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『最果て』の先、『終わり』を望む魔女  作者: まるまるくまぐま
見習い魔法使いフレデリカ
28/45

フレデリカの変化

「ふふっ…解けた…解けたわよ…!」

 解読を開始して二ヶ月。フレデリカは遂にサロメの術式を解読した。

 目には深いクマが出来ており、疲労が伺える。しかし、そんなフレデリカは満足そうな表情だった。

 天才中の天才である彼女は、これまであらゆる術式や魔導書を容易に読み取っており、これ程苦戦したことは無かった。

 故に、初めて得た苦労の末の達成感に満ちていた。

 

「さて、どんな術式かしら…」

 最早、フレデリカにとって、術式の内容などどうでもよくなっていた。

「これは…」

 しかし、読み取った術式にフレデリカはそう漏らし、言葉を失う。

 そこに記されていたのは、フレデリカの弱点を克服し、サロメの弱点と成り得るものであったからだ。


 術式を解読し、己のものとしたフレデリカは、三ヶ月ぶりに仮の師であるエミールの元を訪ねた。

 自信満々に胸を張りながら。


−−−−−−−−−−−−−−−−−

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 エミールは戸惑っていた。

 三ヶ月ぶりに現れた仮初めの弟子、という名の暴君フレデリカは、失踪する直前に見た、やつれて沈んだ表情は何処かへ消し飛び、以前以上に自信に満ちた表情をしていたからだ。

 いや、それは表向きの理由だ。真にエミールを悩ませるのは、自信満々に胸を張るその姿だった。

 

 これは、指摘すべきなのか?

 三ヶ月前迄、断崖絶壁だったフレデリカの胸が、十四歳の少女としては不自然な程、突如大きくなっていたからだ。

 『何か雰囲気変わった?』的な質問をするべきなのか?

 それとも、最初からそうであったかの様に、完全に無視すべきなのか?

 どちらも間違いな気がする。

 結局、エミールは何も答えを出せずに黙りこくっていたことでフレデリカの不興を買い、以前同様、癇癪を起こし、暴れた彼女に部屋を滅茶苦茶にされた。




−−−−−−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−−−−−−

−−−−−−−



 フレデリカの従順な下僕である変態メイド、ラメー・エロイーズは、彼女のご主人様であるフレデリカの自室に呼ばれた。

 一ヶ月前、突然失踪したフレデリカは、これまた突然帰ってきたかと思ったら、部屋に籠もり、止めに入らなければ不眠不休の飲まず食わずで何かを研究していた。

 そんな彼女の研究が終わった翌日、エロイーズは呼び出された。

 久々にお仕置きという名のご褒美を頂ける!と嬉々として向かったフレデリカの自室で見たご主人様の姿に、エロイーズは思わず言葉を漏らす。

「お、お嬢様にお、おっぱいが…」

 愛しのご主人様は断崖絶壁だった。しかし、目の前にいるその人には、立派なおっぱいがあるのだから、エロイーズは困惑していた。

「豚…何を言ってるのかしら?私は元からこうだったわよ。それとも、この私が間違っているとでも?」

 魔力の鞭を振り上げながらそう問うフレデリカ。その問いにエロイーズはゾクッ!と表情を緩ませる。

「ちっぱいのお嬢様も、おっぱいのお嬢様も、どっちも雌豚のご主人様ですぅ!!」

 歓喜の声を上げて四つん這いになったエロイーズに、フレデリカは容赦なく鞭を振り下ろす。

「誰がちっぱいですって!!…こっの豚ぁ!!フレデリカ様は完全完璧!!胸の大小も自由自在で!!元々このサイズだったでしょうが!!」

 怒りのままに振るわれる鞭。その鞭に打たれる度に艶めかしい声を上げながら、恍惚の表情を浮かべ涎を垂らすエロイーズ。

「はいぃっ!!お嬢様の仰る通りで御座いますぅっ!!そんなことも分からない、躾のなっていない雌豚に、もっとお仕置きを下さいませぇーーっ!!」

 更に苛烈になるフレデリカによるお仕置き。

 エロイーズは幸福であった。この数ヶ月、気分型沈んでいたり、失踪したり、研究に熱中していたりと、フレデリカは大人しかった。

 久々に味わうお仕置きに、恍惚の笑みを浮かべながら、服従した犬の様に仰向けでエロイーズは誓いの叫びを上げる。

「生涯、お嬢様に忠誠を誓いますぅーっ!!」

 その変態メイドに唾を吐き、フレデリカは言う。

「何当たり前のことを言ってるのよ?そんなの当然でしょ?まだ教育が足りて無いようね。」

 そんなエロイーズの顔を靴を脱いだ足で踏みつける。


「あぁ〜っ!!ありがとうございますっ!!」

 歓喜の声をあげるエロイーズ。その声は、メヌエール邸中に響き渡った。



−−−−−−−−−−−−−−−−−

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「ふへっ…」

 鏡の前で変な笑いを漏らすフレデリカ。

 上半身に一糸纏わぬ姿を鏡に写し、生まれ変わった自身の姿にニヤけていた。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−


 サロメ秘蔵の術式。

 それは、胸をまるで本物の様に大きく出来るという術式だった。

 それだけなら、幻影の魔法で容易に出来るのだが、それだと実態は無いし、魔力の流れで簡単に見抜かれる。

 しかし、『最果て』に到ったサロメが生み出した術式は、実態を持ち、魔力探知にも引っ掛からない。

 つまり、完全に身体の一部となる超高度で難解な特殊術式であった。


 見栄っ張りなフレデリカは、これまで何度か詰め物をしようとしたことも、魔法で偽ろうとしたことはあるが、見抜かれた時に受ける屈辱を考えると、彼女のプライドがそれを許さなかった。

 しかし、この術式はどうだろう。彼女のプライドを傷つける恐れはほぼ皆無。なんせ、『最果て』の魔女サロメが、秘蔵とした術式なのだから、知る者は数少ないし、見破れる者は更に少ない。

 フレデリカは歓喜に震え、直ちに術式を己が身に刻んだ。

 

 目を瞑り、刻んだ術式に魔力を流し込む。

 脳裏に浮かぶのは、今までフレデリカが憎んできた持つ者たち。

 真っ先浮かんだのは、アメノ・ヒルメ。

 彼女の知る中で最も大きい。

「あれは大き過ぎ…」

 そう呟き却下する。

 ならアイア…

「あれも大き過ぎる…」

 あまりにも歳不相応なサイズにブンブンと頭を振る。

「ちっ!…でも、ちょうどいいわね…」

 苦い表情を浮かべながらも、納得する。

 フレデリカが心を決めと同時に、彼女の胸部が光を放つ。

 ムクムクと盛り上がる胸にフレデリカの心は沸き立つ。


「ふへっ…」

 彼女の思い描いた通りのサイズになった胸を触りながら、ニヤニヤしながらフレデリカは変な笑いを漏らした。

「アイツと一緒ってのが気に入らないけど…さっすがフレデリカ様ね!!あまりの美少女っぷりに私が惚れちゃいそうだわ!!」

 姿見を前にキャッキャと騒ぐ。

 

 フレデリカが理想に思い浮かべたのは、十年前に見た、彼女の母の姿であった。

 

 フレデリカとジェルマンの住むメヌエール邸。二人以外に血族の者は住んでいない。

 しかし、フレデリカの両親も兄弟姉妹も生きている。

 だが、共に暮らしはしていない。

 フレデリカ自身、両親や兄弟、姉妹の存在は知っているが、自分の親族はジェルマンだけだと思う様にしている。


 彼女にとって、自分を殺そうとした両親や兄弟、姉妹たちは、いないも同然であった。

 




 

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