婚約破棄されたけど焼肉の方がいいしオッケー、問題ないよ!
学園の中庭で昼寝してた時だ。なんか王太子殿下にいきなり婚約破棄を突きつけられた。唐突だなー。もう少し寝てていい?
うーん、正直心当たりありすぎる。私ってば脳筋だしねー。家庭教師とか物理的に振り回したりしてるし。いい筋トレになるんだよね。
一応は私んちは公爵家に匹敵する権力のある辺境伯家で、私はそこの娘なんだよね。父上の武勲の褒美でなんか婚約決まってたんだけど、五才くらいのときに。
うん、なんかそういう話だったと思う。興味ないから忘れてたなー。ずっと辺境にいたから王都とか通えなかったし。
三才ぐらいから魔物退治してたから他のことはどうでもよくってさ。魔物の肉すごい美味しいから。ハマったなー。一番いい肉は冒険者が食べるんだよね。王様にも回ってこない肉とかあるんだよ? 食べてみる? 辺境まで来たらね?
ぶっちゃけ学園にも来る気なかったんだけど魔物学の授業で食える肉と食えない肉を教えてくれるらしいって聞いてそれだけ聞きに通ってたんだよね。おかげで魔物学だけ満点だったけど他が全然だめでー。正直私より聖女様の方が国母にふさわしいよね。
うーん、婚約破棄ねえ。いいよ。破棄しよ破棄。聖女様にいじめ? してないしてない。だって私が殴ったら華奢な聖女様じゃ風圧だけで死んじゃうし、私の踏み込みは目に見えないと思うし。いじめるなら察知されないうちにすべてを破壊するくらいするし。王国騎士団くらいは潰せるしなー。
お話終わり? 聖女様は風邪かな、顔青くない? そういえば階段の踊り場で背中に抱きついてきたりしたね。体重軽くてビックリした。あれがいじめ? むしろ聖女様がうしろに転ばないように気を使ったけど。はずみでお姫様だっこしたからちょっと顔が赤かったし怒ってたのかな? 小さくて柔らかいって言ったから? それはごめんね? 胸板厚かった? せめて胸が大きかったって言って? どっしりしてたとか女の子に言っちゃダメなやつね?
今日は放課後に山向こうの草原にいるらしい恐竜を仕留めにいって辺境騎士団のみんなと焼肉パーティーするんだ。だからそういうことで今日は失礼しまーす。
あ、婚約はきっちり破棄してね。王太子妃の教育の時間で狩りして肉を食う方が充実してるし、あん? 私が相手してくれないから寂しかった? うんうん、じゃあガンガン浮気するといいよ。あ、したのか。ノープロブレム!
なんか変に王太子殿下が粘ってくる。国のために手放せない? なにが? なにを?
そうこうしてると馴染みの騎士が学園にまで駆け込んできた。私の戦力を当てにする事態があるとたまにあるんだよね。え、スタンピード? バッファロー系の魔物?
うまそー。今日はバッファローの焼肉に変更だね。なぜか真っ白な顔になってる王太子殿下と聖女様は置いといて……。いや、すごい量の肉が取れそうだし焼肉パーティーに誘ってあげよう! 私はほぼ物理戦闘だけど解体と熟成の魔法だけは覚えてるし美味しいよ!
え? 焼肉にされる? しないから! さすがに人肉は食べないから!
ごはんは世界を救うからねー。隣国に干し肉とか輸出しようかな。さすがに何百トンもは食べないからね。でも牛くらいだとミンチにしないように仕留めるのがけっこう難しくてさー。手伝ってくれる?
じゃあ行こっか? 大丈夫、二人くらい担げるから。馬車よりは速いし揺れないように運ぶし。戦闘できない? それなら私が全部倒すから大丈夫だって。ハンバーグ増えそうだけど。
そうしてそれから何回か、王太子殿下と聖女様をドラゴンとかの焼肉に連れ回したらなぜか王太子殿下は遠い国に留学して聖女様は私に抱きついたりしてくるようになった。なんで?
辺境伯家ですけど隣国はたぶん戦争仕掛けてこないですね。