表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神眼転生 ~光と闇の物語~  作者: 照師
もみの木の章 アバン
3/30

青年~

━━━やがてもみの木は青年の特攻隊長になりました。

ついに天井を突き破る時がやってきたのです。

「よっしゃー、いくぜー、あばよおっさん、もみの木神に俺はなる!」

そう言って天井を突き破ると……そこに光はありませんでした。

「マジか……」

押し退けたかつてのパイセン達の骸、その隙間から覗いた世界は、外は分厚い雲におおわれていて大して日の光は届きません。それどころか酸の雨嵐が吹き荒れていて、枯れて倒れた木々を溶かしているではありませんか。

「まじかー……ちきしょう!まだ先がある、誰よりも上にいってやる、俺はこいつらとは違うんだ」

彼は諦めません、彼は酸の雨に耐えながら、かつてのパイセンもみの木達を押し退けて、少しづつ成長していきました。

そして倒れて重なった全ての先輩を押し退けると、ついに誰より高いもみの木となりました。

……しかしそこにもたいして光はありませんでした。

それどころか直に当たる酸の雨がとても痛くて痛くて、嘆いてももうそこに先輩の傘はありません。

ついにそれ以上上には行けなくなってしまいました。

てっぺんからみた景色は、どこまでも続く分厚い雲、渇れて倒れた先祖達が広がる大地、その先には不毛の大地が広がっています。そんな世界を眺めていると震えてしまい。

「まじかー……」

引きこもりになってしまいました。

くる日もくる日も続く轟く雷、嵐の暴力の数々、そんな日々をくる日もくる日も耐えてると気力がなくなり、もみの木の心はどんどんと暗闇の中に沈んでいってしまいました。


それは珍しく雨が止んだある日のことです。どこからか小さく痩せ細った小邪鬼ゴブリンの青年が、木の棒をアクセルのように回しながらやって来ました。

「ブンブン、オレはシス、ゴブリンライダーになる男だ」

「俺は……名前はない、ただのもみの木のようだ」

「ぷっなんだそりゃ……それより俺腹減ってよう。お前の葉っぱ食わせろ」

「なんだお前、それが木に物を頼む態度かよ、まあいいや勝手に取って食ってってくれ」

どこか諦めてたもみの木でした。久々に誰かと喋ったので少し気力を取りもどしたのか、なんとなくでもあり、半分投げやりに自分の一部をあげてしまったのです。

「んじゃ遠慮なく」

ゴブリンのシスは枯れた木々をかき分けて、中からもみの生木をブチッと枝ごと引きちぎると、葉の先に生えた若葉を食べます。すると。

「マズ!さっき手に入れた若葉食お、ムシャムシャ、うんこっちの方がマシだな」

「ひど!……ん?それってもみの木の葉じゃ?……なあ俺以外に生きてるもみの木がいるのか!?」

「なんだお前そんな元気あるんじゃんか、まあいいや、ああいたぜお前より小さなもみの木があったよ」

「そうか……そうだ!そいつを俺に振ってみてくれないか?」

「えっ?いいぜ、不味い葉のお礼だよ、それ」

ゴブリンがもう一つの葉を振ると花粉が飛んできます。すると。

「はっはっぶはぁくしょん!いけねー花粉症かな?」

【ゴブリンは花粉症になった】

ラッキー、受粉成功だぜ!

この時もみの木は、生きる気力を取り戻したのでした。


━━━やがてもみの木は成長して大人になり、背の低い大木になりました。

体にはスイカよりも大きく超絶ビックなもみの実をつけました。やがてもみの実はその重みに耐えきれなくなると、地下へと落ちていってしまいましたとさ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ