11話「休日、共に未来へ」
想い伝え合って、気づけばいつも一緒に過ごしているようになって、仕事までも共に行うようになって――私とローレットの関係は以前とは大きく変わった。
そうして数えきれないほどの時が流れたけれど、私は今も、彼と共に生きられることを嬉しく思っている。
「久々の休日だね~」
今日は魔道具屋は営業していない。
特にこれといった予定も入っておらずゆっくりできる日だ。
あまりないのだが、こういう日は大抵いつも二人で過ごす。
「そうね! 何かする?」
「何か、って?」
「遊びとか」
「遊び?」
「まぁちょっと、遊び、は言い方が変よね……」
表現が難しくて少し迷ってしまう。
「お茶を飲むとか?」
「それそれ! そういう感じのよ」
「そういうのもいいねー」
「何かしたいことはある?」
「お菓子食べる!」
「……もう、子どもじゃないのだから」
なんだかんだでいまだに子どもっぽいところのあるローレットだけれど、今はそういうところも含めて彼という存在を愛している。
愛なんてよく分からなかった。
でも今は分かる。
愛なんて理解するものではなく感じるものだったのだと。
今は彼への想いに気づいている。
ローレットは一途な人だ。
他の女性に手を出したり遊びまわったりは一切しない。
この前ある女性に付きまとわれアプローチされた時だって、私がいる場所で、女性へはっきりと拒否する言葉を言ってくれていた。
それも、自ら、だ。
私がさせたのではないのに、だ。
浮気性でない男性なんて男性らしくない――だとしても、私は、大事なところはきちんとしている彼を大切に思っている。
日頃の子どもっぽさは愛嬌の範囲内。
重要なところさえきっちりしていればそれでいい。
もちろん私だって完璧ではないわけだし。
そんなことを考えながら、色々置いてある棚の上へと手を伸ばす。
「お菓子、クッキーとサブレどっちがいい?」
お菓子と言っても色々ある。が、私が常に自宅に置いているのは大体クッキー系のものだ。こういうお菓子はあまり気を使わないし保存しやすいから気に入っている。
「ほぼ一緒だね」
「どっちなの!?」
「うーん……エイリーンさんかな!」
「ふざけていないで答えて」
「……はい」
彼はたまに恥ずかしいことを恥ずかしげもなく言うことがある。
意味が分からない。
何か企んでいるのだろうか。
謎だ。
「じゃ、クッキーで」
「ちなみにキャラメル味とメロン味があるわよ」
「味が大人だなぁ」
「嫌だった?」
「ううん、何の味でも大好きー」
「じゃあ両方持っていくわ」
そうそう、そういえば、あのミレイニアとかいう泥棒猫女――彼女は後に婚約間近な王族に近づいて誘惑しようとしたために国王の怒りを買ってしまい処刑されたそうだ。
ま、自業自得ね。
――そうとしか思わなかったけれど。
「綿菓子も食べたいな!」
「ええっ。これまた急ね……」
私はローレットと共に未来を見据えて歩いてゆく。
◆終わり◆




