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神眼転生 ~光と闇の物語~  作者: 照師
松の木の章 アバン
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松の昔話

 ある孤島の話です。

 海から遠く離れ、ぽつんと浮かんだ無人島には、粟が生えていて、たくさんの食いしん坊なスライムたちが暮らしていました。 

 その島のスライムは毒の泡を吐くため誰もその島には近づこうとはしませんでした。

 ある日その島に風に運ばれた松ぼっくりの種が落ちると、そこに一本の松の木が生えてきました。食いしん坊なスライムは、生えたばかりの松の木を食べようと近づいていきます。

「こいつはうまそうな葉だ。どーれ味見してみるか」

「わー!スライムだ。助けてー、誰か助けてー!」

 するとどこからか琴の音が聞こえてきました。その音は不思議な音で、スライムはその音に聴き入ってしまい、食べる気を無くしてしまうと、どっかに行ってしまいました。

 その日からというものスライムが、松の木を食べようと近づくと、どこからか琴の音が聞こえてきて、スライムがどっかに行ってしまいます。おかげで松の木はすくすくと育っていきました。

 それは数百日過ぎたある日のことです。松の木はもう立派な大人の松の木となりました。スライムが来てももう食べられることはありません。しかしなぜか琴の音は毎日聞こえてきました。

 そして立派に育った松の木から、松の精霊が生まれました。松の木から男の精霊が出てきたのです。

 松の木の精霊は、これまでのお礼にと心を込めて笛を吹き始めました。

「いつも、素敵な琴の音を鳴らしてくれるお方よ、おかげで立派な松の木になりました。これからこの島にたくさんの松の木(なかま)を増やしましょう。もし何か困ったことがあったなら、いつでもこの島へ来ていらして下さい」

 そしたら琴の音がまるで応えるかのように音がかわり、心地よい音楽を奏でました。

 するとどうでしょうか笛と琴の音楽ハーモニーを聴いたスライムたちは毒を吐くのをやめて、代わりに綺麗な空気の泡を吐くスライムになったのでした。

 なので島から綺麗な空気が流れてくるのだと云わっております。



 ある孤島の話です。

 海から遠く離れ、ぽつんと浮かんだ無人道には、たくさんの松の木が生えていました。

 その島には不思議なことが一つありました。松の葉が一つも落ちてなかったのです。

 それは食いしん坊のスライム達が松の葉を食べていたからでした。スライム達は松の葉が落ちるとあっとゆうまに食べてしまい、地面には松の葉が落ちてなかったのでした。そして満腹になったスライム達は、土の肥やしの元をプリッとだし、肥えた土から、松の木やいろんな植物が生えてきて、緑豊かな島になっていきました。その島では松とスライムは共存して暮らしていたのでした。

 ある晴れた日のことです。その日急に天候が変わると、嵐になっていしまい、海は大シケ、空に分厚い雲に覆われて、島には雨や強風が吹き荒れました。

 その島に生えた松の長老のもとにスライムが慌てて駆け込んできたのです。

「たいへんだ、たいへんだ」

「どうしたんだい?スライムよ」

「海から、雲に消えた白い人影をみたんだよ、ありゃー、幽霊に違いない」

「まさか、幽霊なんているわけないじゃないかスライムよ、きっと、波かなんかが幽霊に見えたんだろうよ」

「そっかー、勘違いかー、」

 スライムは自分より長く生きて、物知りだった松の木の言う事に納得すると、どっかに行ってしまいました。

 それからしばらく経つと。

「たいへんだ、たいへんだ」

「どうしたんだい?スライムよ」

「海に、小舟が浮かんでいたんだよ、そこに白い影を見たんだ。あれは幽霊に違いない」

「まさか幽霊なんているわけないじゃないかスライムよ、きっと、流木かなんかが、幽霊に見えたんだろうよ」

「そっかー、勘違いかー」

 スライムはどっかに行ってしまいました。

 それからしばらく経つと。

「たいへんだ、たいへんだ」

「どうしたんだ、スライムよ」

「海に白い影が見えたんだ、それから琴の音が聞こえてきたんだよ。きっと幽霊が鳴らしてるに違いない」

「まさか幽霊なんているわけないじゃないかスライムよ、きっと、風の音が琴の音に聞こえたに違いない」

「そっかー、勘違いかー……じゃーこの音はなんの音なの?」

 スライムに言われて聞き耳をたてると、たしかに琴の音が聴こえてくるではありませんか。この時初めて松の長老が海を見てみると、小舟が海から流れてきて、砂浜に打ち上げられたのでした。

「あれは!?」

 小舟から白い手が出てきて、船の縁を掴むと、中から濡れた黒く長い髪で顔が隠れた白装束の女が這い出してきたのです。

「ぎゃーー!幽霊だ!」

「だから言ったじゃないか、これだから年寄りは人の話を聞かないんだよねー。もうこれからはちゃんと僕の話を聞いてよね」

「スライムよ、後ろ後ろ」

「えっ?」

 後ろを振り返ったスライム、そこには、濡れた長い黒髪の髪の間から、まつ毛のない目を見開いた女がいたのです!

「みーたーなー!」

 スライムと松の木は恐怖のあまり固まって動けなくなって、しまいました。

 それからというものこの島にはたびたび女の幽霊が目撃されると云われております。



 ―――どこからか、スーツ姿のまんまるメガネのサングラスに口髭を生やしたジェントルマンが出てくると、声色を変えて、左右を向き一人芝居を始めだした。

「違う違う、この話じゃない、こっちこっち」

「あースマン、スマン」

「では皆様、正式な松のお話はこちらです。続きをどうぞ」

 男は、ポンと煙を立て消えてしまった。

 

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