10話「彼、その結末」
あの後、親しい常連客から、アズに関する話を聞いた。
アズはあの後ショートヘアの女性に惚れたそうだ。しかしその女性にアプローチし過ぎて嫌われてしまって。一方的に想いを伝えたところ拒否されたうえ罵倒されてしまったそう。で、それ以来、アズの中の愛が憎しみに変わり、その女性を追い掛け回すようになったそう。そんな中で、夜に遭遇した時、女性とアズは喧嘩になったらしく。その後アズは衝動的に女性を殺めてしまったそう。
それによってアズは人殺しとして牢に入れられてしまったそうだ。
さらに親からも縁を切ると宣言されてしまったらしい。
縁を失い、幸福も手に入れられず、一人になってしまったアズ。
彼はもう温かな環境を手に入れることはできない。
愛も、温もりも、今ではもうどうやっても手に入れることはできないもの。
これから先、彼はずっと一人で歩んでいくのだ――身も心も冷たい、優しさなど少しもない牢の中で。
ちなみにレイ家は兄が継ぐこととなっているらしい。
アズは誰にも必要とされていない。
◆
「ローレット! これ運んで!」
「うん!」
「あと、紙袋も出しておいて!」
「はい!」
私は今も魔道具屋として忙しい日々を生きている。
けれども以前とは状況は異なっていて。
以前より心強い協力者がいるから前を向いて進めている。
ちなみにその協力者というのはローレットのことである。
「すみませーん! 予約なんですけどー!」
「ではこちらの紙の記入をお願いします」
「これ買いたいんですけどッ! 対応お願いしまッす!」
「はい! すぐに行きます!」
忙しい時にはローレットも客への対応に協力してくれている。
色々してもらって申し訳ないとは思っているのだが、彼はいつも笑顔で手伝ってくれる。
だからその優しさに甘えてしまっている部分もあるのだ。
「エイリーンさん、受け取りです」
「あ、はい」
「二台です。もう出来上がっていますか?」
「はい、できています」
「受取用紙です」
「はい、では出しますね。――こちらになります」
「おおっ!」
忙しくも楽しい日々は続いていく。
きっとこれからも、ずっと。




