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セカイの果てのハテまでキミと共ニ誓ウ  作者: 葛城兎麻
第一章・スフェルセ大陸 二節・東国
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四十三話:朝焼けに急ぐ

一週間お休みを頂きましてすみません。

大変お待たせいたしました。

また今後ともよろしくお願いします……!

「……あれ」



 リシェントは〝聖天の儀〟終了後からずっと夜通しでノエアを運びながら地図を見て移動していた。流石にノエアを運びながらでは対した移動距離にもならない。リーロンまでの道のりもまだまだ遠い。


 そう思って本日も深夜帯に宿を取って翌朝に至るが、問題のノエアの姿が何処にも確認できなかった。


 ノエアを寝かせておいた個室に置き手紙らしきものはないかと見渡すと、部屋の角のテーブルに一枚の紙が伏せられている。それを手に取って一文字ずつ文字を追った。



「リーロンに来るな、お前は待ってろ……って」



 理由までは記載されていないが、深夜帯のいずれにノエアは目覚めたのだろう。何だか力のない弱まった筆質の様から、まだ本調子ではないのが確認できる。

 ノエアの体調も気掛かりではあったリシェントだが、問題は何故自分だけ置いていったのかという疑問。ノエアが待っていろと言うなら本来大人しくしていた方が身の為なのだろうが、何か嫌なもやがかかり初めている気がして気持ちが晴れない。


 前払い制だった宿なのですぐに身支度を整えて部屋の扉を勢いよく開けて飛び出すが、左右確認を怠っていたのか左から歩いてきた人物に勢いよくぶつかってしまった。



「わっ、貴女、大丈」


「す、すみません! でも急いでるの! すぐリーロンに行かないと!」



 大袈裟に頭を下げ謝罪を表してから通路を駆け抜けようとすると、ぶつかってしまった相手にぱしっと手首を掴まれて止まる。



「ちょっ……と! 急ぎの用で悪いけど、こっからリーロンじゃ徒歩でかなり時間がかかるわ。急ぎじゃ尚更無理!」


 

 相手からの真っ当な言葉にリシェントの煮えたぎる焦りの感情は冷ややかとなった。落ち着いて止めに入った相手の背格好、その容姿を確認する。


 明るみがあるターコイズブルーの髪色のミディアムボブ。柔らかいオールドローズの瞳。茶系の服を主体とした服装に、白のキャスケットを頭に被せている。その服装はあまりにも見慣れないが、少なくともただの平民ではないのは確かである。


 背丈や年齢などは恐らくリシェントとほぼ同じくらいであろう少女は、リシェントの様子を確認するや大きくゆっくりため息をついた。



「ちょっと測らせてね」



 少女は背負っていた焦げ茶色の大きなリュックサックをどさりと床に置いて、カチャカチャと音を鳴らしながらその中身を漁る。

 これだと少女が取り出したのは、見たことも無い、恐らく鉄か鋼かで作られた長方形の四角い箱のようなもの。一面のみ違う素材で作られていたが、用途までは全く謎だ。

「ちょっとここに利き手を置いて」と少女が迷わず言ってくるものだから、リシェントは首を傾げる。とはいえ、言われるがままに指定された面に右手を掌までぴたりと密着させるように置く。


 その反対側の面——違う素材で出来ている面に眼をやっていた少女は、オールドローズの瞳を丸くしてよく凝らしていた。



「……まあいいや。あ、もう離していいから」



 そう言われて、リシェントはぱっと手をそれから離す。




「着いてきて」




 *




 少女に言われるがままに宿を出てから、その裏庭へとやってくると、かなり広く、そして大きい白の布が何かに被さっていた。少女が布を力強く引くと、ばさりと音を立てながらその何かが明らかとなる。



「……の、乗り物?」


「戦闘機。複座機だから後ろの方に乗って」


「せ、戦闘機……?」



 何やら物騒な名を持つその戦闘機は空の色に紛れるような薄い空色の身体をして、確かに人が乗れる空間が取られていた。ただ馬車のような大きな車輪もないので、どうやって移動するのかが非常に疑問ではある。


 言われるがままに後席に座ってみると、少女から「これを利き腕じゃない方に着けて」と指示をした。見た目は野太い手錠に近いが先程の四角い箱のようなものと同じで、鉄や鋼とは違う素材で作られている面があるのに気づく。



「そういえば、これって何? さっきのにも似たようなやつがあったけど……」


「さっきのはノ……魔力を測定するのに必要なやつ。こっちは装着した人の力を自動的……無理矢理? 魔力に変えるやつね。ここのモニ……画面? ええっと……まあ、ここでも魔力の大きさが可視化できるから!」



 分かりやすく説明しようとしてくれているのだけは十二分に伝わるが、それでもリシェントは難しく眉を顰めた。少女自身も最後の説明はほぼ投げやりで、慣れない説明の仕方にぜえはあと大袈裟に息を切らす。



「あの、ありがとう、ございます……ええっ、と……」


「悪いけど名乗れないわ。極力面倒事は避けたいのよね」



 名を聞こうとすると少女は迷わずに言い切った。何か事情があるのかも知れないので、これ以上は強く出れなかったリシェントは了解の意を込めた頷きをする。


「言っておくけど、これも一応秘密なんだからね」と少しばかり頬を膨らませ念を押した少女は、リシェントの座る後席のガラス面の閉じ方を教え始めた。言われた通りの操作の仕方をしてみると、席の左右と天井がガラスで覆われる。


 ガラス越しから少女が前席に乗り込み同じくガラスに覆われるのを呆けながら眺めていると、突然席の真正面に置いてある箱が謎の高い音を鳴らして光り始めた。


 何だ何だと慌てふためいてしまったが、その箱から光が三等分され、薄い長方形となり浮かび前と左右の三つに分かれた。



『さて、リーロンに向かうわよ!』


「え!?」



 三つの薄い長方形の光のうち、右側の方には前席に乗っているはずの少女の肩から上までの姿が映り込む。平民の出であるリシェントでもスフェルセ大陸の技術では無理な方法なのはすぐに分かって、驚いた口が開いて塞がらない。



『貴女はただ、貴女のの力を腕につけたやつに流し込むように意識を向けて。ただ、爆発させるようにしたら駄目。そこの左側の光に表示されてる……文字、読める?』


「よ、読めるけど……」


『良かった。そこの、〝数値力(ノンボル)測定〟と〝速度計〟の文字を同時に押してみて』



 左側の光の方を確認すると、確かに右上に〝数値力(ノンボル)測定〟〝速度計〟と記されている。左手でそれを同時に押してみると、光に記されているものが一瞬にして全く違うものへと切り替わった。



『いい? 数値力(ノンボル)測定の文字の下に、長い棒みたいな絵があるでしょ? 貴女が力を込めるたびに、下から緑が浮き上がってくるわ。それを、長い棒の半分以上くらい……八分目前後に抑えるようにして。そうしないと急激な力の供給であたしが上手く操縦出来ないから』


「や、やってみる」


『よし。じゃあ頼むわ』



 全くもって理解が出来なかったが、こういうものはまずやってみた方が早いと思い、ぐっと自分の中に秘めた力を流すような感覚をイメージ。本当にこれで合っているのかは知らないが、数値力(ノンボル)測定の棒を見ると確かに緑色がぐんぐんと下から上へと上がってゆく。

これを八分目前後に抑えればいいとは思うのだが、そもそもリシェント自身が自分の力のコントロールをした事がないので今後が不安になり渋く顔を歪めた。



『出来てるじゃない』


「でも、私、自分の力のコントロールをした事が無くて……」


『まあそこは頑張ってとしか言えない。あんたの頑張り次第ではリーロンまで……そうね……半日以下……めちゃくちゃ速くして一時か……こっち時計無いか……まあ、えっと、割とすぐ着くかな……』


「これ、そんなに速いの……!?」


『あたしが作ったんだから当然でしょ。ま、環境がもっと良ければこれ以上のが作れたんだけど』



 ノエアは恐らく起きてすぐに転移魔法を転々としただろうが、そうでない場合は馬車でもリーロンまで数日はかかるらしい。


 それをたった半日以下と言い切るのだから、少女はこの乗り物の速度によっぽどの自信があるのだろう。



「……一つ聞きたいんだけど」


『何?』


「……どうして、ここまでしてくれるの?」



 出会ったばかりの自分にこんな乗り物まで提供するなど、普通では無い。


 リシェントは答えてくれるかは分からないだろうなと表情は曇らせたまま、右側の光に映る少女に問いかけた。




『似ていたから。あの時の、私と』


「……?」


『だから、速く行かないと……間に合わなかったら、きっと貴女も後悔する』



 少女はキャスケットを頭から外して、代わりに頭や目元をすっぽりと覆うかのようなものを装着。そのせいで表情も見えにくくなってしまったが、声の色は嘘を付いてはいなかった。



『まだ名乗れないけど、代わりにこう呼んでほしいわ。〝技術士〟。これがあたしの職業みたいなものだから』




それと同時に〝技術士〟が手元を操作し始めると、勢いよく、大きく、戦闘機は朝焼けの空を力強く舞った。




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