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明後日からの電話

作者: 藤井寺 薫

序章

 今日は、日曜日。

 黒田朋子にとって、貴重な休みだ。

 朋子は、三十歳。普段、大型スーパーの書店に勤務している。

 月曜から金曜までのフルタイムで働いている。

 非正規だが、親と同居しているので、それ程、金銭的な苦労はない。

 なにしろ、家賃はタダだし、光熱費もタダ。月に数万円、食費を入れているだけだ。両親は年金生活者。

 パラサイトシングルと揶揄されるが、当分は、この暮らしを続けるつもりだ。

 朋子には姉が一人いる。

 姉は、二十代後半で結婚して、今では子供が二人居る。

 郊外でパートをしながら、暮らしている。

 今日、朋子が家で一人で居られるのは、両親と、姉夫婦、姪っ子二人が、ディズニーランドに遊びに行っているからだ。

 朋子は、リビングの大きなテレビ画面を一人占めしながら、

「そろそろかな。」

 と、壁の時計を見た。

 義兄も姉も、明日は仕事である。

 そんなにハメも外せないだろう。

 今日は、義兄が両親を迎えに来た。

 義兄の家と、朋子の住む家は車で三十分程度の距離だ。

 ディズニーランドを夜七時頃に出発しても、渋滞していなければ一時間半もあれば家に着くだろう。

 時計の針は八時半を指していた。

 もうそろそろ着くだろう。

 朋子はウイークデーに撮り溜めたブルーレイをあらかた観終わって、夕飯に食べた後の食器を洗い始めた。

 しばらくしてリビングの電話が鳴った。

 朋子は、少しおかしいな、と思った。

 なぜなら、母は、朋子に連絡する際、必ず携帯にかける。

 家族割引で無料だからだ。

 なのにリビングの電話が鳴っている。

「モシモシ」

 朋子は電話に出た。

「○○警察署ですが。」

 警察?

 疑問に思う前に、相手が話しだした。

「川田浩一さんのご家族ですか?」

 おかしな質問だと思いながら返事をした。

「義理の兄ですが…」

 イタズラ電話かオレオレ詐欺か。

「川田さんが事故に巻き込まれました。」

 事故?

 半ばパニックになりながら考えた。金銭の要求があったら電話を切ろう、と思った。

「川田広美さん、それから、黒田大三さん、美子さんも同乗されていました。今からこちらに来ることは可能ですか?」

 何を言っているんだろう。

 交通事故を起こしたのなら、なぜ私がいちいち出向かわなければならないのか。

「姪御さん。川田蘭さんが、あなたのことを呼んでいます。県立○○病院です。最寄り駅は○○駅、…。」

 何の話だ。蘭がどうしたのだろう。病院ということはケガでもしたのだろうか。

 大人が四人もいて、どうして私が行かなければならないのか。

「川田浩一さん、川田広美さん、川田咲さん、黒田大三さん、黒田美子さんと思われる五名が死亡した模様です。身分証持参の上、県立○○病院まで来て下さい。川田さんのご家族とは連絡が取れないのです。」

 朋子は混乱しながら、連絡が取れないのは当然だ、と思った。

 浩一の両親は、浩一が幼い頃、離婚して浩一の母が、女手一つで浩一を育てたのだ。

 その母も、昨年亡くなっており、浩一の実の父とは音信不通になっている。

「よろしいですか?公共交通機関をご利用になられたほうが良いと思います。できれば免許証をご持参下さい。私は○○警察交通課の林です。保険証があればそれもご持参下さい。」

(バカな、そんなバカな)

(まちがいだ、まちがいに決まっている)

 しかし、体は勝手に動いていた。

 電話台の一番上の抽斗から、父と母の保険証を出す。

 自分の財布に一万円札と、免許証を確認してバス停に向かう。

 あまりに慌てていて、上着を羽織るのを忘れている。第一、化粧もきちんとしていない。朋子は休みの日は、ベースメイクしかしない。

 もう十月だ。

 そうだ、十月だからハロウィン期間中にディズニーランドに行きたいと、蘭が言ったのだ。

 蘭はまだ五歳。

 咲にいたっては三歳だ。

 バスが次に来るのは十分後。

 大体、ここのバスは十五分に一本の割合で出ている。

 だが今日は、日曜日なので三十分に一本程度となる。

 朋子は、家に鍵をかけてきたか、ガス栓を閉めてきたか、気になった。

 もしこれがイタズラなら、相当にタチの悪いイタズラだ。

 朋子は苛立ちながら、バスを待った。


 病院の最寄り駅に着いたのは、家を出てから三十分後だった。

 県立○○病院、県内でも大きい病院だ。

 朋子も以前かかったことがあるので迷うことはなかった。

 病院は当然閉まっていた。

 救急の入り口に誰か立っている。

「お電話した、○○県警の林です。」

「はぁ」

 とため息のような声が漏れる。

「こちらです。」

 案内された病院の椅子に蘭が座っている。

「蘭ちゃん。」

 思わず声が漏れる!

「朋ちゃん。」

 と、蘭が顔を上げる。

「お嬢ちゃんはここで、このお兄さんと待っていてね。」

 と、警察官の林が言う。

「遺体の確認をお願いします。」

 霊安所に、五つの台が並べてある。

 一つずつ、警察官が顔の布を取る。

「お父さん。」

 声が漏れる。間違いなく父だった。

 眼鏡が割れている。死んでいるとは思えなかった。

 母も姉も義兄も姪も、顔は綺麗だった。誰も皆、死んでいるとは思えない。

 顔色が悪いのを除けば、眠っているようだった。


 朋子は五人全員の遺体を確認した。

 自分でも血の気が引いているのが分かる。

 立っていられないほどだ。

 立ちくらみの様な状況で、遺体を蘭に見せることはできないと思った。

 警察の人が色々、説明している。

 事故死の場合、司法解剖するのだという。

 とにかく、書類に署名しなければならない。

 訳が分からないまま、署名する。

 今日は、帰っていいかと質問する。

 帰って構わないが、明日の朝また来てくれと言われる。

 死体検案書という耳慣れない言葉を聞く。葬儀屋の手配云々という言葉。


 トラック運転手の会社の人が、やってくる。

「この度は、我が社の運転手が誠に申し訳のないことを…。」

 頭を下げられる。

 朋子はなんと言っていいかわからない。

 呆然としている朋子に、名刺を渡した。


 義兄は車にドライヴレコーダーをつけていた。

 その映像があるという。

 蘭には見せられない。

 警察官立ち合いの下、映像を見た。

 対向車線から、トラックがはみ出してくる。 

 義兄がクラクションを鳴らすと同時に、車が大破する。

 ほんの一瞬だった。

(これなら苦しまなかったかも知れない)

「こちらが相手側のドライヴレコーダーです。」

 警察官が言う。

 画面に義兄の車が映る。

 進行方向がぐにゃっと曲がって、義兄の車とぶつかる。

 義兄と姉の表情が、一瞬、見えたような気がした。

「ご覧の通り、十対0で、トラック運転手の過失です。恐らく居眠りが原因だと思われます。」

 警察官が言った。

 被疑者死亡のため、裁判は行われないとのことだった。

 後は、民事で話し合ってくれという旨の説明を警察官がした。

 法律のことはよくわからないが、相手が死んでしまっている以上、どうにもできないのだろう。

 運送会社の人がしきりに何か言っている。

 責任、慰謝料、できるだけのこと…。

 死んでしまっているのに、どう責任を取るのだろうか…。


 ドライヴレコーダーの映像。

 一生、夢に見そうだ。

 病院でぼーっとする。

 蘭が長椅子で寝ている。

 風邪を引かないだろうか。

 誰かに連絡を取らなければ。


 最初に頭に浮かんだのは、母の姉、浮子伯母だった。

 浮子伯母は、母と仲が良く、よく長電話していた。

 スマホを取り出す。

 浮子伯母の番号がある。

 自宅と携帯、どちらに連絡すべきなのか。

 腕時計を見る。

 夜九時、まだ起きているだろう。

 自宅に電話する。

「はい、もしもし」

 伯母の声だ。

「夜分、遅くに申し訳ありません。黒田です、黒田朋子です。」

「あら、朋子ちゃんどうしたの?」

「実は、母が事故に遭いまして。」

「事故?お父さんは?」

「父も事故に。」

「事故って何の事故なの?」

「交通事故です。」

「今、どこから電話してるの?病院?どこの病院?」

「県立○○病院です。」

「美子は?美子の具合は?」

「死にました…。」

「死んだ?死んだの?」

「はい」

「大三さんは?」

「死にました。」

「そんなバカな…。」

「姉さんも浩一さんも死にました。」

「そんな…。」

「咲も死にました。」

「本当なの?蘭は?蘭ちゃんは?」

「無事です。」

「蘭ちゃんは無事なのね。」

「はい…。」

「わかったわ。今日は遅いから、明日の朝一番でそっちに向かう、それまで大丈夫?」

「はい…。」

 答えながら、涙が流れているのがわかる。声も震えている。足も震えている。

「どこへ向かえばいいかしら。病院から一旦、家に帰るのかしら。」

「帰ります。」

「警察の人は?何て言っているの?」

「わかりません…。」

「しっかりして、しっかりしなきゃ駄目よ。」

「はい。」

 涙が止まらない。

「とにかく警察の人と話して、蘭ちゃんと一緒に、家に一旦、帰って少しでも寝るのよ、いいわね。」

「はい。」

「一旦、電話切るわね。私は支度して、明日の朝一番の新幹線に乗るから。」

「はい、すみません。」

「謝ることなんかないのよ。とにかく蘭ちゃんを頼むわね。」

「はい。」

 電話が切れた。

 そうだ、そういえば、伯母は東北に住んでいるのだ。

 伯母に申し訳ない、そう思った。

 明日の朝、一番の新幹線で、と、言っていた。

 何時に着くのだろう。

 東京駅から家まで最低、二時間はかかる。


 よくわからないまま、寝ていた蘭を起こし、家へ向かう。

 蘭が、

「ママは?」

 と、眠そうな声で訊いてくる。

 なんと答えればいいのだろうか。

 死んだなんて言える訳が無い。

「うん。」

 頷いて、蘭の小さな手を握りながら、歩いていく。

 とにかく家に帰ろう。

 帰って横になりたい。

 とても疲れた。

 頭の片隅で、明日、職場に電話を入れなければという思いがちらついた。


 目覚ましが鳴っている。

 朝だ。

 手を伸ばす。

 目覚ましでは無いことに気がついた。

 スマホだ。

 スマホが鳴っている。

 浮子伯母だ。

「もしもし」

「朋子ちゃん。今、東京駅に着いたの。美子たちは今どこに?病院へ向かう?それとも自宅?」

「病院です。司法解剖とかなんとか言ってましたけど…。」

「じゃ、病院で待ち合わせましょう。」

「蘭は、蘭はどうしましょう?」

「かわいそうだけど、蘭ちゃんも連れてきて、一人にしておく訳にいかないものね。」

「わかりました。病院は県立○○病院です。今、メモできますか?」

「いいわ、通話録音するから、しゃべって。」

「最寄り駅は、JR××線××駅です。」

「駅からタクシーで七分くらい。バスだと十分くらいです。」

「急いでいるからタクシーにするわ。」


 職場に電話する。

 とりあえず、両親が事故に遭ったことを伝え、休ませてもらうことにした。

 伯母と待ち合わせした病院に、蘭と一緒に行く。

 疲れた。

 蘭も疲れているようだ。蘭は朝ごはんをほとんど食べなかった。

「朋子ちゃん、蘭ちゃん。」

 病院のロビーに伯母がいた。

「遠いところすみません。」

「そんなこといいのよ、大変ね。昨夜ニュースで流れていたわよ。信じられないことだけれど。」

「何が起こったかよくわからないんです。」

「朋子ちゃんしっかり、蘭ちゃんを支えられるのはあなただけなのよ。」

「はい。」

「それで、あの子たちはどこに?」

「ああ、多分、霊安室だと思います。病院の人に訊かないと。」

 受付で訊くと霊安室に遺体はあるという。

 警察の人間もそこにいるという。


「○○警察署の林です。」

 昨日と同じ人だった。

「書類にいくつか署名して頂きます。」

 よくわからない手続きをやった。

 死体検案書というのを渡された。

 これを市役所に提出しなければならないというのだ。

「手続きはほとんど葬儀屋さんがやってくれますよ。」

 警察の人が言う。

「朋子ちゃん、近所の葬儀屋さんなんか知ってる所あるかしら?」

 伯母に訊かれたが、すぐに浮かばない。

 そういえば、近所のおばあさんが亡くなった時、どこかの葬儀社で葬式をやって、両親はそれに出席したのだ。

 しかし、考えてみれば、自分は、近所づきあいというものをほとんどやっていない。

 自治会も、市内の一斉清掃もすべて、両親がやってきたので自分には何もわからない。

「伯母さん、ちょっと思い当たらないので、近所の人に訊いてみていいですか?」

「その方、どんな方?」

「母の友人です。お散歩仲間で、よく、買い物に行ったりしてました。」

「じゃ、その方に訊いてみるといいわ。」

 朋子は母の友人の佐藤さんの電話番号をスマホの電話帳で探した。

 けれど、電話番号の登録は無かった。

 NTTの番号案内に電話して訊いた。その場でメモしてかけてみる。三回ほど呼び出した後、つながった。

「はい、佐藤です。」

「黒田です。」

「朋子ちゃん?朋子ちゃんなの?朝のニュースで観たんだけど、交通事故って本当なの?」

「本当なんです。」

(信じられないけど)と、心の中で付け加えた。

「いま、どこ?何度も電話したのよ。」

「いま、病院です。県立○○病院。」

「一人?」

「いいえ、姪っ子の蘭と、伯母と三人です。」

「そうなの。伯母さんて?」

「母の姉です。」

「そう、それは心強いわね。」

「あの、佐藤さん、この辺りの葬儀屋さんご存じないですか?」

「葬儀屋?ああ、そうね、そうよね。ちょっと待ってね。駅の近くだったら青空社、ちょっと大きいところなら△セレモニーホールだけど。」

「ありがとうございます。電話してみます。」

 そう言って朋子は電話を切った。

 とにかく、家に帰って、やらなければならないことが山ほどある。

 まずは葬儀屋だ。


 家に帰って、とるものもとりあえず葬儀屋に電話した。

 電話番号は電話帳で調べた。

「私、黒田と申します。葬儀をお願いしたいのですが…。」

「はい、今どちらからお電話ですか?」

「自宅です。

「では、お名前フルネームと、ご住所、お電話番号、お教え願いますか?」

「黒田朋子。××市7891の10番地。090-××××-××××です。」

「担当は私、安田と申します。では早速、見積もりを持って伺います。」

 電話を切った。

 とにかく蘭を休ませなければ。

 ほとんど食事も摂っていない。

 オレンジジュースとパン、おやつを何とか食べさせ、歯を磨かせて、二階の寝室に布団を敷いて寝かせた。

 当たり前だが、疲れていたのだろう、すぐ、うとうとしはじめた。


 そうこうしているうちに、葬儀屋が来た。

 青空社の安田さんだ。

 伯母が対応してくれている。

「突然の事故でね、五人亡くなったんですよ。だから、お棺も五つ。」

「そうですか、ご愁傷様です。こちらがパンフレットになります。」

 慣れた手つきで、パンフレットをテーブルに並べる。

 お棺やら、祭壇やら色々ある。

 その下に値段がついている。

「今、ご遺体は病院でしょうか?」

「何だか死体なんとかだか、死因を調べるって。」

「なるほどわかりました。でしたら病院からの搬送は私共でやらせて頂いてよろしいでしょうか?」

「お願いします。」

 伯母は言う。

「ご遺体は、ご自宅に一旦帰されますか?それとも、私共の葬儀場でよろしいでしょうか?」

「葬儀場に直接搬送して下さい。」

「承知しました。」

 葬儀屋はメモしながら、

「お通夜、お葬式という流れになりますが、よろしいでしょうか?」

「そうして下さい。」

 伯母は答える。

「死体検案書、火葬許可証などのお手続きは、私共にお任せ頂いてよろしいでしょうか?」

「書類を警察の方に渡されたみたいだけどよく分からないんでお任せします。」

 伯母は淡々と言う。

「お通夜ということになりますと…。明日の晩、あたりがよろしいかと存じます。」

「仕方ないわね。」

「お身内の方や、近所の方へのご連絡は?」

「身内にはとりあえず、メールしといたわ。ご近所の方へはまだ。朋子ちゃん、どうする?」

 私は慌てた。

 ご近所付き合いは、両親に任せっきりだ。

「確か…。自治会に入っていたような…。」

 電話の隣に、ごみ当番カードがあった。

「○○自治会、第6班、班長永田」

 ごみ当番カードの隅に書いてある。

「永田さんが班長らしいけど…。」

 私は自信なく答える。

「じゃあ、永田さんにお知らせしましょう。そしたら永田さんが判断してくれるでしょうから。」

 朋子はとりあえず、永田さんに電話して両親が亡くなったことを伝えた。あまり驚いていなかったのはニュースを観たせいなのか。

 班長の永田さんが近所の人に報せてくれることになった。


「お通夜まで時間がありますので、ドライアイスをご遺体のまわりに置きます。五人分となるとお値段も高くなってしまうのですが…。」

「それは仕方ないわ。」

「朋子ちゃん、葬儀のお金はある?」

 伯母がはっきりと訊く。

「えーと、幾ら位ですか?」

 朋子は訊く。

「ケースによりますが、五人分となりますと、五百万円位はかかってしまうと思います。もちろん、式を地味にすれば三百万円位でしょうか。でも、お香典も集まりますし…。」

「お坊さんへのお布施は?」

 伯母が訊く。 

「三十万円位かと…。」

「そんなに…。」

 思わず絶句する。

 朋子は両親が預貯金をいくら持っているかほとんど知らないのだ。

 伯母が、

「銀行に、預金者が死亡したことがわかると、お金が下ろせなくなってしまうの。だから、今、朋子ちゃんがいくら持っているかにかかっているんだけれど。」

 と言った。

「五百万は、いくらなんでも無理です。」

 朋子はパニックになって言う。

「それはそうよね。」

 伯母が頷く。

「葬儀費用は、いつまでに払えばいいのかしら?」

 伯母が訊く。

「葬儀費用は、後払いで構いませんが、お坊さんのお布施はその場でお支払い頂くことになっております。」

「三十万円ならなんとかなります。」

 朋子は答える。


「では、なるべく料金を抑えたプランがよろしいかと存じます。」

 葬儀屋はパンフレットを持ち出して、

「棺にも、祭壇にも、ランクがございまして、これを、安い物にするだけで、価格がぐんと抑えられますし、弔問の方をお入れせずに、家族葬にすれば、さらに、価格は抑えられます。」

「ちょっと待ってちょうだい。」

 伯母が言った。

「この人達は、交通事故で亡くなったんです。弔問客をお断りするのは不可能です。現にマスコミにも知られてしまった。なので、お金の工面がつくかどうか。お金が用意できるようにこちらも努力します。しばらく時間を頂けませんか?」

 葬儀屋はしばし考えて、

「わかりました。ただ、お時間があまりありません。ご不幸の最中、誠に申し訳ありませんが、お早めに青空社までご連絡下さい。」

「わかりました。早急に手を打ちます。」

 伯母が答える。

 葬儀屋は帰っていった。

 ぼーっとしていると伯母が話しかけてきた。

「朋子ちゃん、こんなときにあれだけど…。」

「はい。」

「美子や大三さんは、保険に入っていたかしら?」

「保険て健康保険ですか?」

「違う、違う、生命保険や自動車保険よ。」

「自動車保険には入っていたようですけど…。」

 朋子は曖昧な返事をする。


「早速だけどね、朋子ちゃん、家探しするわよ。」

 伯母が言う。

 朋子は、両親の物を勝手に触るのは、抵抗があったが、そんなことも言ってられなかった。

 二人して二階に上がる。

 蘭を起こさないようにして、探し始める。

 大事なものは、両親の寝室のタンスの二段目。

「たぶん、ここだと思います。」

 伯母が抽斗ごと引き抜いて、一階の居間に持って行く。中から通帳、保険証券、土地の権利証などが出てきた。

「無用心ねぇ。」

 伯母が思わずもらす。

 通帳を開く。

 定期預金に、一千万円近くあるが、これはたぶん、父名義なので下ろせない。

「これが保険ね。確かに、がん保険はある。自動車保険もあるわね。生命保険もあるわ。どういう契約か、保険会社に問い合わせないと。」

 生命保険は確か、母の友人が、保険のセールスレディをやっていて、入ったような気がしたが、記憶は確かではない。

「字が小さくて見えないわ。朋子ちゃん見てくれる?」

 伯母に手渡された、保険証券の字は小さい。

「伯母さん。ありがとうございます。何もかも任せっきりで。」

「いいのよ朋子ちゃん。こういう時、当事者は、頭が回らないものなの。さぁ、保険会社に電話しましょう。」

 保険証券に小さく載っていた電話番号に電話してみる。

「お電話ありがとうございます。アサイ生命でございます。」

「私、黒田と申しますが。」

「黒田様、どういったご用件でしょうか?」

「はい。私の両親が亡くなりました。黒田大三と美子です。」

「あなた様のお名前をフルネームでお願いします。」

「黒田朋子です。」

「黒田朋子様ですね。どういった漢字でしょうか?」

「白、黒の黒、朋子の朋は月二つです。子は子どもの子です。」

「はい。それでは、ご用件をもう一度お願いします。」

 アサイ生命の人が言った。

「黒田大三、美子がそちらの生命保険に加入していたようなので、お電話しました。今、手元に保険証券があります。」

「今、お調べしますので、黒田大三様、美子様の漢字と生年月日と分かれば、保険の契約日を教えて下さい。」

「大小の大に数字の三、美子は美しい子と書きます。生年月日は昭和××年十一月八日生まれ。美子は昭和××年二月十二日生まれです。保険の契約日は昭和××年四月一日です。」

 アサイ生命のオペレーターは、

「確かに××年四月に当社の生命保険に加入されています。近いうちに社の方にお越し頂くことは可能でしょうか?」

「伺います。」

「では、その時、身分証と保険証券、ご印鑑、死亡を証明するものをご持参下さい。」

「わかりました。」


「保険会社に行くのは、通夜と葬儀が終わった後でいいですか?」

 私は伯母に尋ねた。

「葬儀の費用を賄わないといけないから、早いほうがいいわ。でも、保険金てすぐに下りる訳じゃないから。」

「どうしたらいいんでしょう…。」

 私は途方に暮れる。

「お葬式は少しランクを落としてやりましょう。世間体を気にしている場合じゃないわ。」

 伯母の決断は早い。

 葬儀屋に電話をかけると、

「私、黒田大三の身内の者です。葬儀、通夜のことで安田さんに相談があります。」

 電話が担当の安田さんに代わると、

「お棺は一番安いのにして下さい。お花も最低限で。余計な事は一切省きます。価格はとにかく抑えて下さい。」

 伯母はどんどん決めていく。

 結局、予算は二百万円で済むことになった。

「あとは銀行ね。」

「朋子ちゃん、銀行に電話してみてくれる?」

 朋子は銀行に電話した。

 やはり、すぐには、両親の預金は引き出せないようだ。


「あとは、大三さんの株関係ね。」

 伯母が言う。

 すっかり忘れていた。

「大三さんはパソコン持っていたかしら。」

「ノートパソコンを一台持っていました。」

「パスワードは分かる?」

「それはちょっと…。」

 正直、父がパソコンで株取引していたかどうか、思い出せない。でも、株をやっていたことは確かだ。

 試しに父のパソコンに、接続してみる。ロック画面に、父の誕生日を入力すると、すんなり、開いた。無用心なことだ。

 証券会社の画面にアクセスすると、父の株取引やの状況が分かる。

 株の取引額が、全部で百万円程度だったので、少しほっとする。

 証券会社に電話して父が亡くなったことを伝えよう。


 青空社のセレモニーホールで通夜が行われる。

 五人の遺体。

 五つの棺。

 次々と弔問客がやって来る。

 朋子は機械人形のようにお辞儀する。

 お線香の匂いがする。

 蘭には近くのスーパーで黒いワンピースを買って着せた。

 蘭は不安そうにしている。

 朋子も不安だ。

 これからどうしたらいいのか。

 蘭と二人でどうやって生きていくのか。


 まだ、頭の中で家族が死んだことが理解できないでいる。

 あの遺体を目の当たりにしてもまだ信じられない。信じたくない。


 お悔やみを述べる近所の人達にも、ただ頭を下げるだけで、言葉が出てこない。

 何か話さなくては、と思うのだけれど。

 そうしている間にも、時間が過ぎていく。

 喪主の挨拶。

 そう、朋子は喪主なのだ。

「皆様、ご多用の中、わざわざ…。」

 葬儀屋に教えてもらった言葉を上の空で話す。


 よくわからないまま、通夜が終わった。

 家に帰り、床に座り込む。

 伯母が言う。

「朋子ちゃん、喪服がしわになるわよ。」

 慌てて立ち上がり、喪服を脱いでハンガーにかける。

「蘭ちゃんもお着替えしましょうね。」

 伯母は蘭のワンピースを脱がせる。

「朋子ちゃん、蘭ちゃんをお風呂に入れる?」

「入れます。」

 朋子は答えて、お風呂にお湯を張った。

 伯母が、

「朋子ちゃんも蘭ちゃんもほとんど食べてないでしょう。なにか食べなさい。」

 と言った。

「伯母さんは?」

 と朋子は訊く。

「私なら、お通夜で少しお寿司をつまんだわ。」

 と言って、冷蔵庫から冷凍食品を出してくる。

「えーと、この電子レンジはどうやって使うのかしら。」

 伯母が迷っている。

「あ、私やります。」

 冷凍もののパスタを温める。

「蘭ちゃん食べて。」

 朋子は言う。

 蘭はフォークを口に運んでいるが、食欲は無さそうだ。

 朋子は、強引に自分の分のパスタを口に押し込んだ。


 お風呂が沸いた。

「蘭とお風呂に入ってきます。」

 朋子は、伯母に告げ、蘭を連れてお風呂に行く。

 シャワーを浴びて、蘭の体を洗う。

 蘭の髪の毛をシャンプーする。蘭の髪をシャワーで流し、浴槽に入れる。

 朋子も、自分の体を洗い、シャンプーをざっとして、蘭と浴槽に入る。

 体中の疲れがお湯に溶け出していくようだ。

 蘭は何も言わない。

 蘭も大分、疲れているようだ。

 お風呂から上がると、蘭を寝かしつけた。

 あっという間に眠りに落ちたようだ。

 一階に下りて、伯母と向き合う。

「何もかも任せっぱなしで本当にすみません。」

 朋子は頭を下げる。

「いいのよ。あなたも被害者なのよ。遺族なのよ。」

 伯母は言う。

「明日の葬儀はどうしたらいいんでしょう。」

 朋子は訊く。

「今日と同じように、喪主の挨拶があるわ。短くていいのよ。皆、事情は分かっているのだから。」

「お義兄さんの会社関係の人も来ますよね。」

 朋子は不安になる。

「気にしなくていいのよ。あちらはお悔やみに来るだけなんだから。」

 伯母は言う。

「お香典とかいろいろ、分からないんですけれど…。」

「香典返しね、大丈夫。その場でお茶のセットを返して額の大きい人には、後からまた送ればいいのよ。」

「誰からいくら貰ったとか、全然、把握していないのですけれど。」

「それも大丈夫。ちゃんと記録してあるから。明日また、お葬式があるから、今夜は早く寝て。」

 伯母に背中を押されて、私も二階に行き蘭の隣に布団を敷いて寝た。

 不安で胸がいっぱいだったが、そのうち眠ってしまった。

 

十一

 今日は、両親と姉夫婦、姪っ子の五人の葬式だ。

 葬儀場には、昨日と同様に、五つの棺がある。

 葬儀屋の言う通りにやっているが、何をしているのか実感が無い。

 遺影を選ぶのにも苦労した。

 一体、いつ頃の写真を遺影にするのか。

 なるべく最近の写真を探した。

 両親と姉夫婦、蘭と咲、朋子、一族で撮った七五三の写真だ。

 朋子と蘭の部分はコンピューターで消してもらった。

 頭がぼーっとしている。

 最近あまり眠れていない。

 眠ってもすぐ目覚めてしまう。

 目覚める度に、五人とも死んだのを思い出す。

 それの繰り返し。

 おそらく、蘭もそうなのではないか。

 幼い蘭も、ひどく大きなストレスを抱えている。

 だから、あまり口を利かないのだ。


 そんなことを考えている間に、弔問客が来る。

 父の元同僚。

 母の友人。

 親戚関係。

 近所の人。

 義兄の仕事関係の人。

 姉の友人。

 咲の友人とその母親たち。

 それぞれからお悔やみの言葉を述べられる。

 朋子は自動的に頭を下げる。

 蘭は、感情を押し殺しているように見える。

 泣くことさえできないのだろう。

 それを考えると胸が痛む。

 どうしたらいいのだろう。

 何と言ってなぐさめたらいいんだろう。

 両親と妹を亡くした五歳の女の子に。

 

 誰かが入り口で揉めている。

 どうしたのだろうと思ってそちらに注意を向ける。

 伯母がなにごとか言っている。

 険悪な雰囲気だ。

 朋子がぼんやりしていると、伯母が声を荒げ始めた。

「たった三歳の子の命までうばって、どう責任を取るというの!」

「できる限り誠意を持って、対処させていただきます。」

「こちらは五人も亡くなっているんですよ!」

「ですからできるだけ誠意を持って…。」

 運送会社の人は低姿勢だ。

「誠意と言ったって、いくらお金をもらっても、あの子達が生き返る訳じゃないのよ。」

 気がつくと、伯母は泣いていた。

 それに気づいた運送会社の人は、

「私どもは、今日は一旦、帰りますが何かあれば、こちらにご連絡下さい。」

 名刺を置いていく。

「らくだ運送株式会社総務部長一ノ瀬友三」

 深々と頭を下げていった。

 朋子は、伯母の涙を初めて見た。

 伯母が怒ってくれたおかげで、朋子は少し冷静になれた。

 伯母の怒りは収まらない。

 けれど朋子は怒る気になれなかった。

 運送会社とは後ほど話し合うことになりそうだ。


 らくだ運送は、両親達を事故に巻き込んだ運転手の勤務先だ。

 伯母が怒るのも無理はない。

 弔問客がひそひそとうわさしている。

 マスコミも少し来ているようだ。

 葬儀社の安田さんが、

「私が対応してきてよろしいでしょうか?」

 と言ってくれる。

「マスコミにはお引き取り願ってください。」

 朋子は小声で言う。

 マスコミ…。

 交通事故なんか取材してどうするんだろう。

 ぼんやり思う。

 運送会社。

 なぜだろう。

 怒りが湧いてこない。

 相手も死んでいるからなのか。

 伯母が白いハンカチを渡してくれた。

 気づいたら泣いていた。

 涙が止まらない。

 ついこの間まで、あんなに幸せそうだったのに。

 残された蘭はどうしたらいいんだろう。

 朋子が育てるのか?

 それとも施設に預ける?

 朋子に子どもが育てられるのか?

 蘭はもう五歳、ある程度自分の状況が分かる年齢だ。

 蘭も泣きじゃくってる。

 葬儀屋さんの説得でマスコミは帰っていった。

 この後、喪主としての挨拶がある。

 文面はほとんど葬儀屋の安田さんが考えてくれた。

 朋子は、喪主の挨拶を始める。

 自分では意識していないが声が震える。

 手が震える。

 足が震える。

 涙が止まらない。

 弔問客も泣いているようだ。

 朋子はなんとか挨拶を終えた。

 葬儀が終わり出棺となった。


 これから火葬場へ行く。

 マイクロバスに揺られて、火葬場へ着く。五つの棺が焼かれる。

 とうとう焼かれてしまうのだ。

 もう元には戻らない。

 あの人達は死んだ。死んだのだ。

 焼かれたらただの骨だ。

 どうしてこんなことに。

 呆然とするなか、淡々と、機械的に、火葬が進められていく。

 完全な骨になるまで、少し時間がかかるという。

 

 ぼんやり待つ。

 葬儀屋さんが話しかけてくる。

「この後の予定ですが、お骨を拾ったら、その後お骨を持ち帰って頂くことになります。失礼ですが、お墓はお決まりでしょうか?」

 墓…。

 そんなあたりまえのことまで、頭が回らなかった。

 墓といえば、両親の出身地にあるだけだが、どちらも遠い。

 おまけに父は、三男なので実家の墓には入れない。

 どうしたものか。

 途方に暮れていると、葬儀屋さんが、

「すでにお骨はあるので、市営の墓地で、引き受けて頂けると思います。一応ですが、市営墓地の連絡先をメモしておきましたので、お渡しします。もちろん、他の墓地でも構いません。」

「あとは、初七日、四十九日ですね。」

 葬儀屋さんの説明が続くが、やはり、頭に入らない。

 今、朋子の頭にあるのは、葬儀費用のことだ。

 葬儀社は、後払いでいいと言ってくれたが、だからといって支払いがあんまり遅くなる訳にもいかない。


十二

 火葬が終わった。

 遺骨を拾う。

 人間は死んでしまったらお終いなのだ。


 この後は、初七日と四十九日法要がある。

 けれど、いつまでも仕事を休んでもいられない。

 蘭も幼稚園に行かせなければ。

 伯母さんにもいつまでも居てもらう訳にも行かない。


 お骨を家に持ち帰った。

 一人でお骨を持ちきれないなんてことあるだろうか。

 骨壷は全部で五つあるのだ。


 翌日。

 家の電話が鳴った。

 慌てて出る。

「はい、黒田です。」

「私、らくだ運送の一ノ瀬と申します。この度は、私共のせいで大変なご迷惑をおかけし、お詫びの言葉もございません。実は今、黒田様のご自宅の近くまで来ています。今から伺ってもよろしいでしょうか?お線香だけでも…。」

 伯母が隣で、電話を代わるようにジェスチャーする。

「すみません、伯母に代わります。」

「お電話代わりました。私、黒田美子の姉、鈴木浮子と申します。」

「私、らくだ運送の一ノ瀬と申します。この度は、本当になんとお詫びしてよいのか…。」

「本当はね、あなた方とはお話したくない、そういう気持ちなんです。なにしろ身内を五人も亡くしてるんですから。」

「本当に申し訳ありません。」

「でも、そういう訳にもいきません。こちらも通夜だの葬儀だのの支払いをしなければならないのですから。」

「お焼香させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「それはダメです。そうじゃなくて、事務的な話をしたいの。あなた方は、亡くなった私達の身内についてどういう償いをするつもりですか?」

 伯母の口調がきつくなる。

「はい、それに関してはできる限りの努力をさせて頂きたいと存じます。」

「具体的にどういう?」

「こちらの顧問弁護士と話をして、慰謝料を支払わさせて頂きます。」

「そんな話は電話では無理ね。どうぞ、家へ来て下さい。」


十三

 ほんの五分程でらくだ運送の人が来た。

 見覚えのある一人と、知らない一人の男が背広姿で現れた。

 見覚えのある男は、総務部長の一ノ瀬友三と名乗った。

 徹頭徹尾、頭を下げ続け、詫び続けた。

 そしてもう一人の男が書類を出した。

「私、らくだ運送の顧問弁護士の桜井と申します。この度は、法律に乗っ取って、こういった事故のケースの慰謝料を提示させて頂きました。ご覧下さい。」

 書類を手に取る。

 死亡逸失利益。

 事故一年前の収入。

 年齢別平均給与の額。

 見慣れない言葉と、数式が並んでいる。

「よく分かりません。」

 朋子は正直に言った。

「仰る通りです。分かりやすく言いますと、お一人当たり三千万円、合計で一億五千万円お支払いするつもりです。」

 それが、安いのか高いのかすら分からない。

「今、この場で、判を押せと言われても無理です。この書類は預かります。今日はこれでお引き取り下さい。」

 伯母がきっぱり言う。

 らくだ運送の人達が帰って行った。


十四

「現実的な話になるけど、葬儀屋さんにお金を振り込まなきゃ。」

 伯母が言う。

 すっかり忘れていた。

「いくらでしたっけ?」

「二百万円に消費税よ。」

 二百二十万円。

 大金だ。

「両親の銀行預金は下ろせないんですよね。」

 朋子は力なく言う。

「今すぐにはね。でもお香典とあなたの貯金を足せば何とかなるんじゃないの?」

 お香典、すっかり忘れていた。

「いくらくらい集まったんでしょうか?」

「お通夜とお葬式で、百人くらい、来て頂いたわ。」

「そんなにたくさんの人が…。」

「蘭ちゃんのお父さんの会社関係の人とか、親戚、ご近所の皆さんね。」

 伯母は言う。

「とにかく葬儀屋さんに先に振り込まなきゃ。朋子ちゃん、お坊さんへのお布施、自分名義の貯金、下ろしたんでしょう。」

「はい。三十万円。」

「はっきり訊くけど、あといくらぐらいあるの?」

「五百万円くらいあったうちの三十万円下ろしたので、あと四百七十万円くらいです。」

「お香典が一人一万円としても百万円くらい、朋子ちゃんがこれ以上自腹を切るのも辛いわね。」

「すみません。どうしたらいいでしょうか?」

「保険が下りるのも、もう少し時間がかかりそうだし。」

「保険の手続きもまだやってません。」

「そうよね。時間的に難しいわよね。これはあまり考えたくないことなんだけど、事故を起こした運転手の勤務先の会社からの慰謝料をお葬式の費用に充てる方法もあるの。」

「ああ。そういえば。」

 朋子の頭は全く働かない。

「一人三千万円と言っていたわ。それに同意すれば、一億五千万円入るわ。」

 急に桁違いの額を聞かされ動転する。

「どうする?同意する?裁判を起こすこともできるわよ。」

「裁判、無理です。」

 朋子は即答する。

 こんなに疲れ果てているのに、裁判は無理だ。

「そうね、私もそう思うわ。」

 伯母が頷く。

「実はね、あの会社の人達、香典と言って、お金を包んできたの。私は思わずいらないって言ったんだけど、受付の人が受け取ってしまってね。それがちょうど百万円なの。どうする?突き返すこともできるけど。」

 伯母が言う。

「いえ、そのお金を葬儀費用の足しにします。」

 朋子は言う。

「私もそれがいいと思うわ。」

 伯母が言う。

 裁判が無理なら、らくだ運送の人達の一億五千万円に同意することになる。割り切れない思いもあるが、疲れきった朋子には、他の方法は思いつかなかった。

 蘭はぼんやりしている。

 とにかく蘭を二階に上げ休ませる。

「蘭ちゃん大丈夫かしら?」

 伯母が言う。

「大丈夫じゃないと思います。」

 朋子は言う。

「児童カウンセラーに診せたほうがいいかもしれないわ。」

「児童カウンセラー?」

 朋子は訊き返す。

「そう。両親と妹を亡くして不安定になっているから、お医者さんか、カウンセラーに診てもらったほうがいいわ。」

「これから蘭はどうなるんでしょうか?」

「そうね。朋子ちゃん、蘭ちゃんを見るのは現実的じゃないでしょう?」

「はい。姉には申し訳ないですけど。」

「仕方ないわよ。事故だもの。市役所に相談して、養護施設に預けましょう。」

「養護施設…。」

 私は愕然とする。

「可哀想だけど、それしかないわ。朋子ちゃんはできるだけ面会に行ってあげて。」

「はい。」

 ついこの間まで蘭は家族で暮らしていた。

 優しい両親と何不自由無い生活をしていたのに。

 事故を起こした、運転手を憎いと思った。


 蘭が口を利かない。

 顔も無表情だ。

 当たり前だ。

 家族を亡くしたのだ。


 このままだと蘭は病気になってしまう。

 何とかしなければ。


「伯母さん。蘭が心配です。児童カウンセリングってどこへ行ったらいいんでしょう?」

「近所の精神科か心療内科に行けばいいわ。近所に信頼できる病院があればいいけれど。」

「インターネットで調べてみます。」

「インターネットにはガセネタもあるから、近所の評判も聞いたほうがいいわよ。」


 信頼できる近所の人。

 やはり、母の友人の佐藤さんだろう。葬儀屋の件でお世話になった。今回も相談することにした。

 顔も広いし、自治会の役員もやっている。

 電話した。

「もしもし私、黒田と申しますが、奥様いらっしゃいますでしょうか?」

「朋子ちゃん、朋子ちゃんなの?」

「はい、そうです。」

「大丈夫?困ったことがあれば何でも言って。」

「実は、姪っ子の蘭が、食事もほとんど摂らなくなって、口も利かなくなってしまって、どこかカウンセリングをしてくれるような病院はないかと思いまして。」

「それなら、ハートクリニックはどうかしら?」

「ハートクリニックって駅前のですか?」

 朋子は訊く。

「ええ、そうよ。」

 朋子は、ハートクリニックの電話番号を訊いて電話を切った。


十五

「朋子ちゃん、申し訳ないけれど、お葬式が終わったから、私は家へ帰るわ。困ったことがあったら、いつでも電話ちょうだいね。」

「わかりました。本当にお世話になりました。とても助かりました。後は私一人でやってみます。」

 朋子は言う。

 伯母は、

「全て、一人でやろうなんて思わないで、いろんな人の助けを借りてね。」

 と、言い残し、伯母は帰って行った。


十六

「蘭ちゃん、お家に帰りたい。」

 蘭がか細い声で言う。

 朋子はどう言ったらいいか迷う。

「蘭ちゃん、もう少し、朋ちゃんと一緒にいようね。」

 もう少しが、どの位の期間になるのかわからない。

「蘭ちゃん、お家に帰る、パパとママと咲ちゃんの所に帰る。」

(皆、死んでしまったよ。)

 と、言いたいのを、ぐっとこらえ、

「もう少し、朋ちゃんのお家で暮らそうね。」

 その場しのぎと思いつつ言う。

「蘭ちゃん帰る。帰りたい。」

 とうとう蘭が泣き出した。

 朋子は、途方に暮れる。

 正直、泣きたいのは、朋子も同じだ。

 いつまでも仕事を休んでいられない。

 蘭も幼稚園に戻らなければならない。


(養護施設に入れることも考えてね)

 伯母の言葉が頭から離れない。

 正直、朋子が蘭を育てていくことは不可能だ。

 仕事もあるし、朋子は、家事を全くやったことがない。

 蘭の面倒を見ながら、家事と、仕事を両立するのは容易ではない。

 やはり、施設に入れるしかないのか…。

 

 ハートクリニックにやってきた。

 佐藤さんの紹介だ。

 佐藤さんに電話番号を教えてもらって事前に予約を取った。

 電話口の受付の女性は感じが良かった。

 それでも心療内科に行くのはためらう。

 予定時間より、三十分も早く来てしまった。

 おそるおそる、心療内科のドアを押す。

「ハートクリニック」

 と、ドアに書いてある。

 駅前の雑居ビルの1フロアだ。

 清潔な感じがする。下の階は美容院だ。

 待合室に二人ほど待っている人がいる。

 一人は高齢の女性、もう一人は若い男性だ。

 受付には、二十代くらいの女性が座っている。

「予約していた黒田と申します。予定より早く来てしまったのですが…。」

「よろしいですよ。初診の方ですね。保険証をお持ちですか。」

 朋子はバッグから保険証を取り出して、受付に出した。

「こちらに記入してお待ち下さい。」

 B5の紙二枚を渡された。

 住所、氏名、電話番号、性別、年齢などを書く欄があった。

 その他に病歴や相談内容を書く欄があった。蘭の分と二枚書かなくてはならない。

 病歴は特に無いが、相談内容はどう書いたら良いものか。

 自分の問診表には、食欲低下と物事に集中できないこと、不眠がちであること、家族を亡くしたことを書いた。蘭の問診表にも、家族を亡くしたこと、口を利かないこと、食欲の低下と書いておいた。

 いつの間にか、約束の時間になりカウンセリング室に入る。五十代くらいの優しそうな女医さんだった。

 一通り事情を説明すると、蘭と別々に話を聞くというので、朋子は一旦、部屋を出た。三十分くらいで朋子が呼ばれる。


 カウンセリング室に入った。

 椅子に座るように勧められる。

 女医さんは言う。

「蘭ちゃんを施設に預けることに、罪悪感を持たないで下さい。あなたは傷ついているんです。ご両親を亡くし、お姉さんを亡くし、義理の兄を亡くした。そして、姪っ子を一人亡くした。だから、絶対に頑張らないで下さい。とにかく今は、休んで下さい。眠れなくても横になって下さい。何でもいいから食べて下さい。辛かったら泣いて下さい。蘭ちゃんのことより、まず、ご自分のことを考えて下さい。」

 朋子には意外な言葉だった。

 蘭のことを第一に考えるように言われるかと思っていた。

 自分のこと、考えていなかった。

 明日、市役所に相談に行こう。


十七

「事故でご家族を亡くされたんですね。」

 市役所の職員が言う。

「現在、住民票はどちらにありますか?」

「△市です。」

 と朋子は答える。

「では、△市で相談して下さい。」

 にべもなく職員は言う。

「こちらの市の施設を見学したいんです。」

「それでしたら、こちらの市に住民票を移して下さい。」

 職員は機械的に言って、終わり、だった。


 電車に乗って△市にやってきた。

 蘭も一緒だ。ずっとうつむいている。

 市役所に行き、住所を変更する旨を言い、指示に従う。

 朋子の住んでいる××市に移す。

 手続きを終え、蘭と一緒に電車に乗る。

 蘭は相変わらず、うつむいたままだ。

 食事もほとんど食べない。

 朋子は焦った。


十八

 朋子は、蘭を養護施設に入れる手続きを終えた。

 とうとう、蘭を施設に入れることにしてしまった。

 罪悪感がある。

 かといって、朋子が蘭の面倒を見てやることはできない。

 

 蘭を施設に入れる日。

「じゃあ、蘭ちゃん行こうか。」

 蘭の手を握り、家を出る。

 電車に揺られること十分あまり。

 駅から歩いて十分。

「さくらこどもの家」

 と、看板が出ている。

「はい。」

 女性の声がする。

「私、黒田と申します。」

「ああ、黒田さん、少々お待ち下さい。」

 エプロン姿の女性が出てくる。

「どうも、黒田さん。私、さくらこどもの家の坂田と申します。」

「私、黒田朋子と申します。こちらは、私の姪の川田蘭です。」

「蘭ちゃんよろしくね。」

 坂田さんは、人懐っこい笑顔を見せる。

 中に案内された。


 応接室でお茶を出された。

「さくらこどもの家では、親の事情で、家族で暮らせなかったり、親を亡くしてしまった子どもの為の施設なんですよ。」

「はい。」

「だから、蘭ちゃんのような境遇の子はたくさんいます。なので安心して預けて下さいね。」

 坂田さんがとても優しそうなので朋子は少しほっとした。

「蘭ちゃん、これから、蘭ちゃんが使うお部屋とお友達を紹介するわね。」

 蘭は一言も発しない。

「こちらです。」

 通された部屋には、二段ベッドが二つ、学習机が四つある。

「蘭ちゃんはこのベッドを使ってね。」

 手前の二段ベッドの下の段を案内される。

「蘭ちゃんの机はここよ。」

 蘭は無反応だ。

「すみません。大分、緊張しているみたいで。」

 朋子は言う。

「いいのよ、はじめはみんなそう。」

「もうすぐ学校から、お友達が帰ってくるから、少し待っててね。」

 蘭の荷物は必要最小限、プラスチックの収納ケース一個分だ。

 下着と着替え、少しのおもちゃを入れたら一杯になってしまった。

 今までの、蘭の暮らしとは、大違いだ。

 両親と妹と、何不自由なく、暮らしていた蘭。

 それが今、二段ベッドの一つと、学習机一つだけの空間で暮らす。

 胸がつまりそうになりながら、坂田さんの説明を聞く。

「面会は自由です。差し入れも。電話もかけてきてくれてかまいません。蘭ちゃんはここからたんぽぽ幼稚園に通います。」

「はい。」

「手続きはこちらでするので、あとは、署名、捺印だけして頂いて。」

 朋子は施設の書類にサインするとき、これでいいのか、という疑問が頭をよぎった。

 自分が蘭と暮らした方がいいんじゃないか。

(ご自分の幸せを一番に考えて下さい)

 カウンセラーの声が頭に響く。

 震える手で、書類に署名、捺印した。


 両親と義兄、姉の、初七日と四十九日が終わった。


 朋子は職場復帰することにした。


十九

「ありがとうございました。」

 朋子はお客に頭を下げる。

「あのう…。」

 と、お客が申し訳なさそうに、

「お釣りがまだなんですけど…。」

 と言う。

 朋子は慌てて、

「お釣り三百円でございます。大変失礼しました。」

 と、頭を下げる。

「黒田さん、ちょっと。」

 店長に呼ばれる。

「君、最近、ミスが多いね。」

「すみません。」

 朋子は謝る。

「やはり、仕事復帰は、無理なんじゃないの?」

「すみません。以後気をつけますので、働かせて下さい。」

「ご家族を亡くして大変だろう。まだショックが大きいんじゃないか?」

「大丈夫です。」

「それでもこうして、ミスが出ているじゃないか。」

「本当に気をつけます。なので働かせて下さい。」

「いきなり辞めるというのも難しいだろうから、半年か一年くらい、お休みしたら?」

「いえ、でも生活していかなければならないので…。」

 朋子は言う。

「君、色々、お金入るんだろう。」

 店長が言う。

 はっとした。

 皆に、お金のことが知れ渡っている。

 皆、知っているのだ。

 でも、あれは朋子一人のお金じゃない。慰謝料の半分以上は、蘭のものなのだ。

 朋子は後見人にすぎない。

 蘭が成人したら、蘭に渡すべきお金だ。

 でも、そう受け取ってくれる人は少ないのかも知れない。

 朋子が一億五千万円、受け取ったと思う人もいるかも知れない。

 保険金もそうだ。

 朋子一人のものではない。

 でも、そんなこと上司にとってはどうでもいいに違いない。

 確かに、慰謝料六千万円(父母の分合わせて)あれば、生活には困らないかも知れない。

 でも、働くということは、お金のためだけではない。

 仕事をしていれば気が紛れることもある。

 事故のことを忘れる時間もある。

「すみませんが、もう少し働かせていただけませんか?これ以上ミスが出るようであれば店長の仰る通り、お休みを頂きます。」

 朋子は言った。

「まぁ、そこまで言うのなら、少し様子を見るけど、これ以上ミスが続くようなら、長期に休んで貰うことになるから。」

「はい。」

 朋子はレジに戻った。


 家に帰る。

 朋子はリビングにうずくまり、声を殺して泣いた。

 気が付くと三十分経っていた。

 無力感が襲ってくる。

 もう駄目だと思った。


二〇

 蘭を施設に預けて、三ヶ月が経った。

 朋子はその間に、保険の手続きや、父の株の手続きや、凍結された銀行預金の解除などの用事を済ませた。

 市の霊園に手続きして両親と姉、義兄、咲の納骨も済ませた。運送会社との示談も成立した。

 事務的な手続きのおかげで、ようやく平静を保っていられたように朋子は感じた。

 それでも朋子の頭の中には常に蘭の存在があった。

 何度も施設に面会に行った。

 蘭は淋しそうだった。

 朋子に見捨てられたと感じちていたかも知れない。

 朋子の蘭に対する罪悪感は日に日に募っていった。心の中でもう一人の朋子が、蘭を見捨てるのかと自分自身を責める。

 朋子の姉、広美の顔が浮かぶ。娘を自分の命のように、大事にしていた。天国の姉はどう思っているのか。朋子の心は痛む。

 何度も心療内科のカウンセラーに話した。


「外泊という形で、週末だけでも預かってみたらどうですか?」

 カウンセラーからの思いもかけない提案だった。

 朋子は少しずつ、蘭を自宅に外泊させてみた。

 蘭の反応は意外だった。朋子との時間を楽しんでくれているような素振りが見えたのだ。

 朋子は嬉しかった。

(もしかしたら、蘭を引き取れるかも知れない。)


 ある日のこと。

「蘭ちゃん、今夜、何食べたい?」

 朋子はできるだけ優しい口調を心掛けて訊く。

「ハンバーグ。」

 小さな声で答える。

 朋子は、

「わかった。頑張って作るからね。」

 と、笑顔を見せる。

 蘭を連れて、近所のスーパーへ行き、挽肉とたまねぎを買う。

 家に帰り、慣れぬ手つきで、ハンバーグを捏ねる。

 フライパンでハンバーグを焼いて、食卓へ。

「はい。蘭ちゃん、できたよといただきます。」

 と、朋子は言って、ハンバーグを食べ始める。

 蘭は何も言わないもの

「蘭ちゃん、食べないの?おいしくできたよ。」

「…。」

「蘭ちゃん。どうしたの?」

「食べたくない。」

「どうして?」

「蘭ちゃんが食べたいのママの作ったハンバーグだもん。」

 朋子はかっとなった。

 蘭のハンバーグの皿ごと下げて、台所へ持って行く。そのまま、三角コーナーに捨てる。

「食べたくないなら、食べなくていい!」

 大声で怒鳴り、自分の夕食を食べ続けた。

 蘭が泣いている。

 泣きたいのはこっちだ。と、思った。


 ハートクリニックに行き、医者にハンバーグの件を話した。

「怒鳴ってしまって悪かったと思っています。どうしていいか分からないんです。」

 朋子は言う。

「怒っていいと思いますよ。たくさん怒ってたくさん泣いて下さい。蘭ちゃんと一緒に。そして自分の気持ちを正直に話してあげて下さい。蘭ちゃんはあなたが思っているより大人ですよ。」

 朋子は悩みに悩んだ。

 そして、蘭を引き取ることにした。

 仕事は、当分の間、休むことにした。

 姉一家が住んでいたマンションは引き払った。思い出の品がたくさんあったが、蘭の物以外はほとんど処分した。


二一

 蘭を引き取ってからも、自問自答の日々が続いた。蘭と正面切って、ぶつかることも度々あった。

 半年経ち、事故から一年が経とうとしていた。蘭は小学校に入学していた。

 朋子は、蘭が学校に行っている間、以前の職場でパートタイムで働くことができるようになっていた。

 ここまで持ち直せたのは、蘭のおかげだ。

 蘭と二人三脚で、事故から立ち直りつつあるのだ。


終章

 今日は体育の日。

 蘭の運動会だ。

 天気は台風一過の晴天だ。

 蘭は今日、借り物競走に出る。


 スターターがピストルを天に向ける。

 パン!

 と、音がして、子ども達が一斉にスタートする。

 蘭が懸命に走っていって紙を拾う。

 蘭は紙を見て戸惑っている。

 何と書いてあるのか。

 すると、蘭がこちらに向かって走ってくる。

 何を借りるのだろうか。

 蘭が手招きしている。

 誰に?

 蘭は朋子に手招きしているようだ。

「来て!」

 蘭が呼ぶ。

 他の子ども達はもうゴールし始めている。

 戸惑いながら、朋子は蘭の方に走る。

「美人、て書いてあったの?」

 と、朋子は冗談を言う。

 蘭は何も言わず、朋子の手を引いている。

 朋子も走る。

 やっとゴールした。

 朋子は蘭が握りしめている紙を見た。

 そこには、

「ママ」

 と書かれていた。

                  (了)


参考文献

「知っておきたいお葬式Q&A」著者 佐々木悦子

小学館

「臨終から納骨、法要まで お葬式」著者 碑文谷創 小学館


この物語はフィクションであり、実際の人物、団体とは関係ありません

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