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5話「ローレット、何を考えているのか謎」

 奥の棚から取り出し部屋の中央にまで持ってきて、床に置き、スイッチを押す。すると薄暗くなっていた中でその物体だけが光を放ち、木でできた天井に無数の光の粒を映し出した。平凡な木の天井が一瞬にして天の川へと変貌する。


「わぁーっ! 綺麗!」


 歓喜の声をあげるのはローレット。


 そう、これは、暗い室内の壁や天井に光を生み出すことができる魔道具だ。


 発光魔法の技術をシステムに組み込み作られているので、発光魔法を使えない人であってもこの魔道具を使えば光を好きに生み出せるようになっている。


 無論、できることには限度はあるわけだけれど。


「凄い!! これ何!?」

「家の中で星空を楽しめる魔道具よ」

「ええーっ、そんなのあるんだ!?」

「そうね」

「うわー。魔道具ってやっぱり凄いなぁ」


 ローレットは感心していた。


「これもエイリーンさんが作ったの?」

「そうよ」

「ほわぁぁ」


 何の声だ、それは。


「エイリーンさんの技術は最上級だね!」


 満面の笑みを浮かべてそんな言葉をこちらへかけてくるローレット。


 彼はどこまでも純真で。

 見ているとこちらが笑いそうになるくらい真っ直ぐ。


「そういえば、あの時助かったのもエイリーンさんの杖のおかげだったなぁ……」


 彼は懐かしい記憶を愛でるように過去のことを口にする。


「あれがなかったら今頃僕は死んでただろうな」

「ま、賭けだったけれどね……」


 そうだ、あの時出会っていなかったら――今こうして二人語らうこともなかっただろう。


 異なる世界で生きてきた私たちがあの場所で出会ったのは、きっと、一つの運命だったのだろう。


 人と人の縁とは不思議だ。


 人間にはまだ仕組みを導き出せないもので。

 けれども確かに存在している謎の力。

 目では見えないけれど、手でも掴めないけれど、それでも確かにあると思える何か。


「そうなの?」

「あれはまだ実験段階の魔道具だったから」

「そうだったんだ!? え、でも、凄い効果だったよね!?」

「成功した事例ね」

「おおーっ、それはますます凄い!」


 それからも私たちは色々喋った。


 重要な話題なんてない。

 基本くだらないような話ばかり。


 けれどもとても大切な時間だ。


 ――そんな時間の終わりしな。


「あの、さ。ちょっと、聞きたいことが、あって」


 急に真面目な顔になるローレット。


「聞きたいこと?」

「うん、エイリーンさんって……これからどうするの?」

「どういう問いかしら」

「婚約は破棄になったんだよね」

「ええ」

「じゃあ……もう二度と誰とも婚約とか結婚とかは考えない?」


 なぜそんな話題を今振るのだろう。


 けれども問われたなら答えよう。


「そうね、今はちょっと……まだ何も考えていないわ」

「そっか」

「今は仕事が楽しいし忙しいでしょう、あまり色々考える余裕がないの」

「まぁそうだよね」

「でもどうしたの? いきなりそんなことを聞いて」


 すると彼は少しばかり気まずそうな顔をした。


「ああいや、ううん、何でもないんだ……」

「何なの?」

「ううん! もう気にしないで!」

「そう。分かったわ」


 ローレット、どうしちゃったの?

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