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外伝 クロセル神様大作戦Ⅰ

本編で描きたかったけれど描けなかったショートエピソードになります

少し長くなりそうなので、数話に分割する予定です

週1投稿出来たらなと思ってます、お付き合いください

「逆に考えたんですよ」


「お、おう……」


「今まで神の存在を公表して来なかったのですから、別に神って誰でもいいのではないかと」


 教皇。イヴ・エンド。誰よりも敬虔で、信心深く、誰よりも神を崇めていた人物が、そんな爆弾発言をしている。


「大丈夫か……? 頭でも打ったか?」


「というわけで、新しい神を決めることにしました」


「マジかよ……そんなノリで信仰対象を決めていいのか……?」


「えぇ、神というのは偶像であってくれればいいんですよ、それだけで多くの人の心の支えになる」


 シンシアに権能を返したことで、この世界から勇者や祝福は消えた。

 普通に考えれば、神が死んだとか、神が消えたとか、そういう話になるし、実際そういう噂で教国は混乱状態だった。

 しかし、その事実を、どうやら聖教会は「世界救済を勇者に任せるのではなく、神が自ら降臨し執り行うことにした」という美談に魔改造しようとしているらしい。


「魔王はもういませんし、勇者が対処しないといけない脅威はもうこの世界にありませんからね」


「そう言えばクロセル、この座標の魔王ってどんな感じで終わったんだ?」


「大体似たような流れではあるが、カナデが魔窟に飛ばしてグレモリーが封印、その後にカナデが魔窟ごと異世界に飛ばして永久封印だな」


「俺の時より数百倍えぐかった……」


 改めて考えればそれもそうだ、カナデは別にディザビリティじゃないどころか時空間操作10のチート主人公だった。

 そりゃ魔王攻略もヌルゲーになるわけだ。


「じゃあクロセル奪還作戦は……」


「そこはご主人の時の方が良かったというか……我がモチベなくて儀式成功してしまったからな……」


「お前のモチベが低かったせいで魔王復活したのかよ……」


「カナデとの主従関係も悪くはなかったが、やはり我にとってはご主人が一番だったのでな!」


「要するに、カナデが強すぎて、活躍できないからやる気出なかったんだな」


「……」


 クロセルの表情が固まる。図星のようだ。


「それで、新しい神の話ですが……」


「薄々オチが読めてきたな……」


 教皇が、後ろの福音使徒に合図をする。

 すると、いつの間にか準備していたのか、福音使徒が一着のドレスが乗った台車を部屋に運び入れる。

 あぁ、やっぱり。そう思って俺が頭を抱えると同時に、教皇は皺だらけの顔でにっこり笑って提案する。


「というわけで、クロセルさん、お願いできませんか?」


「我!? なんで!?」


「教皇、忘れてるかもしれんが……こいつ元魔王だぞ……」


「魔王クロセルが存命していた時から生きている存在なんて、それこそ神様か妖精ぐらいしかいませんから問題ありませんよ」


 教皇との面談、そこにクロセルも同行しろと事前に言われていた為、こいつ絡みなのだろうとは思っていたが……

 どちらかと言えば呆れている俺に対して、クロセルは本当に訳が分からないとばかりに目をぐるぐるさせている。


「わ、わわわ……我は人に嫌われる存在で……どれだけ人類の味方をしても敵にされる存在で……誰にも愛されないし……怖がられるし……死んだ方がいい存在で……ぶつぶつぶつ」


「まぁ、そりゃそうだよな……取り敢えず落ち着け」


 取り敢えずクロセルを一発殴る。弾かれる。ばしん。その音で、少しだけ正気を取り戻したらしい。

 相変わらずおめめはぐるぐるだが、取り敢えず俺を見ながらこくこくと頷いている。

 クロセルの魔王時代の話を思い出せば、少しこの提案は刺激的すぎる。教皇は知りもしないだろうが。


「因みに、一応確認するが人選の理由は?」


「神は10歳から20歳の少年少女の姿をしている、という人々のイメージがまず大前提にありますね、その上で実際に神と信じてもらえるような派手な力で事件を解決できる、パフォーマンス重視の才能を持った人材がベストです」


「候補としてはティアかクロセル、あとはまぁ推奨はしないがラプラスか……ティアは王女としても勇者としても有名すぎる、ラプラスは人格に難あり、となるとまぁほぼ消去法か……」


「クロセルさん、無詠唱魔術も使えますよね?」


「むむむ、無論だとも……今の身体だと魔力消費が激しいからあまり連発は出来ないがな……」


「その問題があるだろ、今のクロセルは血を供給しないと活動できない」


「神が奇跡を起こした後に、透明になって去っていく、演出としてアリだと思いません?」


「確かに……ちょっと神っぽいな……」


 今の格好や、言動、あとは過去の経歴からどうしても先入観があるが、確かにパーツだけを取ってみれば、神の役を演じるには相応しい人選のように思える。

 教皇の頭がおかしくなったのかと思ったが、考えれば考えるほど妥当な結論だ。


「本当に、我が……かみ?」


「まぁやってもいいかもな……」


 誰よりも人類の為に生きたのに、誰にも愛されなかった、この可愛らしい魔王様に、少しは良い思いをさせてあげたい。

 そういう意味でも、この話は引き受けるべきだ。デメリットは特にない。


「引き受けてもらえますか?」


「あぁ、良いだろう、辞めたくなったら次の依代に移ったことにすれば良いよな?」


「そうですね、クロセルさんほどの代わりを探すのは中々大変ですが、そこは私達も手を尽くしましょう」


「なら決まりだ、クロセル、良かったな」


「う、うむ……任された……ぞ」


「では、暫くクロセルさんを預かっても?」


「あぁ、必要だもんな」


 俺はそう言ってクロセルの脇を掴んで持ち上げて、教皇に差し出す。

 一人だけ良く分かってないクロセルが、俺の手の中でじたばたもがき始める。


「な、何故だ? 我は出来ればご主人と離れたくないのだが……」


「必要最低限、立ち振舞や言動は神らしくしていただきます、もちろん服装も」


「魔王ロールプレイが板に付きすぎてるもんな、矯正してやってくれ」


 教皇は深く頷く、どうやら見解は一致しているらしい。というわけで、教皇がじたばたしてるクロセルを回収する。爺さんなのに力あるな。


「はーなーせー!」


「これじゃ人前にお出しできないからな……」


「では、丁重にお預かりします」


 そう言って、教皇に担がれてクロセルは部屋から運ばれていった。

 ちょっと可哀想だが、これもクロセルのためだ。と心を鬼にして……


 ……少し楽しみなのは内緒だ。

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