Side Story『悪魔』
閑話、短いです
~Side Story~
「ごほっ……」
「あははははは!愉快愉快、酷い様ですねぇエルク様」
「うるさい……それより儀式はどうなったんだい」
「あ?あれですか?ボクが仕上げときましたよ」
「そうか……なら成功だね」
「喜んでる所悪いんですけどエルク様、そのままだと死にますよ?」
「僕が死ぬ"未来"が視えるのか?」
「あは?冗談ですよ、そんな訳無いじゃないですかーエルク様は祝福こそ無い物の、この"ボク"と契約を交わした以上、そう簡単には死なせません」
「本当に……君は悪魔だな」
「えぇ、悪魔ですよ?お忘れですか?」
「そんなことより……此処は何処だ?」
「魔物に襲われてくたばられても困るんで、塔の中まで引っ張ってきました、ついでに応急処置も。あはは、ボクってなんて完璧なんでしょうね!?」
「魔杖はどうなったんだい?」
「あー奪われちゃいましたねぇ……エルク様よく寝てたし、もう転移しちゃったんじゃないかなー……」
「そういう時は気を利かせて奪っておいてくれればいいのに、使えないな」
「だってあの魔杖ってスペックだけ見ればボクの上位互換ですよ?勝てる訳無いじゃないですかやだー」
「君には未来視の才能があるじゃないか」
「だから尚更です、彼女と戦って、ボクが勝てる可能性は万に一つも無かったので、大人しく見逃しました」
「なるほど、そういうことか」
クロムの皇帝、エルクは一人で虚空に語り掛ける。
そう、彼と言葉を交わす声の主の姿はそこには無かった。
傍から見れば、皇帝が独り言を言っているかのように見えるだろう。
やがて、皇帝はいつの間にか手元に置かれていた、剣を支えに立ち上がろうとする。
しかし、力が入らないのか、そのままどさりと倒れ込む。
「傷だけ塞いで中身は放置か……君らしいね」
「そりゃボクは魔術師じゃないですし、まぁ当たり所が良かったですね、あの高さから落ちて全身粉砕骨折で済むとか儲け物ですよ?」
「これは……暫く動けそうもないな、魔王の復活まではどれくらいだい?」
「うーん……一ヶ月ぐらいですかね?魔杖に魔力を引き抜かれたんで結構時間掛かっちゃうっぽいですね」
「予定とは違うが結果としてはその方が都合がいい、魔王の本体は魔窟にあるからね……傷が癒えてから復活直後を仕留める、そうすれば……」
「晴れて新たな魔王の誕生と。相変わらずエルク様は悪いことを考えますねぇ」
「最初から僕の目的は変わらないよ」
「でも良いんですか?一ヶ月もあれば王国も対策してくると思いますが」
「その時はその時だ、今回は油断したが、二度目はない……ヤマト、あいつを必ず殺してやる」
「おぉ……怖い怖い、そんじゃボクはもう一眠りするんで、動けるようになったら起こしてくださいな」
「眠りたいのは僕の方なんだが……まぁ構わないよ、僕が動けるようになるまで、君は休んでいるといい」
皇帝と虚無の会話は終わり、辺りは静寂に包まれる。
魔物が心配だが、塔の中までは入ってこないだろう。
憎き宿敵となったヤマトのことを考え、皇帝は拳を強く握り締めた。




