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シェル公爵

 フェアリーケレッジに来て今日で二日目。

 俺達は、シェル公爵に近付く為に、街で調査を開始していた。

 具体的には俺とクロセル、瀬野とアカツキの二手に別れて調査をする事になったのだが……


「取り敢えず、シェル公爵の居場所は分かったな」


「うむ、あそこに見える屋敷がそうだな」


 俺とクロセルは街の人から聞いた情報を頼りに、シェル公爵の屋敷の近くまで来ていた。

 シェル公爵の屋敷の特徴を一言で言うとすれば……


「ジャングルだ」


「ジャングルだな」


 熱帯雨林と見紛う程に大量の木、木、木。

 そのどれもが十数メートル近い高さを持ち、地上部分は蔦が張り巡らされ、緑に覆われている。

 此処が街の中だと言う事を忘れてしまいそうだ。それ程までに、異常な光景であった。


「明らかにおかしい……よな」


「うむ、この樹林には何らかの環境適応、成長促進が行われていると考えるのが妥当だろう、少なくとも公国の気候では此処までの異常成長はあり得ない」


「まぁ、場所から考えてシェル公爵が何かやってるんだろうが……」


「自分の屋敷の周りをジャングルで覆うとは、中々に奇妙な趣味だな」


「悪趣味だろ」


 今俺達が立っているのはそんなジャングルの外側、二階建ての家屋の屋根の上だ。

 こうでもしないとあの樹林が邪魔で屋敷が見えない。家の人には無断だが、まぁバレなければ問題はないだろう。


「周りはあれだが、建物自体は比較的普通だな」


 屋敷とは言った物の、正確に形容するならば教会堂のような建物だ。

 白を基調として、屋根には高い塔。外壁には尖塔アーチが用いられている。イメージとしてはパリのノートルダム大聖堂が近いだろうか。

 奥にある聖堂らしき建物は上部に大量の色彩豊かなステンドグラスが用いられていて、ドーム状の天井をしている。

 立派な建築物だ。建築には疎い俺でも分かる程度に。


「クロセル、内部の生命反応を探査できるか?」


「やってみよう、少し待て」


 クロセルが屋敷の方に片手を向けながら、小さく詠唱をする。

 十数秒程度待つと、クロセルは一つ頷き、俺に結果を報告する。


「中の生命反応は28、殆どが人間だな」


「セン公爵の屋敷と違って結構多いな、そいつらは全員使用人か?」


「そこまでは分からない、だがあの聖堂らしき場所に人が固まっている」


「もしかして本当に教会なのか?街の人はシェル公爵を信仰していると言っていたし」


「可能性はあるぞ、行ってみるか?」


「いや、その前に少し聞き込みだ」


 クロセルにそう告げると、俺は何の躊躇いも無く屋根から飛び降りる。


「ご主人!?此処は二階建ての建物の屋根の上だぞ!?」


 クロセルが慌てて追い掛けるが、もう遅い。

 俺は重力に従って落ちていき、やがて着地する。


「よっ……と」


「な、なんだ!?」


「悪いな、足場にさせて貰った」


 しかし、俺は無傷で地面に降り立つ。

 理屈は単純、人の頭を踏んだ反動、ディザビリティで衝撃を吸収し、そのまま地面に降りただけの話である。

 丁度上から家の前を通る人の姿が見えた為、試してみたのだ。

 驚いた様子で頭を擦る通行人に、ついでだとばかりに声を掛ける。


「そうだ、少し話を聞いても良いか?」


「構いませんけど……旅の方ですね、今空から降ってきませんでし……うわぁ!?」


 当然のように緑衣を纏う通行人の男と、俺の間に、クロセルが落ちてくる。

 俺のように変な技を使わず、見事に足から着地。魔術で作り出した肉体というのは、どうやら生身の人間よりも丈夫らしい。


「全く……説明も無しに飛び降りおって、焦ったではないか」


「空から女の子が!?」


「空ってほど高い所から来た訳じゃないんだが……まぁ良い、あそこにシェル公爵の屋敷があるよな」


「えぇはい、ありますね」


「あの屋敷には教会のように誰でも入れるのか?」


 男は何故か不思議そうに上を見上げながら、生返事で俺に答える。


「シェル公爵を信仰する心の持ち主であれば、誰でも入れますよ」


「……つまり、この街の人間でなければ入れないと?」


「そうとは限りません、シェル公爵は寛大なお方です、あの方を熱心に信仰する者であれば街の人間で無くても入れて貰えるかと」


「そうか、なるほどな」


 どうやら、シェル公爵の屋敷が教会のような機能を有しているのは事実らしい。

 シェル公爵の信徒を装えば、屋敷に入り、あわよくば近付く事も出来るかもしれない。


「それじゃあ僕は失礼しますね」


「あぁ、助かった、ありがとな」


 話が以上だと分かると、男は軽く手を振って去っていく。

 そいつを見送ると、俺は視線をシェル公爵の屋敷へと移しながら、呟く。


「まぁ、入れるって分かったからには試してみるのが一番早いか」


「シェル公爵の信徒のふりをするのか?」


「あぁ、それしか無いだろ」


 クロセルが通信魔術でアカツキに連絡を取り、二人を呼び寄せる。


「ふぅ、お待たせしました」


「来たか、って……瀬野はどうした?」


 光に包まれて俺達の前にアカツキが現れる。

 だが、その横に瀬野の姿は無かった。一緒に行動していたはずなのだが……


「あれ、空間操作の練習がしたいから自分で行くって言って飛んだんですが……先に着いてないんですか?」


「ゼノなら居るぞ、少し縦軸が誤った座標に飛んでしまったらしい」


「縦って事は……」


「ぅわあああああああああああ!?」


 上から誰かの絶叫が聞こえる。

 危険を感じ、俺は思わず飛び退いた。


「ぐはっ!」


 俺が距離を取ったのと同時に、人型の何かが地面に叩き付けられる。

 赤い鮮血が辺りに飛び散る。それを不幸にも目撃してしまった通行人から悲鳴が上がる。


「大丈夫か?瀬野」


「ごほっ……無事……だよ……」


「クロセル……なんで受け止めてやらなかったんだ」


「当たりどころが悪くなければ死なない距離だったからな、まぁ待て、今回復魔術を掛けてやろう」


 落ちてきた人物は瀬野 充。俺の親友だ。

 一体どれほどの高さから落ちてきたのか分からないが、音から推測するに俺達が飛び降りた屋根なんかよりずっと高い位置から落ちてきたんじゃなかろうか。

 なのに怪我、いや大怪我で済んでいるのは、瀬野が魔族の肉体を持っているからだろうか。


「ふぅ、死ぬかと思ったよ」


「少し目立ちすぎたな……一旦退くぞ」


 ただでさえ外部の人間だと一目で分かる服装をしてるのに、街中でこんな騒ぎを起こしては悪い噂が立ちかねない。

 瀬野の治療が終わると、俺達は一旦人目を避け、路地へと移動する。


「という事で、どうやらシェル公爵の信徒を装えば屋敷に入れるらしいんだ」


「なるほど。それでこれからシェル公爵の屋敷へ乗り込むから、私達を呼び戻した訳ですか」


「そういう事になるな」


 屋敷に乗り込むに当たって、俺とクロセルの二人だけだと不安だ。

 もしシェル公爵との接触に成功して、交渉まで持ち込めた場合、否応無しにアカツキの力が必要になる。


「えっと……要らないかもしれないけど一応、僕達の調べた情報も此処で言って良いかな?」


「ん?あぁ、構わないぞ」


「何件か服屋や装飾品を売る店を見てみたんだけど、何処も緑色の衣服しか売ってなかった、まぁ此処まではこの街の有様からして当然なんだけど……」


「奇妙な事に、街の何処にも、ある物が売っていなかったんです」


 アカツキが口元に手を当て、考え込むようにしながら呟く。

 一体何が売っていなかったと言うのだろう。俺は続きを話すように促す。


「何なんだよ、そのある物って」


「この街の人間が全員付けている、あの緑色の腕輪です」


「あの服を着ている事自体は、それしか売っていないと考えれば妥当ではあるんだけど、あの腕輪だけは説明がつかないんだ、非売品でありながら街の人間全員の装着が、まるで義務付けられている、此処まで来れば誰の仕業かは嫌でも分かるよね」


「あぁ、シェル公爵が着用を義務付けている、んだろうが……あれには何の意味があるんだ?」


「無難な説を唱えるならば、街の人間とそれ以外の人間を区別する為……とかですかね」


「区別する必要があるのかは疑問だが……まぁそんな所だろう、それじゃあ行くとするか」


 俺は路地から軽く身を乗り出す。先程の騒ぎは落ち着いたようだ。


「あっ、もしシェル公爵の屋敷に乗り込むならさ、これを使ってよ」


 瀬野が後ろを向いてがさごそと何か手元で音を立てている。

 そして、緑色のシャツとズボンを取り出すと、それを俺に渡す。


「お前今何処からこれ出した?」


「他の人の分もあるよ、アカツキさんが潜入調査をするならあった方が良いって言うから買っといたんだ」


 俺がそれを受け取ると、瀬野は再び背中を向け、同じような服を次々と取り出す。

 丁度四人分。サイズも全員別々だ。いつ測った?


「クロセル、説明」


「空間操作の才能で亜空間を作り出し、そこに物を収納しているようだな、空間魔術でも同様の事が出来る」


「なるほど、転移にショートカットに四次元ポケットと、便利だな空間系の才能は」


「八種類の基本属性魔術と比較して、空間魔術と時間魔術の二つは便利系魔術とも称されます、属性魔術と違って派手な事は出来ませんが利便性だけならトップクラスですね」


「つまり魔術は十種類に分類出来るって事か?」


「そうですね、十種類です、詠唱全体の最初から二つ目の部分を中唱と言うんですけど、そこの魔術言語で何の種類の魔術かを判別する事が出来ます」


「トゥームとかいう奴だな、あれにもちゃんと意味があったのか」


「なので相手の詠唱から魔術の属性を推測、対処する事も可能です、例えば相手が炎の魔術で攻撃してくると分かれば、此方は水の魔術で対抗すれば有利が取れる、と言った感じですね」


「だが略式詠唱を使えば相手に魔術の内容も属性も悟られる事が無い、我が略式詠唱を好む理由の一つだな」


「そうか、勉強になった」


 俺は頭の中で覚えた事を反芻しながら、服を着替え始める。


「着てみた感じ……普通の服だな……特に違和感は感じない」


「アカツキさんと一緒に細部まで調べたけど、怪しい所は無かったから安心して良いよ」


 俺と瀬野は素早く着替え終わり、瀬野が俺の服を回収して亜空間に放り込む。そのまま消滅したりしないか不安だが……まぁ大丈夫だろう。

 しかし、何故かクロセルとアカツキだけが、服を持ったまま立ち尽くしている。


「どうした?早く着替えろよ、サイズは合ってるんだろ?」


「そういう問題ではなくてですね……」


「あっなんだ?着替えさせて欲しいのか?仕方ねぇなぁ……」


 俺がアカツキの方に歩み寄ろうとすると、背後から殺気を感じる。

 素早く腰から鉄棒を抜き、振り向きながら受け止めようとするが……早すぎる。この距離での不意打ちには流石の俺でも対処出来ない。


「うぐっ……クロ……セル……」


「これはご主人が悪いぞ、暫し眠っておれ」


 首をやられた。一瞬にして意識が遠のく。

 意識の終端では、冷たい瞳で俺を見つめる、クロセルの顔が見えた。







「うっ……いってぇ……」


 どうやら倒れた時に頭をぶつけたらしい。後頭部にたんこぶが出来ている。

 身を起こし、辺りを見渡すと、緑の服に着替えた三人の姿が確認できる。


「なんで俺は突然意識を奪われたんだ?」


「ふん、よく考えるが良い」


「瀬野、俺は何分くらい気絶してた?」


「五分くらいかな……」


「そうか、まぁ良い、着替えたならさっさと行くぞ」


 どうも腑に落ちないが、この様子だと聞いても答えては貰えないだろう。

 俺は後頭部を擦りながら立ち上がると、路地から出てシェル公爵の屋敷の方へと向かう。


「やはりこの服を着ていれば目立たずに済むようだな、明らかに此方への視線が減っている」


「それで……このジャングルがシェル公爵の屋敷?」


「あぁ、正確には屋敷の庭みたいな物だ、奥に教会堂のような屋敷がある」


 俺達はシェル公爵の屋敷の門の前に来ていた。門を潜って真っ直ぐ進めば屋敷の玄関がある。

 此処から見る限り、玄関の扉は開放されていて、出入りする人間もちらほらと見える。


「さて、中に入った訳だが……」


「本当に教会みたいな施設ですね、此処は礼拝堂でしょうか」


 中に入ってみたが、特に咎められる事は無かった。

 全員同じ服装をしている為、誰がこの屋敷の人間で誰が街の人間なのか一目では区別が付かない。


「なんか祈ってるな」


 入って直ぐの場所に広い礼拝堂のような空間が広がっている。

 その最奥には暗幕が垂れ下がっている。街の人は皆揃って傅き、左手人指し指を額に付けるようにして、その暗幕に向かって祈っている。


「此処で祀ってるのって神とかじゃなく、シェル公爵……だよな?」


「そうですね、恐らくは」


「なら信者達が祈ってる暗幕の奥に居る人影って……」


 暗幕の方をよく見ると、奥に人影らしき物が見える。俺はそれを指差しながら、クロセルとアカツキに問い掛ける。


「あれは案山子などでは無く生きた生物だ、つまりシェル公爵で間違いないだろう」


「よし、なら近付いてみるか」


 俺は暗幕へ向かって歩き出す。

 すると、アカツキが慌てた様子で俺の腕を掴んだ。


「無策で突っ込む気ですか!?」


「シェル公爵が常に居るとは限らない、会える時に会っとくのが良いと思うが」


「それはそうですけど……」


 アカツキは少し逡巡する様子を見せた物の、どうやら諦めたようで、俺の手を離す。

 俺は祈る人達の横を通り過ぎ、暗幕へ近付いていくと、それを潜って奥に入り込んだ。


「何者だ!此処は立ち入り禁止だぞ」


 緑色の服の男が、俺の前に立ちはだかる。

 どうやら屋敷の人間らしい。暗幕の脇に控えていたようだ。

 俺に続いてクロセル、瀬野が入ってくる。最後に頭を抱えたアカツキだ。


「シェル公爵と話がある、通してくれ」


「お前達……この街の人間じゃないな?」


 男は俺達の手首を一瞥しながら、そう言い放つ。

 やはりあの腕輪が、外部の人間と街の人間を区別する識別子のような物なのだろう。


「駄目だ、お前達のような怪しい者をシェル様に近付ける訳には行かない」


「至極尤もな正論だ、だがしかし、話ぐらいなら聞いてやっても良いのではないか?」


「シェル様……しかし……」


「遠路遥々訪ねてきてくれたんだ、何の土産も持たせず帰すのも可哀想だろう」


 男に割り込んで聞こえてきたのは、女の声だ。

 声のした方を見てみると、漆黒のドレスに黒いベールで顔を隠し、クロセルの身長程もある高い椅子に座っている人の姿が確認できる。

 あの人間、いや……妖精こそ、この地フェアリーケレッジを治める三大公爵家の一角、シェル公爵で間違いないだろう。


「アカツキ、頼んだ」


「はぁ、分かりました。まずは何の断りも無くこの場に立ち入った非礼をお詫びします、申し訳ありませんでした」


「くくく……構わんよ、長い事生きていると刺激に飢えてしまってね、魔術9の魔杖、操作系才能持ち、複数のディザビリティの持ち主。中々に愉快なメンバーだ、面白いじゃないか、名前を聞かせてもらえるかな?」


 シェル公爵と思しき人物は、若い女の声で俺達に問い掛ける。

 長い丈のドレスで足が隠れている為、正確な身長は憶測でしか測れないが、上半身の長さから察するに身長は140cm程度。とても背の低い人物だと察せれる。あの高い椅子を使っているのは、彼女のような低い身長でも相手より高い位置から見下ろす事が出来るからなのだろう。高飛車な性格だと見て取れる。

 それにしても、一目で俺達の才能を看破した辺り、只者では無い。こいつも分析の才能持ちか?


「俺はヤマト……です」


「我が名はクロセルだ」


「アカツキと申します」


「瀬野 充です」


「では私も名乗るとしようか、私の名前はオルガン・ヴィーナス・シェル、愛称はシェルミだ、好きに呼んでくれて構わん」


 シェル公爵は片手を胸に当てながら、堂々とした態度で名乗り上げる。


「それで、わざわざ正装をしてまで来てくれたというからには、何か私に用事があって来たのではないのかね?」


「これは正装なのか……?変装の間違いじゃ……」


「シェル公爵、私達は貴女の力を借りるために此処にやって来ました」


「私の力か……生憎、戦闘向きの才能は持ち合わせていないんだが……」


「あっいえ、力を借りると言っても一緒に戦えという訳ではありません、シェル公爵の持つ記憶操作の才能の力を借りたいのです」


「ほう?私が記憶操作の才能を持っているという事は一種の機密事項の筈だが……何処でそれを知った?」


 顔は隠れて見えないが、シェル公爵から鋭い視線を感じる。

 どうやらシェル公爵が記憶操作の才能を持っているのは、一般には公開されていない情報らしい。


「嘘はつけませんね……私達はアリエルツフィルから来ました」


「なるほど、あのロリコンの変態が私の事を喋った訳か、それなら確かに辻褄は合う」


「単刀直入に言いましょう、シェル公爵にはヤマトさんの記憶を操作して失われた記憶を取り戻して欲しいんです」


「記憶喪失か、私の才能では同じ記憶操作で失われた記憶なら取り戻せるが、脳へのダメージで失われた記憶は元に戻せないぞ?」


「駄目で元々です、私達もヤマトさんがどうして記憶を失ったのか分からないので、試してみて欲しいんです」


「良いだろう、だが勿論タダでとは言わない、何らかの対価を要求する」


「金銭でしたら……幾ら必要ですか?」


「いや、勘違いしないで欲しい、貴族という物は意外と金に興味が無いんだよ、私も金に興味はない、別の対価で頼むよ」


「では……情報ではどうでしょう、私達の知る限りの情報を提供すると言ったら」


「あはははは!君達、私が妖精だという事は知っているのだろう?妖精は寿命を持たない唯一の存在、要するに世界で一番長く生きている存在だ、そんな私の知らない事を君達が知っているとは到底思えないな」


 シェル公爵は高笑いを浮かべる。どうする?他に対価になる物など持っていない。

 魔剣グレモリー……いや、あいつを誰かの手に渡すのは約束を違える事になる。それは俺のポリシーに反する。


「いや、ふむ……そうだな……それも一興か」


「あ?どうしたシェル公爵」


「いやなに、やはり対価は要らない、無償でヤマトの記憶を取り戻してやろう」


「本当ですか!?」


「妖精は気まぐれでね。私の気が変わらない内に、早く済ませるとしようじゃないか、ほらヤマト、こっちに来たまえ」


 俺は促されるまま、シェル公爵の前へと進み出る。

 シェル公爵と俺は向かい合うと、彼女は頭のベールを外す。

 現れたのは金髪碧眼の少女だった。とても数千年を生きている存在とは思えない。


「大人しくしていてくれよ、何しろ眠っている記憶を呼び覚ますのは中々に面倒な仕事だ、途中で中断して記憶に障害が残っても私は責任を取らない」


「あぁ……動かなきゃ良いんだろ」


 彼女が手を伸ばす。何だか嫌な予感がした。この人間は本当に信用できるのか?


「そう……それで良い、では始めるとしよう……

 ――記憶操作」


 シェル公爵は片手で俺の頭を掴み、強く締め付ける。

 痛くはない、が……今までの記憶、見たことのある物も見たことの無い物も、ごちゃまぜになりながらフラッシュバックする。

 脳に尋常ではない負荷がかかっている。視界が明滅し、今が何時で此処が何処だか分からなくなる。

 駄目だ、耐えきれない。

 そのまま俺は、静かに意識を失った。

いつも読んで下さりありがとうございます、雫です

リアルタイムで読んで下さってる方々にお知らせがあります、諸事情で、また執筆を一時中断する事になりました、詳細は後日活動報告に乗せる予定なので詳しく知りたい方はそちらを御覧ください


P.S 投稿再開の目処が立ちました、これからもお付き合い頂けると幸いです。

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