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V

気が付けば20万文字、此処まで読んでくださりありがとう御座います

まだまだ先は長いですが、完結を目指して頑張ります

「これまた突飛な話だな、何故俺がお前の妹を助けなければならない」


「話すと長くなるのと……僕の素性は明かせないので、必要最低限だけ伝えさせて貰うね」


「まぁ……無いよりはマシだな、納得できる説明をしてくれよ」


「僕、見ての通り教国の人間ではなくて、別の国から来たんだけど……その旅の途中、盗賊に遭遇したんだ」


「読めてきたな……それでお前は盗賊に襲われた訳か」


「はい、その通り、僕は直ぐにやられてしまったんだけど……死んだと思われたみたいで気絶したまま放置されたんだ、そして目が覚めると……馬車と妹は盗まれてしまった後だったと」


「妹を助けたい動機と経緯は分かったが……どうして俺なんだ?もっと他に頼める奴が居るんじゃないか?」


「ヤマトさん、魔王の復活を阻止する王命を受けたんだよね、それに失敗して反逆罪になっていると」


「そうだな」


「魔王の復活を阻止する事って並大抵の冒険者じゃ出来ないことだよね、ヤマトさんには魔王復活を目論む皇帝を退けられるであろう実力があったから選ばれた、そうでしょう?」


「あー……まぁ……そうなのかもな」


「そんなヤマトさんなら、僕の妹を救い出してくれると思って、お願いさせて貰ったんだ」


 アカツキとティアが王国の人間だと見抜く目。その風貌。そして王国が魔王復活を阻止する王命を出した事を知っている。この少年、間違いなく一般人じゃない。かと言って王国の人間でもない。となると……一体何者なんだ?


「まぁ……要するに盗賊退治の依頼ってことでいいのか?」


「えっと……当面の目標はそれであってる……のかな」


「どういうことだ?お前の妹は盗賊に捕まったんだろ?」


「そうなんだけど……調べてみた所、盗賊に捕まった人間は人身売買されて奴隷として売られるみたいなんだよね」


「つまり……盗賊を退治しただけじゃ終わらない、というか意味がない可能性があるのか……奴隷売買をしている組織を叩かねばならないと」


「そうなるね、それでこのオークションの主催、何処か知ってる?」


「知らないな、俺は通りすがっただけだ」


 なるほど、つまりこの少年は妹を救い出す為にこのオークション会場に来たのだろう。仮にこの場で売られていなくても、このオークションの運営側を追えば妹の居場所も突き止められるという訳だ。

 オークションの運営陣を見てみると、そこには貴族らしい高そうな衣を纏った男と、武装した屈強そうな男が数名立っていた。最低限襲撃の対策はしているようだ。


「……聖教会だよ」


「は?」


「聖教会が主催してるんだよ、このオークション」


「聖教会ってこの国のトップだろ?なんでそんな組織が奴隷売買なんかしてるんだ」


「神に背いた罪人、要するに犯罪者を売り払っている……という名目で、盗賊から買い取った人間を混ぜて売っているんだ」


「その話……本当なのか?」


「僕が調べた情報が確かなら」


「マジかよ……信じられねぇ……」


 もしこの話が本当だとすると、少年の妹を救うには聖教会を敵に回す必要がある。それは折角手に入れたこの安寧の地を捨てることに他ならず……更に言えばそうなると完全に逃げる場所を失う訳で……


「悪いな、その話は受けられない」


「そう……だよね……ヤマトさん達は教国に逃げてきたんだもんね……」


「分かってくれるようで助かる、だから他の人を当たってくれないか」


「分かった……無理を言って申し訳ない……」


 少年は深く頭を下げると、帽子を深く被り、俯いたまま背を向ける。


「ちょっと待ってください、今の話、本当ですか?」


「盗み聞きとは趣味が悪いな、アカツキ」


 いつの間にか俺の横にアカツキが立っており、アカツキが少年を呼び止める。


「ヤマトさんがいつまで経っても戻ってこないから厄介事に巻き込まれたのかと思って見に来たんです」


「アカツキさん……?」


「はい、私がアカツキです、貴方は……」


「すいません、名は名乗れないので……今はVとだけ」


「V君ですね、分かりました、それでさっきの話、本当なんですか?」


「おいアカツキ……話を聞いたなら分かってるだろ……相手は聖教会だぞ、敵に回したら折角手に入れた平和な暮らしを捨てることになるんだぞ」


「本当です……このオークションの主催は聖教会ですし、恐らく僕を襲った盗賊は聖教会に奴隷を提供してます」


「分かりました、引き受けましょう」


「……本気か?」


「本気ですよ、ただし、ヤマトさんの考えているようなやり方では無いですが」


「何か策があるってことか?」


「そうですね、無いわけでもありません、それにV君、他に頼る場所も人も居ないんですよね」


「はい……本当に引き受けてくださるんですか?」


「えぇ、任せて下さい」


「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」


 アカツキがそう言って胸を叩くと、少年は満面の笑顔を浮かべてぺこぺこと頭を下げる。


「おいおい……俺は知らないぞ?」


「ヤマトさんには分からないでしょうが、人と人は助け合いですよ、それにこの国の癌を放っておけませんしね」


「取り敢えず……どうすんだよ、この場にお前の妹は居ないんだろ?」


「そうですね、この会場には居ないみたいです」


「なら此処に居ても無駄だな、買い物済ませて一旦帰ろうぜ」


「買い物は私達で済ませておくので、ヤマトさんにはちょっとお使いを頼んでいいですか?」


「なんだよ……言ってみろ」


「まずは妹さんの身柄が何処にあるか調べる必要があります、だからヤマトさんはこのオークションの運営陣にV君の妹の特徴を告げて、こういう奴隷が居たら買い取りたい、と言ってきて下さい、それで聖教会の抱えてる奴隷の中にV君の妹が居るか分かるはずです」


「なるほどな、で……なんで俺なんだよ」


「見た目も経歴も、明らかに悪人ですし奴隷商人と話す際に怪しまれにくいと思いまして」


「おい殴るぞ?」


「そういう所です、凄い悪そう」


「うぐっ……」


「じゃあヤマトさん、任せましたよ」


「あいあい、分かったよ」


 結果からすれば、アカツキがあのVと名乗る少年の依頼を引き受けてしまった。

 凄い面倒事に巻き込まれた気しかしないのだが……本当に大丈夫だろうか。

 あの様子だと断っても大丈夫そうだったし……この奉仕活動は本当に無駄にしか感じない。


「大した見返りもないしな……全く何で受けちまったんだか」


「ごめんね……善意に付け入るような形になっちゃって」


「もういい、さっさと奴隷商人と話付けるぞ」


「今はまだオークション中みたいだし、終わってからの方が良いんじゃないかな」


「俺に命令するな」


「分かった、ごめんよ……」


 と言っても、Vの言う通りだ。今話し掛けに行っては邪魔な客としか思われないだろう。

 タイミングを見計らって、出来る限り怪しく、裏の世界に精通している様子で話し掛けねばならない。


 そうして待機している内に、数時間が経った。


「終わったか?」


「みたいだね、僕は話を合わせるから、ヤマトさん、任せたよ」


「言われなくても分かってる、行くぞ」


 ぶっきらぼうにそう言い放つと、俺はVを置いてこのオークションの運営陣らしき男へと話し掛けに行く。

 足音が聞こえるからちゃんと着いて来てるだろう。


「よう、ちょっと良いか?」


「はい、なんでしょうか?」


「奴隷が欲しいんだが、うちの坊っちゃんが言うには今日の品にはどうも惹かれなくてな、坊っちゃんが望むような奴隷は無い物かと聞きに来た訳だ、もし用意してくれたらどんなに高くても買って良いと思ってる」


「左様ですか、それでどんな奴隷がご入用で?」


「おい、言ってみろ」


「未成人の赤髪の少女が良いな~?出来ればしっかり礼儀作法を身に着けてる従順な子だと実に良い!そんな子は居ないかな?」


「左様ですか!それなら丁度良い奴隷が先日入ったので、次の開催時にご用意できたらご用意させて頂きます、きっとお気に召すと思いますよ」


「そうか、流石だな、助かる」


「ふふふ……楽しみだね、期待してるよ」


 このVという少年、俺より演技が板についている。というかこいつだけで良かったんじゃないか?

 そんな事を思いながら、軽く手を振って奴隷商人から離れる。そのまま暫く歩き、完全に見えなくなった所で、俺は口を開いた。


「お前……妹の事そんな風に思ってたのか?」


「失礼な!そんな訳無いだろ!妹の特徴を事細かに告げるにはああするしか無かったんだ」


「シスコンめ……」


「うぐっ……というかそれより、あの様子だと間違いなく妹は聖教会の元に居ると思って良いね」


「あぁそうだな、最近手に入れたと言っていたしほぼ間違いないだろう」


「となると取り戻すには、大人しく奴隷として彼女を買うか……会場で彼女を連れ去るか、或いは聖教会に乗り込んで助けるか、と言った所かな」


「そうだな、俺もそう言った手段しか無いと思う」


「でもアカツキさんは別の方法を考えてるみたいだったよね……信じて良いのかな……」


「あーそうだな……あいつは有能だから、信じて大丈夫だと思うぞ、あいつがミスすることは稀だからな」


「ヤマトさん、アカツキさんのこと信用してるんですね」


「まぁ……結構付き合いも長くなるしな……もう仲間っちゃ仲間だし……沢山お世話になったし……」


 素直に信用している、とは恥ずかしくて言えないが、心の内で感謝はしている。

 彼女が居なければ俺は今生きていないだろうし、教国での暮らしも危うい物だっただろう。

 だから今回の……彼女の"我儘"は受け入れてやるべきなのかもしれない。


「俺の抑止を止めてまで何かをするなんて、あいつにしては珍しいもんな……」


「ふふっ……」


「何笑ってんだよ馬鹿」


「いや、アカツキさんとヤマトさん、ああやって言い合ってはいるけどやっぱり仲間なんだなって、そういう関係ってなんか羨ましい、良いなって思っただけです」


「うるせぇなぁ……俺はあいつのことをそんな大層に思ってないからな」


「はいはい、そうだね」


「お前……うぜぇな……」


「そんなこと言わないでよ、僕ももう仲間だろ?」


「な訳あるか!お前は俺の敵だ!仲間な訳無いだろ!」


「はいはい、冗談だから、もう日も暮れるし早く拠点に案内してよ」


「嫌だなぁ……はぁ……アカツキに免じて今回は許したが面倒事は面倒事に変わりはないな……」


 事件が解決するまでと言えど、この生意気なガキと行動すると考えると……気が滅入る……

 アカツキに約束してしまった以上放って帰る訳にもいかず、仕方なくこの少年を連れて新たな我が家へと帰るのであった。

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