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浮遊都市

お久しぶりです、雫です

散々待たせた挙げ句凄く短いです、ごめんなさい

「ただいま」


「うむ、戻ったぞ」


「ヤマト様、クロセルさん、おかえりなさい」


「おかえり!ヤマト!」


 あれから暫く街を巡り、俺達は日が暮れる前に宿に戻ってきた。

 それから少しして、声が聞こえたのかエルとティアが部屋から出てきて出迎えてくれた。

 少し辺りを見渡してみるが、アカツキはどうやらまだ帰っていないようで姿が見えない。


「ギルドの方はどうでした?」


「あぁ……それなんだが……」


 俺は冒険者ギルドで生計を立てるのは難しいことをエルに説明した。


「そうか……それは困ったな……いつまでもアカツキさんに頼る訳にもいかないし」


「全く同感だ、教国の需要に沿った何か良い商売でも無いのか……?」


 腕を組み宙に視線を注ぎながら思考を巡らせる。

 エルも指を口元に当てながら黙想、何か良い案が無いか考えてくれているようだ。


「アカツキに頼らず何かをするとして、俺達が持っているアドバンテージは魔法使いが多いことぐらいだよな」


「そうだね、魔法の才能を持つ人間はそれだけで貴重だ」


「魔法ならわたしに任せて!何でも出来るわよ!」


「そうなんだよ……やろうと思えばティアとクロセルの魔法で何でも出来そうだし……選択肢が多すぎて最善策が思いつかないタイプのあれだな……」


「ふっふっふ……我ほどの力があれば略奪など造作も無いぞ」


「おいやめろ元魔王、折角教国まで逃げてきたのにこっちでもお尋ね者になったら困るだろ」


 そんな風に三人で話していると、突如として後ろから肩を叩かれる。

 話に夢中で警戒を怠っていた。だが仮に敵だとしたら俺は既に殺されている筈である。ということは……


「貴方がそれを言うんですか……元ヤンのヤマトさん?」


「アカツキか……戻ってきたなら声ぐらいかけろよ、心臓に悪い」


 振り向くと、そこには案の定アカツキが立っていた。そして、その手には謎の書類が握られていた。用事があると言っていたが何の用事だったのだろう。


「全く……やっぱりヤマトさん達に任せたら碌な事にならなそうですね」


「おいおい酷くないか?俺だって頑張って考えてるんだぞ」


「そうだぞ!ご主人は馬鹿なりに無い知恵を絞って何の役にも立たない案を出してくれていてだな」


「おいクロセル、殴るぞ?」


「ふはははは!無駄だと言うのに!学習能力が無いのか?哀れなご主人……」


「あはは……確かにこの調子だとまともに話し合いにならないからアカツキさんが来てくれて助かったよ」


 俺とクロセルが睨み合ってる中、エルはそれを何処か温かい視線で見守りながら、やがてアカツキに視線を移す。

 そして、アカツキの持つ書類と顔を交互に何度か見ると、笑顔を浮かべて言葉を続けた。


「アカツキさん、ギルドでの収入は見込めないことを想定して、既に何か収入を得る方法を考えてくれてたんでしょ?」


「エルさんも中々に察しが良いですね、そうですよ、新しい商売に向けて、ちょっと買い物をしてきました」


「おう、流石はアカツキだな、それでその商売ってなんだ?」


「それは明日のお楽しみとしましょうか、今日はもう日が暮れましたし休むことにしましょう」


「えーわたし何のお仕事をするのか知りたい!」


「ティア様ごめんなさい、説明の為に外に出る必要があるのですが、比較的治安が良いと言えど夜間外出は危険ですので……それにティア様にも明日から働いて貰う事になるのでゆっくり休んで下さい、お願いします」


「だってさティア、明日はお前の出番もあるみたいだししっかり寝とけよ」


「ヤマトがそう言うなら分かったわ!」


「ティア様はヤマトさんの言葉だとすんなり従いますよね……というかどうして懐いてるのか不思議でなりません」


「俺も不思議でならん、俺みたいな男は子供から嫌われる筈なんだがな」


 アカツキが少し嫉妬したような目でこちらを見つめ、やがて一人溜息を吐くと、そのまま自分の部屋へと歩いていった。

 それに続いてエルがティアの手を引き部屋に戻り、最後はいつも通り俺とクロセルが残される。


「さて……俺はまだ眠くないし少し外の空気を吸ってくるか……」


「うむ、我も着いて行くぞ」


「来なくても良いんだぞ」


「ふっふ~来て欲しい癖に何を言っている」


「あーったく……勝手にしろ」


 クロセルを睨み付けるが、それに全く動じずニヤニヤと笑みを浮かべる様子を見て、俺は諦めて視線を戻す。

 この世界に来てからどうも脅しが通用しない、俺が丸くなったのかこの世界の住人の肝が太いのか、どちらにせよやりにくくて仕方がない。

 俺は足早に宿から出て夜道を歩く。特に行き先は決めていない、夜風に当たりたかっただけだ。


「昼間は暑いが夜は涼しいな、砂漠にしては寒暖差が少なすぎるぐらいだ」


「うむ、この調子なら聖都でも快適に過ごせそうだな」


「教国の首都は聖都って言うのか、それにしては聖なる感じはあまりしないが」


「聖都と言っても我々が居る此処は下層だからな、本当に神に関連する施設は中層、そして上層の聖教会に集約している」


「下層?中層?上層?なんだそれ」


「ご主人……気付かなかったのか……?あっちを見てみるが良い」


「ん……どれどれ」


 クロセルが指差したのは聖都の中心の方角……の空である。言われるがままに視線を移し、暗い夜闇に目を凝らしてみると……


「は?おい?何か空に浮いている!?どういうことだ!?」


 そこには物体が浮いていた。否、あれはただの浮遊物体ではない。無数の建物がくっつき、都市を形成している。

 そしてそれが支えもなしに浮いているのだ。夜だから確信は持てないが、ほぼ確実にあれは浮いている。


「浮遊都市……」


「更にその上にも巨大な建物が見えるであろう?それが聖教会だ」


 言われた通り更に上を見てみると、なるほど確かに巨大な構造物が見える。

 流石に遠すぎて良く確認できないが、此方は建物の集合体ではなく一つの建物が浮いているような感じだ。


「あれは魔法で浮いているのか……?」


「いや……あれも"神の創造物"だ、人智を超えた物である以上、理屈も何も無いのだろう」


「また"神"か、空なんて見上げないから昼間は気付かなかったな……」


「最も、教会の人間ではない我々には縁のない物だがな」


「もしかして中層って奴に住んでる奴らは全員教会の関係者なのか?」


「その通りだ、教会の中でも一部の熱心な信徒だけが中層に住む権利を得られる」


「そして上層は……まぁ予想はつくが聖教会の幹部格と"神"が住む場所って所か」


「うむ、その通りだ」


「まぁそれなら確かに縁はなさそうだな……てか今日見た教皇って上層から下層に降りてきてたんだよな、ああも簡単に登り降り出来るのか?」


「何かアクセスする手段があるのだろう、我は知らないが飛べば良いのでは無いか?」


「いや普通は飛べないから……」


 そんな風に駄弁りながら空を眺めていると、何かが視界の中で小さく光る。

 不審に思い目を擦り、再び空を見上げるが何も見える様子はない、ただの錯覚だろうか?


「クロセル、今空が何か光らなかったか?」


「うん……?我は気付かなかったな」


「なら気の所為か……なんでもない」


 クロセルが見ていないなら大方気の所為で間違いないのだろう。

 本当に見えていたのだとしても流れ星か何かの可能性もある。それに仮に何かが発光したのだとしても俺には関係のないことだ。


「よし……そろそろ部屋に戻るか」


「うむ、そうだな、身体が冷え切る前に戻るとしよう」


 そして俺はクロセルと二人で宿に戻り、明日に備えて眠りにつくのであった。

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