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ざまぁの後の悪い顔

ざまぁが繰り出されてます

誤字修正しています

「不審者か…こんな城内にまで入り込むとはな…」


とノクタリウス殿下が仰ったので、リディ様と私は事情を説明することにした。


レニシアンナと名乗る少女は昨日の夜も、突然リディ様の私室の室内に現れ、消えたこと。その姿はどう見ても数年前に事件を起こしたレニシアンナ=ワイズバーデ男爵令嬢だったこと。


「でも、ご安心下さい!レニシアンナが現れる法則が分かりましたので、対処は出来ます」


私が元気よく答えると、ノクタリウス殿下は戸惑いながらチラチラとリディ様を見た。


「そ、そうか?申してみよ」


「あのレニシアンナと名乗る少女は、ログリディアン様の居る所にしか現れません。よってログリディアン様から離れていれば殿下もリナファーシェ様にも危険が無いと思われます!」


「……」


「そ、そうか。では今後はどういう方針で行くのかな?」


私はノクタリウス殿下に元気に答えた。


「ログリディアン様を隔離?」


リディ様が私をジロリと見下ろしながら唸った。


「人を病原菌のように言うな…」


「あら〜ぁ?だってログリディアン様の居る場所しかあの魔物の少女が現れないじゃないですかぁ?」


今の今まで燻っていた前世で味わった屈辱が、ここにきてざまあみろの瞬間を得たのよ!レニシアンナにざまあみろを直接言ってあげる機会はまだあるかもだし、ログリディアン様を本当に踏みつけることは出来ないけど、精神的に踏みつけることは可能だわ!


「あ〜あ怖かった。これで今日から安心して眠れますわぁ〜」


「おい、もうレニシアンナの件が片付いたかのように言うのはやめろ…」


「あらぁ?だって原因は分かったじゃないですか。ログリディアン様にあの少女が引き寄せられているのであれば、ログリディアン様を隔離…」


「もうやめてあげ………すまない」


不敬だけど、ノクタリウス殿下を睨み上げた。このノクタリウス殿下だって、元を正せばノクタリウスに違いない!自分で言ってて訳が分からなくなっているけれど。

私の前世の恨みをここで晴らさないでいつ晴らす?今しかないっ!!


「あの魔物を招き入れたのは誰ですか?」


「……」


「宝石を与えてしまったのは誰ですか?」


「………」


「下らない嘘を信じて刺されてしまった方は……」


「……レアンナ、なんでも好きなもの買ってあげるから…」


「すぐ物で釣ろうとするっ!」


ノクタリウス殿下が間に入って宥められたので、取り敢えず矛を収めてあげた。私とリディ様は、通常仕事をしている執務室から持てる仕事を手に、リディ様の私室に移動した。


「暫くはレニシアンナが現れて皆様を驚かせてはいけませんので、別室で仕事をしましょう」


「どうして俺の私室なんだ?別に…」


「あら?じゃあここで1人でお仕事なさいます?私はそれでも構いませんよ?お一人で魔物かもしれないレニシアンナと対峙して下さいませ」


リディ様は物凄い顔で私を睨んでいる。レニシアンナの怖さから比べたら可愛いものですわ。


「……」


「……レアンナ、お願いします。1人は怖い…」


思いっきり鼻で笑いながら、嫌味たらしい顔をしてリディ様を見てニヤリと笑って見た。


「いいですよ?ははっ…!」


あ〜すっきりした。かなりの溜飲が下がった気分だった。


さて、持ち込んだ仕事を片付けて行く。お茶と茶菓子を出して、いつもはしない私語をしながら時間が過ぎてくると現金なものでリディ様の機嫌が戻って来た。


「存外、二人きりの仕事も楽しいな~ジジイ共の御小言や愚痴も聞かないで済むし…」


コンコン……。扉が叩かれた。


「モカレです。外務省から視察先の資料が届きました」


「はい、どうぞ」


事務官の若手17才のモカレさんが一礼して室内に入って来る。


「わざわざすみません。ちょっとこの決裁書類があるから…リディ様の署名をもう少し待ってね。私リナファーシェ様に書状をお渡ししてくるわ」


私はモカレさんから預かった資料に目を通して、別の資料を手に持ち部屋を出た。


☆   ★   ☆   ★   ☆   ★ 


「ロ、ログリディアン様…」


「ん?なに~?」


このモカレとは同じ年で気安く話が出来る。事務官はどうしても年寄りが集まってくるから、正直有難い。モカレは子爵家の次男だが、かなりの秀才だと聞き及んでいる。実際、機転も聞くし応用力もある。


「この部屋ですよね?魔物が出たの…」


モカレは綺麗な金髪の中々の美少年だが、今は顔色が悪い。


「魔物…う~ん。魔物かな?俺は実際に魔物を見たことが無いので断言出来んが、只の根性の悪そうな小娘だったとは思うが…」


「そ…そう言えば魔物は知性があって…ログリディアン様は話をされたことがあるんですよね?」


おっと、侍従のコッカスレイがモカレに茶を入れてくれた。丁度いい。


「コッカスレイも見たことあるよな。森の中で…」


コッカスレイは目を鋭くして窓の方を見た。


「確かに神秘的な…珍しい髪色の少女でしたが、レアンナ様に暴言を吐かれましたし、恐ろしい形相で走って追いかけてきましたし…私は思い出したくありませんね」


モカレはそれを聞いて、ひぇ…と小さく悲鳴を上げた。


「走って追いかけてくるのですかぁ?怖えぇぇ………ん?」


対面に座ったモカレが言葉を切ると、俺の方ではない少し後ろ側を震える指で差している。


コッカスレイと俺はその指差した後ろを見た。 居た…………魔物レニシアンナだ。


「うわあぁあぁ!」


「っ!」


何でまた、今出てくるんだぁ?!すぐ消えるかと思ったレニシアンナは上目遣いで俺を見ている。


モカレが一瞬でソファの影に隠れてた!お、俺も隠れたいが…くそぉ逃げ遅れたぁ?!


「はぁ~ただいま戻りましたぁ~」


それに、何故今帰ってくるんだレアンナァ?!


緊迫した室内の様子にレアンナはモカレが指差した先を見て……………大笑いをした。


「アハハハハーーーーッ!何それ?お茶の染みまみれのドレスじゃない?!ソレに何ぃ?顔っ!化粧が禿げて肌ボロボロよぉ?!本当肌きったないわねぇ~以前のログリディアン様が仰っていた、実は20代後半説が信憑性を増すわねぇ~!本当、おばさんが無理しないほうがいいわよぉ~!」


一気にそう言った後、笑顔を止めてニヤリとレアンナは笑った。悪い顔だ。


「年を取るとね、首と手の甲に皺がいっぱい出来るのですって?……あなたあちこちシワシワよ?」


「…っ!」


おい…それ前、俺が言った言葉だし…そしてレニシアンナはまた消えた。


モカレもコッカスレイも俺も恐怖で固まったままだった。何が怖かったって魔物より、喜々としてレニシアンナを罵るレアンナの方が魔物みたいだと思ったからだ。


絶対本人には言えないけれど…。


☆   ★   ☆   ★   ☆   ★


あれからレニシアンナは現れない。何かの時期を狙っているのか…。そもそもだけれど、今更ノクタリウス殿下やログリディアン様の前に現れて何がしたいのだろう?


そりゃ無垢な頃の殿下ならまだしも、ご本人も二十歳を越えてるし、相変わらずリナファーシェ様と相思相愛だし、あの自称15才の付け入る隙なんてあるのかしら?もしかして王太子殿下の目に留まれば裕福な暮らしが出来るとそれこそ妄信しているのだろうか?


前世だってね~国王陛下になっていたから妾妃になれたけど、今の王太子殿下の立場じゃまず国王陛下がお許しになられないし、暫くは無理じゃないかしら?


お許し待ってたら30才はおろか40才も越えちゃうわよね?


益々もって何故ノクタリウス殿下に固執しているのかが分からないわ。まあ魔物の考えることなんて分からないけれど。


「レアンナ」


「はい」


「婚姻式典の最終打ち合わせが明日あるよ」


リディ様が、何か大きな箱を抱えて執務室に入って来られた。そうそう私達、通常通り執務室で仕事を行うことにしたのよ。何故かって言うと、皆で居る方が怖くない…とリディ様がヘタレ宣言をしてきたからなの。


確かにモカレさんも、狭い室内で魔物と一対一になるより事務官のじーさんでもいいから誰かと一緒に居る方がいい…と言っていたわね。男の人ってだらしないわね。


リディ様は大きな箱をご自分の机の上に置くと中を開けられた。箱の中には綺麗な紫色から赤色の花が入っていた。


「まあ…綺麗!」


「特殊な加工をしている生花だよ。中庭の噴水に浮かべて婚姻の演出に使って見てくれって。」


「まあどなたが?」


「父上。領地で栽培しているんだ。意外に女性の好むような商品を考えたり作ったりするのが上手いんだよ、見た目厳ついけど」


厳ついは余計よ?それにそういうあなたってその厳ついお父様にそっくりなのよ?分かっている?


「暫く日持ちするようなんで、少し噴水に浮かべてみようか」


リディ様の提案に賛同して中庭に向かうと、あら?逢引き中のノクタリウス殿下とリナファーシェ様がいらっしゃった。お2人共私達が噴水に花を浮かべようとすると、楽しそうに見学したいと仰った。


リディ様が水辺に花を差し入れて行く。


「綺麗だね」


「本当、式典に参列して頂いた方には持って帰って頂いてもいいのでは?」


リナファーシェ様の提案にノクタリウス殿下は満面の笑みを浮かべて賛同した。


その時、噴水の向こう側に………またレニシアンナが立っていた。驚いたけどもう慌てはしない。リディ様が背後にノクタリウス殿下を庇う。近衛のマネケス副隊長がすぐに他の団員と剣を構えた。


「魔物だな!皆、速やかに捕らえろ」


ノクタリウス殿下がそう言い放った時に近衛の若い団員数名がレニシアンナを拘束しようと近づいた。


「フーカ…お前っフーカね?私よ?!分かるでしょう?!」


レニシアンナに剣を向けていた若い団員は驚いたように目を泳がせている。もしかしてこの人フーカさん?


「あ……そうか俺、こいつに前世刺されたわ」


リディ様が小さい声で私の耳元で囁いた。あ……成程。このフーカさんが前世、レニシアンナと一緒に逃げた近衛か~。レニシアンナはその前世の彼?に追いすがろうとしているが、まだ若い何も知らないフーカ団員は恐怖で半泣きになっている。


そりゃ魔物だと言われている謎の女だもの。面識のない人は怖いわよね。そんな時ノクタリウス殿下が声を上げた。


「魔物っ!私の国民に近付くなっ!」


レニシアンナは目を見開いてノクタリウス殿下を見ている。


「いい加減にしてくれ…俺達は幸せなんだ。邪魔するな…」


ログリディアン様はそう呟いていた。それは今のレニシアンナに言ったのではない。過去のレニシアンナに投げ捨てた言葉だった。自分を切り捨て…気持ちを踏みにじられ、嘘をつかれて…殺されたノクタリウス陛下。


ノクタリウス陛下だって…私と一緒で騙されて悔しくて悲しかったに違いない。


レニシアンナは取り押さえられた。そしてそのまま大きな檻が持って来られてその中に押し込められた。もしかして魔物だから特殊な檻なのだろうか?


皆が見守るなか…近衛と軍部の兵士にレニシアンナは連れて行かれた。


この後は伏線回収とラブラブ日常が少し続きます。 

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