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決戦

 魔王は機甲兵、テラ、ラオンの主力戦力を喪失。残るは魔王ただ一人となった。

 一方、俺達の方の損害は皆無。敢えて述べるなら俺にディザビリティが一つ増えたぐらいか。まぁ、それも問題無い事は確認している。

 指揮の才能の発揮に関与する条件は命令の意志の有無。つまり、命令の意思の無いただのお願い、忠告などであれば問題無い。

 まぁ……それでもこれで俺に出来る事が減る事に違いはない。ぶっちゃけ後悔している。もうクロセルに命令出来ないじゃないか。


「ヒーローアターック!!!」


「あー勇者は勢い余って殺さないように気を付けろよ」


「我こそは祝福の勇者!踊り狂う英雄!ニコラァァァァス!」


「……聞いてねぇな」


 俺はティアと二人で、後ろから三人と魔王の戦闘を見ていた。

 勇者は聖剣で攻撃、あとの二人は勇者を狙う魔王の攻撃を抑える役割をしている。

 全員で攻撃すれば良い……と思うかもしれないが、魔王の身体に傷を付ける事が出来るのは聖剣だけだ。

 故に勇者以外の攻撃は通らない。二人もそれをしっかり理解しているようで安心した。


「くっ……小癪な」


「流石は魔王だね、才能指数では私達が上回っているのにそれを身体能力で強引にカバーしている」


「だが僕達の方が優勢だ!このままなら……やれる!」


 エルと勇者は兎も角。参戦したばかりの筈のラオンでさえ、しっかりと連携が取れている。

 才能の賜物か、或いは元々相性が良いのか。どちらにせよ、あの場でラオンを殺さず味方に付けたのは正解だったと言って良い。

 まぁ……本音を言えば、仮にうっかり殺した場合、俺達が罪に問われる可能性があったってのも理由の一つだ。

 既に俺は指名手配犯故に無駄とも言えるが。

 とまぁ今はそんな事は良い。魔王を倒せるまであと一歩だが、その一歩が中々届かない。

 優勢と称してはいるが、勇者の攻撃は未だ一度も通っていないのだ。


「ティア、もう良いぞ」


「何が?」


「魔王を倒せるまであと一押しだ、何をすれば良いかは分かるな?ここで魔力を使い切っても良い、全力で頑張れ」


「分かったわ!勇者ニコラスとお父様にも強化魔術を掛ける」


 三人分の強化魔術。その消費魔力は膨大で、維持するのも難しい。

 ティアには大きな負担を掛ける事になるが、此処が踏ん張り所だ、少しだけ我慢して貰おう。


「俺が適当な戦闘系才能を獲得すれば一発なんだが……経験上あれを使えるのは一回、運が良くても二回が限界だ、三回目を使える確証はない」


「そう言えば……ヤマトはどうして指揮の才能を使えたの?」


「実を言うと俺も良く分かってないからな、上手く説明できない」


「そうなんだ」


 ティアの疑問に答える事は出来なかった。だが嘘は言っていない。

 俺が何故この力を使えるのか。そしてこの力が何なのか。俺には何一つ分からないのだ。


「ただ……魔王は何か知ってそうだったな……問い詰めたい所だが、そんな余裕は無いか……」


「ヒーローパンチ!!!」


「おい勇者、聖剣じゃないと攻撃は効かねぇぞ」


「そうだったのか!?」


「二人は気付いてるのに……まさかのお前が気付いてなかったのかよ……」


「なら……ニコラス流ニコン式奥義その三のヒーローキックはいつ使えば……」


「いや使うなよ、お前が遊んでる間も強化魔術を掛け続けてるティアの事も少しは考えろ」


「分かったよ……ならニコラス流……ニコン式奥義!」


「だから……」


「ヒーローアターック改!」


「……私の目にはさっきの攻撃と何も変わってないように見えるんですが」


「だが今度は届いた!どうだ!魔王!」


 勇者の聖剣が魔王の身体を斬り裂いた。

 致命傷では無いが、確実にダメージは与えられたようだ。


「くっ……このままでは俺はまた……負ける……」


「ニコラス流……ニコン式奥義……」


「こうなれば……奥の手だ」


 魔王は傷口を押さえながら後退し、刀を構え更なる追撃を行おうとする勇者から距離を取る。


「魔王オセの名を以て命じる!俺の盾になれ!」


「ヒーローアターック改二!」


「待って!魔王の前に人が!」


 エルの声で、勇者は足を止める。

 ふと視線を移すと、魔王の前に一人の人間が立っていた。

 魔王の命令に従ったという事は魔族だろうか。なら構わず斬り伏せていいだろう。大義を成すには必要な犠牲だ。


「もう!あと少しで魔王を倒せたというのに……邪魔するのは誰だい!?」


「まだ駒を隠し持ってたか、構わず……いや……待て」


 俺はその人間に見覚えがあった。

 その人間は、この世界では珍しい黒髪の男。

 ――いや、違う。

 あの男は、この世界の人物ではない。


「ヤマト……これは罠だ……僕に構わず魔王を!」


「嘘……だろ……?なんでお前が……此処に居る……」


 耳に飛び込んできたのは、懐かしい声。

 俺は動揺する。状況を理解できず、思考が空回りする。

 何故だ?何故あいつが此処に居る。


「彼はヤマト君の知り合いなのかい?」


「くくく……ヤマトも流石に覚えていたか、そうだ、こいつはお前の親友の……」


「瀬野……生きてたのか……良かった……」


 瀬野。元の世界、地球に居た頃の俺の大親友だ。

 そして、あの世界に残してきた、俺の唯一の心残りだった。

 あの後、俺と同じように殺されて、この世界に来たのだろう。

 突飛な話だが、可能性はゼロじゃない。

 だが疑問がある。何故魔王オセは俺と瀬野の関係を知っている?

 俺はこの世界に来てから一度も瀬野と会っていない。それは逆も然りだろう。

 身寄りの無い瀬野はこの世界に来て、皇帝エルク、或いは魔王オセに仕えていた、そこまでは理解できる。

 あり得る可能性の一つとしては、瀬野が魔王に昔の事を語った、と言った所だろうか。

 ヤマトというのはこの世界では珍しい名前の部類だ。瀬野の話に出てきた"ヤマト"と俺が同一人物だと推理する事は出来なくもない。


「ヤマトも無事なようで僕も嬉しいよ、こういった形で再会するのは……少し悲しいけど」


「良いんだ、お前は悪くない」


「ゼノさんとヤマト様は知り合いなんですね」


「まぁな、これでもガキの頃からの長い付き合いだ」


 俺が感動の再会に胸を熱くしている最中、魔王はいやらしい笑みを浮かべながら剣を瀬野の喉元に当て、冷たい声色で俺に向けて言い放つ。


「単刀直入に言おう。ヤマト、こいつの命が惜しければ降伏しろ」


「なんでお前が俺と瀬野の関係を知ってるのかは疑問だが……分かった、此処は引こう」


「ヤマト君!?何を言ってるんだい!?魔王を封印できるまであと少しなんだぞ!?」


「あぁ、お前達には悪いと思っている、だが俺とて親友を見殺しにする訳にはいかないんだ、頼む、お願いだ」


「ヤマト様がそこまで言うなら……」


「ヤマトが決めた事なら私は従うわ」


「……余は認めないぞ。ヤマト、お前は魔王を封印できる確信があると言ったな、あれは嘘だったのか?」


「嘘じゃない。今此処で退いたとしても、必ず次のチャンスは来る、俺が必ず魔王を封印する」


 そう、今はチャンスを窺うんだ。

 落ち着いて隙を窺えば……必ず反撃の時は訪れる。

 ただ予想通りと言った所か、勇者とラオンは不満そうな顔をしている。だが今は我慢をする時だ。あの二人には耐えて貰おう。

 そして、膠着状態と化した俺達と魔王の間に、一人の人物が現れる。


「魔王様!只今戻りました!」


「チッ……遅いぞラプラス、今まで何処で何をしていた!」


「あはは……神殺害の任務の際に教皇の手で異空間に閉じ込められまして……脱出するのに少し手間取りました」


「あの時か……確かにお前との連絡が途絶えたのはその時だったな、聖剣フルティンはどうした?」


「あぁ……あれは落としちゃいました、そんな事より、魔王様……もしかしてピンチだったりします?」


「うるさい!お前の事だ、何か考えてこの場に来たんだろう?」


「そうですね……そう言うと思って、僕が脱出の用意を整えておきました、あはっ僕ってなんて完璧なんでしょうね」


「相変わらずお前は主人に対する礼儀がなってないな……何故か今日は普段よりイライラしないが」


「それで……魔王様がこんなピンチなのになんで皆さん固まってるんです?」


「くくく……ヤマトの為に用意した人質が効いたんだよ、こいつがいる限り奴らは俺に手を出せない」


「なんと、それは愉快だ!では早速逃げましょうか、少しお待ちを……と、忘れてた、これ、星からの預かり物の回復薬です」


「そうだよ、ヤマト達の事で手一杯故に忘れていたがステラの奴も何故来なかったんだ……くそっ」


「彼女は非戦闘員ですからね、それにヤマトとは顔を合わせ辛かったんでしょう」


 魔剣の悪魔は堂々と中央を歩きながら、俺達を掻き分けて魔王の元へと歩み寄る。

 それを止めようと、ラオンが動こうとするが、それをエルが片手で制止する。

 同じように、俺は勝手に動きかねない勇者の腕を掴んだ。


「くっ……目の前で魔王が逃げるというのに、それを指を加えて見ていろと言うのかい?」


「あぁそうだよ、良いから黙って見てろ」


 魔王が魔剣の悪魔に渡された回復薬を飲み干す。

 が、少し経っても……魔王の傷が再生する様子はない。

 それを不審に思ったのか、魔王が魔剣の悪魔を問い詰める。


「おい、傷が塞がらないぞ」


「そりゃ聖剣の傷ですからねぇ……残念ながら直ぐには再生しないと思いますよ」


 そんな風に話しながら魔剣の悪魔が地面に指を走らせると、白い光が浮かび上がり、魔法陣が現れる。

 魔王は、瀬野に剣を突き付けたまま、その上に乗った。


「よし、こいつも連れて行くぞ」


「僕と魔王様と人質の三人ですね、分かりました」


「ヤマト……ごめん……僕のせいで……」


「大丈夫だ、今度こそ、俺がお前を救ってみせる」


 前世……と言って良いのか分からないが、少なくとも前の世界で。俺はあいつを救えなかった。

 あの時は無力だった。正確に言えば、俺は本質的に孤独だった。

 霧雨組の仲間は居たが、あれは利用し合う関係。心の内から信頼できる味方とは言えなかった。

 だが……今は違う。俺には心の底から信頼できる仲間がいる。心強い味方が居る。

 だから今度こそ……俺は瀬野の事を救う。


魔術回路改竄(カスタマイズ)……略式詠唱展開(ファストキャスト)……

 ――空間魔術……空間接続(ゲート)!」


「ラプラス……お前いつの間に略式詠唱を身に着けたのか」


「えぇまぁ、教皇と戦った時に」


 魔王と魔剣の悪魔の会話だけが耳に届く。

 魔法陣が強く光を放ち、辺りは眩い光に包まれた。

 そして……光が消えた時。


「あ……れ……?」


 魔王と魔剣の悪魔の姿は消え、その場には瀬野だけが立っていた。

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