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未来の旦那と遭遇

ブクマご登録ありがとうございます。

とても励みになります。


こんなところで己の人付き合いの悪さと物覚えの悪さが、記憶の呼び起こしの邪魔をしている。


………ログリディアン=ムトアーリデ様とレアンナ=フロブレンはいつ婚姻していたのか。


婚姻の話を誰から聞いたのか?


そもそも婚姻の話は本人達から聞いたのか?


ログリディアン=ムトアーリデ様とレアンナの出会いの詳細を国王妃だった私は知っているのか?


自分の記憶力の無さが恨めしいっ。思い出せ~思い出せ~思い出せ~。


…。


……。


一睡も出来ないまま朝になってしまった。おはよう7才の私。さようなら6才の私。


良く良く考えれば、誰に聞いたとか関係ないじゃない。私が死んでしまう20才当時、すでにログリディアン様とレアンナは婚姻していたのは間違いないはず…だ…若干自信が無いけど。


そう今日は不可抗力の徹夜明けだけど、私の7才の誕生日です。何やってるの私?


「おはようございます、レアンナお嬢様。アラ?お顔むくんでます?もしかして今日のお誕生日会が嬉しすぎて興奮して眠れませんでした?」


侍女のスナージが良い笑顔でそう聞いてきたけど、ただ記憶の扉をこじ開けようと頑張りすぎて眠れなかっただけ、とは言い難い。


むくんだ顔を侍女達が揉み解してくれて…何とか形を整えて、皆の前に参上した。


毎年…家族だけのお誕生日会だったのだけど、お茶会デビューをした今年からアンライカ様や茶会でお友達になったご令嬢方もお誘いしている。


わ~皆来てくれている!笑顔のまま視線を動かして、お兄様の隣に居る人を見て驚愕した。


ノクタリウス=フゴル=モエリアント!何故、陛…アレがここに来ているのっ?!


赤く燃え上がるような髪色で瞳は新緑色…怖いくらいの美貌の持ち主、しかし心の中は泥沼より醜悪な男…!


はっ…いけない。今は私はまだ7才だ。アレのことは無視しよう。


ご令嬢の皆とご挨拶を交わし、さあこれからお菓子でも摘まもうかな~と移動仕掛けた時に目の前にお兄様が立ち塞がった。


「あからさまに、俺達の方を見ないように避けているな」


お兄様…流石フロブレン家の次期当主!鋭くていらっしゃるわね?


私は渋々お兄様に腰を押されて、男の子2人の前に連れて行かれた。挨拶なんてされなくても知ってるもの。引き千切ってやろうかぁぁ?!顔を睨みつけないように、必死で目線を喉仏辺りに固定する。


「お誕生日おめでとう、レアンナ嬢。そして初めまして、ノクタリウス=フゴル=モエリアント王太子と申します」


「ぃへ…?」


間抜けな声が出てしまった。え…どういうこと?私の前の赤褐色の髪に濃い緑色の瞳の細身のお兄様を見上げた。


ええっ…あなたが王太子殿下?違いますよね?


「レアンナ?」


お兄様の声で我にかえって慌てて淑女の礼をした。


「レアンナ=フロブレンと申します。本日はお越し頂き、王太子殿下より御祝いのお言葉戴きまして有り難き幸せに御座います。」


ご挨拶をしながら、頭が混乱する。私の知っている王太子殿下…ノクタリウス=フゴル=モエリアントではない?


顔?顔………こんな感じだっただろうか?先ほど見た男の子の方が、見た瞬間にノクタリウスだと感じたのだけど?


王太子殿下の後ろには私がノクタリウスだと思い込んだ男の子が立っている。


良く見れば、王太子殿下より年下っぽい。この子誰?でもどこか懐かしい…。このキリッとした雰囲気。


この子の方がノクタリウスみたいだけど……って言いながらもよく考えてみたら私の記憶力じゃ、俄に怪しくなってきたわ。


ノクタリウスの顔を美化…ではなく悪化?して覚えている可能性もあるし…うん、この王太子殿下ね。そうか、まだ子供だし邪気の塊には見えないわね。


あら、そう言えばこの後ろの男の子にご挨拶してないわね。


腰を低くしたまま赤髪の男の子の前に移動し、淑女の礼をしながら自己紹介をした。


「レアンナ=フロブレンと申します」


「本日はお誕生日おめでとうございます。ログリディアン=ムトアーリデです」


な、何ですってぇ?!この赤髪の男の子がログリディアン様?!


……。確かに赤髪だった記憶はある。美形だったのは記憶している。だが所詮私の記憶力だ。美化や悪化で色々補正がかかっている気がする。取り敢えず今、私の目の前にいるログリディアン様7才は、非常に美少年だということは理解した。


軽く挨拶を終えてアンライカ達、ご招待した令嬢達に合流した。そして合流した途端、アンライカに詰め寄られた。


「レアンナ!ちょっとぉ…どうして王太子殿下がいらっしゃるの?!」


あら?そう言えばログリディアン様に会った衝撃で、お兄様に王太子殿下の事を聞くのを忘れていたわ。


「本当に何故かしら?」


「レアンナってば!」


「ログリディアン様もいるわね。ご存知?若干7才で王太子殿下のご公務の補佐されているそうよ」


「まああ!」


此処にいるのは7〜10才の女の子だ。甲高い笑い声をあげてとても楽しそうだ。


そう、リナファーシェもこういう輪に入ればいいのだ、大人しくったっていい。そう言えば当時、私はどう考えていたかしら…。


小さい頃は…勉学ばかりしていた記憶しかない。それに記憶力の良くない私は常に父に怒られていた。


友達と遊んだことって無いよね。


「レアンナのお兄様も素敵よね!ねえ、ご紹介してぇ」


と、伯爵令嬢のメシルアーデに言われて早速お兄様を紹介した。そしてそれをキッカケに王太子殿下の周りに集まる令嬢達。


少し離れてその様子を見ていると、いつの間にか隣にログリディアン様が立っていた。


「君は王太子殿下のお側に行かないの?」


本当にこの子7才なの?人のことは言えないけれど…。


誰が好き好んで泥水男の腐れ陛下予備軍の側に行かないといけませんの?…とは言えないので


「ご挨拶はさせて頂きましたので…」


と、貴婦人の如く楚々と微笑み返しておいた。


「ふーん」


そう言ってノクタリウス殿下の方を見ているログリディアン様。私…この方と本当に婚姻するのかしら?


う〜ん、今はそんな気持ちにならないわね…まあ、精神はリナファーシェだから見た目だけとはいえ、あの泥水腐れ陛下の予備軍に似ているログリディアン様じゃ好きにはなれそうにないわ。


ちょっと待って…私またとんでもないことに気が付いてしまったわ!


私が王太子妃として城に上がったのが確か15才よね?それで16才で婚姻…その時にすでにレアンナもログリディアン様も事務官として働いてなかった?確か…リナファーシェと2人共同い年くらいよね?


私、今日7才よね?一体いつから働き出すの?まさか明日から?!


……心配しなくても大丈夫だった。


翌月から、役人を目指している優秀な子供達が通う学舎に暫くは通うことになったからだ。お兄様も一緒だった。因みにログリディアン様はもうすでに王太子殿下付として働いているという扱いらしい。


そして…あっという間に時間が過ぎて…私も9才になった。


その間に何度か茶会などが開催されたりしていたけれど、結構な頻度でリナファーシェと会う機会があった。


爵位も大体同格の親戚だし当然と言えば当然だろう。しかし…いつもリナファーシェは独りぼっちだった。


やっぱり気になるじゃない?私の前世でもあるし…私はリナファーシェを見かける度にずっと声をかけていた。


あの子は相変わらず話をしていても反応は鈍いし大人しいし、多弁な方じゃないけれど…自分だから分かる、そろそろ心を開きかけてくれているかな~と思い始めた…王太子殿下の13才のお誕生日の会場で…。


お城の広間でリナファーシェを見かけて挨拶をしようとした私の肩を、誰かが掴んだ。振り向いた先にはリナファーシェの母親、前世の私の母が立っていた。


母に会場外の庭の一角に連れ出された。


「うちのリナファーシェに不用意に声をかけないで頂ける?」


「え?」


思わずそう聞き返してしまったのは前世の母だという気の緩みだからだが、その返事の仕方を聞き逃す母ではなかった。


「ふんっ…躾のなっていない下位のくせに!リナファーシェは王太子妃になるの。私の血筋では当然なの。あなたが声をかけていい身分ではないのよ。恥を知りなさい」


へえぇぇ~。おやまあ…。そんな重要な案件をこんな庭の一角で若干9才の私に向かって暴露していいのかしらね?普通の子供なら令嬢方の話題にして真っ先に噂を広めてしまうけど?


それにしても大人げない人ね。いい大人が子供を捕まえて嫌味連発って…。何か言い返してやろうかしら、と思ったけど…ふぅ~それこそ大人げないわよね?


「そうですか、内示も告示もされていない状況で王太子妃にさも選ばれたかのように公爵夫人が吹聴していたと、お友達に話し聞かせてきますね、失礼致します」


私はそう言い捨てると、小走りにその場を……逃げ出した!


「ま…まっ、待ちなさい!」


馬鹿らしい…私を追いかけようと走り出てきた元、母を振り切るように庭を走り回って時間を置いてから、庭とは反対側の回廊の隅に置いてあるミニソファに腰を下ろして、息を整えた。


あんなに口答えを初めてした。手が緊張と興奮でまだ震えている。あの前世の母に口答えなんて怖いと思ったけれど、それを上回る躾のなっていない…という、今のフロブレン家の両親に対する侮辱に怒りで頭がいっぱいだった。


でもいい気味だ…あのまま馬鹿みたいに走り回ってどこかで転んでいれば尚いい気味だ。


「面白いな…」


「きゃあ!」


廊下の暗がりから突然、声をかけられた。少し腰を浮かせて暗がりの向こうを睨みつけていると、暗がりから男の人…子供かな?が出て来た。月明りの下にその子が出てくると真っ赤な髪が光り輝いているのが見えた。


「ログリディアン=ムトアーリデ公爵子息!」


私は慌てて淑女の礼をとった。暗がりの中からスルリと歩いて出て来たログリディアン様は、以前…お会いした時より身長が伸び、可愛いと格好いいを併せ持った更なる美少年に成長していた。


「お久しぶり、レアンナ嬢。先程は実に見事だったね」


先程?ギクッと体が強張った。もしかして…見られていた?


ログリディアン様は私に手でソファに座るように指示すると、横に並んでご自分もソファに腰かけながら、それはそれはニヤニヤとしていた。


ああ…これは見られたな…。


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