持っており、ワトニカ出身であるナハグニや鵺洸丸に声をかけ、彼らとも親しくなった。

本編(「宝石の輝士団 クリスタルナンバーズ -世界の遺産を巡る遥かなる旅路-」)における重要人物の一人。

○セルタノ・リクゼストン(男・33歳)

・オリンスと同様、ルスカンティア王国騎士団に所属する正団員。

研修を終え正式に騎士団に配属されたオリンスを新人の頃から面倒を見ていた先輩の騎士。オリンスから見れば騎士団の先輩ではあるが、関係としては先輩後輩というより友達に近い。そのためオリンスもセルタノに対し先輩などとは使わず、普通に名前で呼んでいる。

馬にまたがり弓騎兵として、ときには馬を降りアーチャーとして戦う。愛馬は白馬で名はグレビー号。

○ナハグニ・按司里あじさと(男・31歳)

・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。

ある事情により地元のリュウキュウ藩にいるのが嫌により、昨年の11月ワトニカから遠く離れたルスカンティアへとやって来た。次の12月から準団員(※1)としてルスカンティア王国騎士団に所属している。

愛用する刀の名は「グスク刀」。

日本の世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(文化遺産 2000年登録)からイメージしたキャラ。沖縄県出身のイメージ。

鵺洸丸やこうまる(男・30歳)

・ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。

鵺洸丸は忍びとしての名前で、彼の本名は、「タケル・南嵐みなみあらし」。

修行のため昨年の5月ワトニカから遠く離れたルスカンティアへとやって来た。次の6月から準団員としてルスカンティア王国騎士団に所属している。

日本の世界遺産「小笠原諸島」(自然遺産 2011年登録)からイメージしたキャラ。東京都小笠原村出身のイメージ。

○バルビスト・ジャンドレック(男・30歳)

・斧で戦うルスカンティア王国騎士団の正団員。

オリンスやセルタノたちと仲がいい。

二人よりも魔力が高く、魔力を使ってトリッキーな戦い方もできる。

性格は強気なほう。

王国西部オジルン・オルジョーグ村(※2)出身。

故郷の村から王都に来たのは2年半前で、その後セルタノやオリンスたちの世話になった。

森の中にある村で育ったため、緑や木々を愛している。

○アニフィール・カムドディアル(女・25歳)

・王都の土産物店で働く女性。バルビストと同郷。

バルビストと付き合っている。

○ラグラード・カドルック(男・56歳)

・ルスカンティア王国騎士団団長。国王や大臣たちから厚く信頼されている。


<名前のみの登場>

△ララーシャ・エルゴンジャルム(女・当時12歳)

・オリンス(現在28歳)が小学校6年生の時、好きだった女の子。

瑠璃姫るりひめ(女・22歳)

・ワトニカ将国サツマダイ藩、大名の娘。

「瑠璃姫」は愛称で、彼女の本名は、「ルリコ・奄美大野あまみおおの」。

日本の世界遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(自然遺産 2021年登録)からイメージしたキャラ。鹿児島県出身のイメージ。

△クレード・ロインスタイト(男・?歳)

・青色の髪をしている本編の主人公である魔法剣士。

魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身する。

過去の記憶をいろいろなくしている。

ここは惑星ガイノアース。

ケルビニアン暦2050K年2月中旬。

魔法大陸ムーンリアス、ルスカンティア王国にて。


国王の居城であるジルスゴール城(※3)内の兵士訓練場で、騎士団員のオリンスとバルビストが斧の稽古をしていた。

鎧を着た二人は訓練用の斧を持ち、


オリンス「ハハァッ!」

バルビスト「そんなものか、甘いぞオリンス!」

バルビストはオリンスの斧を弾き飛ばし、勝負がついた。


オリンス「はぁ…やっぱりバルビストには敵わないか…」

バルビスト「もっと斧を振って腕を上げることだな」

 「鍛錬していけば強くなるさ、お前ならな」

オリンス「ありがとう、期待してくれて…」


オリンスはその後バルビストの期待に応えるため、何度も斧を振り日々鍛錬していた。

オリンス「ウォォッ!」


そしてとある日、オリンス・セルタノ・ナハグニ・鵺洸丸・バルビストの5人は、兵士たちの休憩所で話をしていた。

3ヶ月前ワトニカに来ていた侍ナハグニは、


ナハグニ「いやあ、さすがはワトニカから遠く離れた異国の地でござるなあ」

 「休みの日に土産物屋に行ってみたのでござるが、象の糞で作られた紙が売っていたでござる」

鵺洸丸「糞で紙を作るとは…」

 「ワトニカではない発想でございまするな…」

オリンス「草や果物とかを食べる象の糞には繊維質が多く含まれているからね」

 「洗って加工すれば、紙も作れるんだ」


バルビスト(心の中で)「(土産物屋か…二十日の日はなんとしても会いにいかねぇとな…)」

 「(せっかくお互い休みの日なんだし…)」


セルタノ「何だ、バルビスト」

 「アニフィールのことでも考えてんのか?」

バルビスト「お見通しってわけか、セルタノ」


ナハグニ「確かアニフィール殿はバルビスト殿のうむやー(※4)でござったな」

 「愛してくださる女子おなごがいるとは実に羨ましき!」

 「ああ、拙者にもうむやーがいてくださったら…」

セルタノ「遠慮なく堂々と生理のことを聞く、お前じゃまず無理だと思うがな」

バルビスト「それもそうだな、侍ってのはデリカシーってもんがないのか?」

鵺洸丸「大和魂を持った紳士的な侍は大勢おりまする…」

 「この者一人だけで侍を判断するのは、ちとお早いかと…」

ナハグニ「鵺洸丸殿!それは遠回しに拙者をバカにしているんでござるか!?」


あれこれ話すナハグニたち4人だが、オリンスは、

オリンス(心の中で)「(うむやー、つまり「恋人」ってことか…今の俺には縁がなさそうだな…)」

 「(俺の中にララーシャちゃんとの思い出がある限り…)」


数日後、ジルスゴール城の会議室では、

ルスカンティア兵①(隊長格)「伝令隊の報告によると、地元民にとって聖地とされるミジケルダの集落跡地(※5)に大量の魔獣が住み着いたとのことです!」

ラグラード「ミジケルダ、森の中の聖域か…」

ルスカンティア兵①(隊長格)「文化的に貴重な聖地の奪還、周辺への被害を防ぐため、魔獣たちを早急に駆除する必要があります!」


ルスカンティア兵①(隊長格)「騎士団長!どうか我ら王都の騎士団に遠征の許可を!」

ラグラード「分かった。兵を送り急ぎ対処しよう」

ルスカンティア兵①(隊長格)「ハッ!ありがたきに!」


エリック(部隊長の)「騎士団長!この度の戦い、私めに指揮をお任せください!」

ラグラード「いいだろう。エリックに遠征部隊の隊長を任せるとする」

エリック(部隊長の)「誠にありがとうございます!」

 「このエリック、騎士団長のご期待に必ずや応えてまいります!」


王都騎士団の部隊はミジケルダの集落跡地に向けて遠征することになった。

部隊の中には、オリンス・セルタノ・ナハグニ・鵺洸丸、そしてバルビストたちもいる。

三日後、遠征部隊は王都を出発した。


道中、遠征部隊は騎士団の砦で一泊することになり、そこでオリンスやバルビストたちは、


バルビスト「思えば急な話だよな」

 「おかげでアニフィールに会ってる余裕もなかった…」

鵺洸丸「アニフィール殿が働く土産物屋は城から離れておりますからな…」

 「容易に会えぬことはそれがしたちも存じておりまする…」

ナハグニ「顔を合わせぬまま王都を出てしまったでござるが、今回は緊急事態。致し方ないところもあるでござるよ」


セルタノ「バルビスト、今日はまだ遠征一日目だ」

 「降りるんだったら今のうちだぜ」

バルビスト「バカ言わないでくれよ、セルタノ」

 「兵士である以上戦うことが優先だ」

セルタノ「それは確かだが、お前に何かあればアニフィールが悲しむ」

 「恋人同士ならそこは弁えていると思うんだが…」


バルビスト「心配してくれて悪いな、セルタノ」

 「でもこの間のサルムンド・デルタ(※6)の戦いだって生き延びたんだ」

 「今度も生き残れる自信はあるぜ」

セルタノ「その言葉、間違いはないか?」

バルビスト「絶対に戦死なんかしねぇよ」

 「アニフィールへの想いがある限りな」


オリンス「バルビストはすごいよ」

 「愛する女性を生き抜く糧にするなんて、今の俺にはない考えだからさ…」

バルビスト「オリンス、お前もいい加減ララーシャちゃんとの未練断ち切れよ」

 「アラサー男が小学生時代の事ばかり気にしててもしょうがねぇぞ」

 「もう15年以上前の話じゃねぇか。今振り返って何かできるのかよ?」

オリンス「そ、そうだよね、もっと今と向き合わなきゃダメだよね…」


バルビスト「まあでも同じ故郷の女を愛するお前の気持ちもよく分かるぜ」

 「同郷だったからこそ、俺はアニフィールと付き合うことができたんだからな」

鵺洸丸「アニフィール殿は都会に憧れ、地方の村から王都へ引っ越したのでございましたな…」

バルビスト「ああ、俺と同じ理由なんだよ…」


こうして夜は過ぎた。


数日後、遠征部隊はミジケルダの集落跡地にたどり着き、


エリック(部隊長の)「この集落跡地は地元民にとっては聖地!」

 「魔獣たちの好きにさせてはならんぞ!」

ルスカンティア兵②(小声)「(でかい声だな。エリック部隊長も気合が入っているよ)」

ルスカンティア兵③(小声)「(聖地も部隊も被害を出さずに勝利すれば、隊長にとっては実績になるからな)」


オリンス(心の中で)「(この感じはなんだろうか…)」

 「(部隊長の名前と同じエリックっていう人とこの先出会いそうな気がするんだよなあ…)」


聖地に巣くう魔獣たち「ウガァ…」

エリック(部隊長の)「ルスカンティア王国騎士団出陣!魔獣どもから聖地を取り返すのだ!」

ルスカンティア兵たち「オーッ!」


集落跡地での戦いが始まった。


牙犬型魔獣たち「ウガガン!」

セルタノ「弓騎兵の俺だが、森の中ではアーチャーとして勝負してやる」

 「かかってこい」

牙犬型魔獣たち「ガーガッ!」

魔獣たちがセルタノに気づき襲いかかろうとしたが、

セルタノ「確実に当ててやる」

弓を構えたセルタノは矢を放った。

シュン!(放たれる矢の音)

牙犬型魔獣たち「ガバッ!?」

矢が当たった魔獣たちは倒れていった。

セルタノ「俺は高い魔力を持っちゃいねぇが、弓の腕なら自信あるぜ」


大頭犬型魔獣「ジババッ!」

オリンス「顔は牙犬型に近いけど、頭が妙に大きいな」

大頭犬型魔獣「ジビーン!」

魔獣はオリンスに噛みつこうとしたが、

オリンス「こういう相手は口が開いたときがチャンス!」

オリンスは開いた魔獣の口の中に槍を突き刺した。

大頭犬型魔獣「ジ…ベ…」

槍の一撃により魔獣を倒した。

オリンス「見たか!ベリル号に乗らなくても槍兵そうへいとして俺は戦えるんだ!」


四足歩行型魔獣「ググー」

ナハグニ「大きな一つ目、円錐型の角」

 「野生動物とは似てぬ姿でござるなあ」

四足歩行型魔獣「インググー」

ナハグニ「森を好むというのなら拙者がヒルギをプレゼントいたそう」

四足歩行型魔獣「ヒンビー!」

魔獣は円錐型の大きな角を飛ばしてきたが、ナハグニは角をかわし、

ナハグニ「グスク刀・ヒルギグスクの太刀!」

四足歩行型魔獣「シャッバッグ!?」

まるでヒルギでできた木製の城に押し潰されるように魔獣たちは倒れた。

ナハグニ「これぞヒルギの力!マングローブとなり命を育む力!」

(ナハグニ・按司里あじさと、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」からイメージしたキャラ)


大きい芋虫型魔獣「キキーッ!」

鵺洸丸「吹き矢や手裏剣でも倒せぬとは、見事なまでの再生能力…」

芋虫型魔獣「キキールッ!」

鵺洸丸「中途半端にダメージを与えても回復するというのなら、体を丸ごと破壊いたそう…」

 「小笠原忍法:島トマト爆弾」

鵺洸丸は光る腕からトマト型の光弾を放ち、魔獣に当てた。

芋虫型魔獣「ギッ!?」

光弾に触れた芋虫型魔獣は全身をトマトのような赤くて丸い光に包まれた。

そして丸い光は爆発し、魔獣の全身を焼き尽くした。

鵺洸丸「甘味の詰まった島トマトの味わい、いかがでございましたか?」

鵺洸丸やこうまる、世界遺産「小笠原諸島」からイメージしたキャラ)


オリンスやナハグニたちのみならず、他の兵士たちも戦っていた。

ルスカンティア兵④(剣士)「自慢の剣で勝負してやるぜ!」

ルスカンティア兵⑤(魔法使い)「風の魔法で切り裂いてみせる!」


バルビスト「さてと、俺も一戦交えるとするか」

矢が刺さった魔獣たち「ウ…グ…」

バルビスト「アーチャーや魔法使いたちが先陣を切ってくれたからな」

 「残った奴らはこの斧で始末してやるぜ」

斧で戦う「アックスナイト」のバルビスト。

バルビストは斧を振り、次々と魔獣たちを斬った。


矢が刺さった魔獣たちを倒すと、別の魔獣たちが現れ、

爪犬型魔獣たち「ガーグ!」

バルビスト「長い爪を持つ爪犬型か」

爪犬型魔獣たち「ガングググ!」

バルビスト「爪が長い分、攻撃のリーチはテメェらのほうが上だが、俺には切り札もあるんだよ」

 「そらよ」

バルビストは重たい斧をブーメランのように投げつけた。

爪犬型魔獣たち「ベベッ!」

回転しながら飛ぶ斧に当たり、魔獣たちは次々と倒れていった。


ブーメランのように斧を投げるバルビストの技を見えていた兵士たちは驚き、

ルスカンティア兵⑥(騎士)「重量のある斧を軽々と投げられるとは!」

ルスカンティア兵⑦(アーチャー)「十分な魔力があるからこそできるのか!?」


投げた斧が手元に戻ってきた。

魔獣たちを倒したバルビストは、

バルビスト「大したことねぇ群れだな、わざわざ王都から部隊を送ってまで対処する必要があったのか?」

 「この程度なら地元の兵士たちだけでなんとかしろっての」


ルスカンティア兵⑧(鉄球騎士)「うぐっ!」

離れた所から声が聞こえ、

バルビスト「兵士の叫び声!?」


その時バルビストに素早い動きの魔獣が近寄り、

強い爪犬型魔獣「ウガーッ!!」

バルビスト「爪犬型!?まだ生き残ってる奴がいたか!」

バルビストは斧で魔獣を斬ろうとするが、魔獣のほうが素早く、バルビストは魔獣の長い爪に刺されてしまった。

バルビスト「ウォッ!?」

爪犬型魔獣「ガガガッ!!」

魔獣は長い爪でバルビストの体を貫いたが、バルビストは負けじと、


バルビスト「おい、この程度で俺に勝ったと思ったか…」

爪犬型魔獣「ガーズズー!!」

バルビスト「いい気になってんじゃねぇぞ…」

爪犬型魔獣「ガッ!?」

バルビストは斧を振り、体を貫く爪を斬った。

爪犬型魔獣「ビゲ!?ガバ!?」


そして長い爪を体から抜き、爪を魔獣に突き刺した。

爪犬型魔獣(刺された痛みで)「ガギャアー!!」

バルビスト「終わりだ…俺を刺したけじめだと思え…」

体から血を流すバルビストは持てる力を振り絞って魔獣を攻撃した。

バルビスト「ウオォォッ!!」

ザン! (斧で斬る音)

爪犬型魔獣(断末魔)「ゲ…ギ…」

バルビストは強い爪犬型魔獣を倒した。

バルビスト「ハァ…ア…」


バルビストのもとへ兵士たちが駆けつけ、

ルスカンティア兵⑥(騎士)「おい!大丈夫か!」

ルスカンティア兵⑦(アーチャー)「すまなかった、少し目を離してしまったばかりに…」

ルスカンティア兵⑨(騎士)「急いで聖侶(※回復役)を呼んでくる!」

 「もう少しだけ我慢してくれ!」

ルスカンティア兵⑩(女性騎士)「私は包帯や塗り薬を少し持っているわ!」

 「ひとまずこれで!」


バルビスト「いろいろありがとよ…」

 「だけど俺はここまでかもな…」

ルスカンティア兵⑥(騎士)「そんなこと言うな!気をしっかり持て!」

バルビスト「遺言になるかもしれねぇから、聞いてくれ…」


バルビスト「王都のドドマルス地区(※7)に「バオバブグレース」ってでかい土産物屋があるんだ…」

 「そこで働くアニフィールって女に伝えてくれ…」

 「「俺はお前なんか愛してねぇ」ってな…」

ルスカンティア兵⑩(女性騎士)「そんな縁起の悪いこと言わないでよ!」


バルビスト「木や森の匂いはいいもんだな…」

 「久々に嗅ぐと、気持ちがいい…」

 「もし生まれ変わったら、また森に囲まれた所で生まれたいねぇ…」

 「…」

バルビストは気を失った。

ルスカンティア兵⑥(騎士)「おい!しっかりしろ!」


オリンスもバルビストのもとへ駆けつけ、

オリンス(青ざめた表情)「バ、バルビスト…」


気を失ったバルビストであるが、回復魔法やその後の手当てにより、一命を取り留め、王都へ戻る途中馬車の中で目を覚ました。

馬車の中で休むバルビストのもとへオリンスたちもやって来て…


ナハグニ「まったく心配したでござるよぉ、バルビスト殿」

オリンス「でもこうして目を覚ましてくれて本当に良かったよ…」

 「今回の戦いでバルビストが死んじゃったら、俺たちだってやるせなかったよ…」

バルビスト「悪かったな…余計な気を遣わせちまって…」


鵺洸丸「こちらこそ申し訳ぬことをいたした…」

 「忍びであるそれがしがそばにおれば、バルビスト殿を陰から守れたというのに…」

バルビスト「気にすんな、鵺洸丸…」

 「戦場ではそれぞれの持ち場があるんだからよ」


セルタノ「バルビスト、お前は倒れる直前「俺はお前なんか愛してねぇ」って言ったそうだが、意味は全くの真逆なんだろ?」

バルビスト「「死んだ俺のことなんか忘れて、別の男と結婚して幸せになってくれ」ってことだ…」

 「だから俺のことを嫌ってほしい、忘れてほしいって意味で「愛してねぇ」って言ったんだがな…」

セルタノ「バカ野郎が、2年以上付き合っている女がそれを聞いて鵜呑みにするかよ」

 「自分に対して気を遣っているんだと、すぐ気づくだろうが」

バルビスト「まあそう考えりゃ、「愛してる」でも「愛してねぇ」でも伝えたいことは一緒だな…」

鵺洸丸「良いではないか、どのようなお言葉であろうと、バルビスト殿の確かな願いは「アニフィール殿が幸せになってほしい」ということなのだから…」

バルビスト「ああ、その通りだ」

 「こうして生き残った以上は、俺があいつを幸せにしてやらないとな…」


ここで話題が変わり、

バルビスト「そういえば、戦いのさ中、兵士の叫び声が聞こえたんだが、お前ら心当たりはあるか?」

 「俺の近くで戦っていた兵士の声だと思うんだが…」

鵺洸丸「確かバルビスト殿の近くにいたガレンドラス(※⑧の兵士の名前)という鉄球で戦う兵が爪犬型物の怪の攻撃により倒れたようで…」

 「まあその者も深く傷ついたようだが、一命は取り留めたと…」

バルビスト「そうか俺と同じだな。何であれそいつも助かって良かったよ…」

セルタノ「まあお前にしても、ガレンドラスっていう兵士にしても、まだ安静にしていたほうがいいだろうな」

バルビスト「そうだな、今はとにかく体を休ませないとな…」


一命を取り留めたバルビストであったが、まだ安静にしていたほうがいいということで、王都に戻った後は入院していた。

入院中バルビストは恋人のアニフィールに手紙を書き、少しの間会えないことを伝えたようだ。


そして月日も2月から3月に変わり、バルビストは病室の窓を見ながら、

バルビスト(心の中で)「(オリンスたちも今頃訓練中か…)」


その時病室のドアをノックする音が聞こえた。

ルスカンティア兵⑪(騎士)「バルビスト、お見舞いしたいという者が来ているぞ」

バルビスト「俺にお見舞い!?まさか!?」

ドアが開くと、そこには恋人のアニフィールがいた。


バルビスト「アニフィール!?来てくれたのか!?」

アニフィール「なんだい!あたいが会いにちゃいけないってのかい!?」

バルビスト「そうじゃねぇんだ、お前んとこの店は城やこの病院から離れてるんだし、そう簡単に来てくれるとは…」

アニフィール「確かに馬車賃はそれなりにかかったさ」

 「でもあんたに会えるんなら、そんなの安いもんだよ」

バルビスト「アニフィール、すまねぇな…」


アニフィール「でも良かった…」

 「あんたが元気そうであたいは何よりだよ…」

アニフィールは涙を流した。


そんなアニフィールをバルビストは優しく抱きしめ、

バルビスト「大丈夫だ…」

 「俺は死なねぇ、どこにも行かねぇ…」

アニフィール「バルビスト…」


それから数週間経った3月31日。

ジルスゴール城の城門前にバルビストとアニフィールがいた。

二人はこれからのことを話し合い、お互い仕事を辞めて故郷に戻ると決めたようだ。

二人は別れのあいさつとして、オリンス、ナハグニ、セルタノ、騎士団の仲間だった者たちに、


バルビスト「りぃな…お前らの戦いはまだこれからも続くっていうのに、俺だけ戦場から離れてしまって…」

ルスカンティア兵⑥(騎士)「気にしないでくれ、兵士として働くことだけが社会貢献じゃないさ」

 「世の中にはいろいろな仕事があるんだからな」


ルスカンティア兵⑩(女性騎士)「これからは今まで以上にアニフィールさんのこと大事にしなさいよ」

バルビスト「もちろんだ」

 「俺たちは無職になっちまったが、故郷に戻って一から出直すつもりだ」


オリンス「バルビスト、アニフィール、行くんだね…」

バルビスト「オリンス、お前は槍で戦うことが多いだろうが、斧も扱えるんだ」

 「鍛錬して斧の腕を上げてけよ」

オリンス「もちろんだよ」

 「俺もいつかバルビストみたく、斧をブーメランのように軽々と投げてみたいよ」

バルビスト「あの技を放つには結構な魔力がいると思うぜ」

オリンス「斧の鍛錬をして俺の魔力が上がるかどうかは分からない」

 「だけど俺は今よりも強くなりたいんだ。魔力だってもっと上げたいんだ」

バルビスト「それだけの気持ちがあるんなら、どこかで道も開けるだろうさ」

 「頑張れよ、オリンス」

アニフィール「あたいも期待してるよ、オリンス」

 「バルビストの分まで強くなっておくれよ」

オリンス「ありがとう、バルビスト、アニフィール」


バルビスト「ナハグニもありがとな」

 「お前は今日非番だっていうのに見送りに来てくれて」

ナハグニ「いやいや、遠征により本日お見送りできなかった鵺洸丸殿の分も兼ねているのでござるよ」


バルビスト「そういえば明日ワトニカのお姫様がこの城に来るって話だろ?」

ナハグニ「お越しになるのはサツマダイ藩の瑠璃姫様でござるよ」

 「きっとお美しい方に違いないでござる」


アニフィール「この国に異国の姫様が来るのかい?」

 「あたい、今初めて知ったよ」

バルビスト「高貴なお方が国に来ることを知れば、その命を狙ったり、誘拐したりするような悪いやからも出てくるかもしれないからな」

 「そういう情報はギリギリまで伏せておくこともある」

オリンス「だから瑠璃姫様の件は、二日前ルスコンドアの岩絵遺跡群(※8)まで遠征に出た鵺洸丸も知らないはずだよ」


ナハグニ「姫様も異国に来て戸惑うところもあるでござろう」

 「だから同じワトニカ人である拙者がしっかりと姫様のお世話をしなければ!」

バルビスト「ナハグニ、お前には悪いが嫌われる未来しか見えねぇぞ」

アニフィール(呆れながら)「下心見え見えだもんね」

 「そんなんじゃ、女性にいい第一印象は与えられないよ」


セルタノ「バルビスト、アニフィール、今度は観光客として王都に来いよ」

 「都会の風を感じたくなったときにでもよぉ」

バルビスト「セルタノ、お前には世話になったよ…」

 「遠い田舎町から来た俺の面倒を見てくれて…」

セルタノ「それも仕事のうちだ、気にすんな」

バルビスト「お前のことは本当は先輩として「セルタノさん」って呼ばなきゃいけないってのに…」

セルタノ「そういう呼び方をされたら俺は本当にお前の先輩になっちまうだろ」

 「お前とは先輩後輩の関係じゃなくて、友達でいてぇんだよ」

バルビスト「セルタノ…お前に会えて良かったよ…」


セルタノ「騎士団を辞める理由も、「自分が死んだらアニフィールが悲しむ」、「兵士やってりゃいつ死ぬか分からない。だから戦いからは遠ざかりたい」ってことだろ?」

 「アニフィールのためにもその気持ち忘れんなよ」

バルビスト「最後までいろいろありがとな…」

アニフィール「セルタノ!バルビストの恩人としてあんたのことは胸に焼き付けておくよ!」


オリンス、ナハグニ、セルタノたちと別れたバルビストとアニフィールは移動のため馬車に乗っていた。


(馬車の中で)

アニフィール「「無職になって故郷に戻って来た」なんて言ったら、父さん母さんもがっかりしそうだよ」

バルビスト「そこはうまくやっていこうぜ、俺とお前で」

アニフィール「そうだね、これからは二人で助け合っていかないとね…」


恋人アニフィールのために戦いから身を引いたバルビストだが、一方でオリンスたちやルスカンティア王国騎士団の戦いは続いていく。バルビストの言った通り。


数日後、オリンスたち騎士団は王国内のセレンゲティアの大草原(※9)に巣くう大量の魔獣たちを駆除するために遠征に出た。

そして大草原にたどり着いた遠征部隊は戦いを始め…


騎士団長ラグラード「ルスカンティア騎士団、出陣!これよりセレンゲティアの魔獣どもを一掃する!」


オリンスは愛馬ベリル号にまたがり、心の中で、

オリンス(心の中で)「(俺たちは負けない…今回の戦いも生き延びるんだ!)」


このセレンゲティアでの戦いを通じ、オリンスはクリスターク・ブルーに変身する魔法剣士のクレードと出会うこととなり……


ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

オリンスとクレードの出会いやその先の物語については、本編「宝石の輝士団 クリスタルナンバーズ -世界の遺産を巡る遥かなる旅路-」でご確認お願いします。

今後機会があればSIDE STORY(外伝)の短編もまた投稿しようと思っております。よろしくお願いします。


※1…イメージとしては、正社員と契約社員といったところ。

正団員は無期雇用の団員で、いわば正規の団員。準団員は有期雇用の団員で、半年ごとの契約期間(場合によっては更新可能)が定められている。

※2…村の名前の由来は、ナイジェリアの世界遺産「オシュン=オショグボの聖なる木立」(文化遺産 2005年登録)より

※3…城の名前の由来は、エチオピアの世界遺産「歴史的城塞都市ハラール・ジュゴル」(文化遺産 2006年登録)より

※4…元ネタは沖縄の方言。『うむやー』は「恋人」などの意味。

※5…跡地の名前の由来は、ケニアの世界遺産「ミジケンダのカヤの聖なる森林群」(文化遺産 2008年登録)より

※6…デルタの名前の由来は、セネガルの世界遺産「サルーム・デルタ」(文化遺産 2011年登録)より

※7…地区の名前の由来は、タンザニアの首都「ドドマ」より

※8…遺跡群の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「コンドアの岩絵遺跡群」(文化遺産 2006年登録)より

※9…大草原の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「セレンゲティ国立公園」(自然遺産 1981年登録)より

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