そんな話もあったねと
「えっと……記憶がおぼろげなんだけど?」
とりあえず状況は理解したが経緯はまったく記憶にない。
「まあそこはいいんじゃないかしら?」
「ブレアがそう言うなら」
気になるけど気にしてはいけない気もする。怖い。
とにかく今はブレアの膝の感触を味わって――――
「どいてくれる?」
「はい」
切ない。感触が消えないようにそっと上体を起こした。
立ち上がり、ふと横を見るとメスブタが俺を見ていた。
よかった。生きていたか。
小難しい話が続いたからな。死んだかもしれないと心配していた。
「はなしはおわったかっ!?」
仁王立ちで叫ぶ。今更だけどここダンジョンの中だからな。大声とかよくないぞ。
「ああ、ひと段落した」
「ひとだんらく……っ!?」
「終わったということだ」
上手く言葉が伝わったようでメスブタが深くうなずく。
「……ならば拳の時間かっ!?」
「ならば、の意味がわからない」
「し、しからばっ!?」
「いや……まあ、いいか。そうだな。拳の時間っちゃ時間だな」
「よしっ!」
素振りが始まった。ああ、もう。ダンジョンが削れる。
「メテオ。削るなら死神を削りましょう」
「っ! わかったっ!」
ブレアが注意し、メスブタが止まる。
そしてアルマは眼鏡をかけてぶつぶつ何かを言っていた。近づかないようにしよう。
ともかく変質者スキルのことがなんとなく分かった。
この収穫はでかい。
生きとし生ける者はあまねく変態。真理だ。
この世の常識などまやかしだ。つつけば弾けるような薄い膜に過ぎない。
熱く煮えたぎるような性癖たちがぶつかり合い奏でるシンフォニー。
それこそがこの世界の真の姿だ。この世界のすべてだ。
「…………」
「ブレア、なんか目が怖いんだけど?」
「気のせいよ」
気のせいではないだろうが気にしてはいけないのだろう。
さっきから気にしちゃいけないことばかりだ。
こんなに多くのことに目を瞑って生きてかなきゃならないなんて。
ままならないもんだな。
だが、それはともかく……力がみなぎっている。ギンギンだ。
どこでどうやって力を解き放つべきか。死神にぶつけるのはもったいない。
やはりブレアか。
「えっと……よろしいかな?」
「あ、アルフレード皇子」
目を覚ましていたようだ。有り余るパワーに夢中で気が付かなかった。
どうやら皇族の皆様は全員復活していたようだ。宮廷水着師も立ち上がっている。
水着に乱れが無いのが不満だがまあよかった。
肥溜め人もうんちしてない。よかった。
「我々の継承権争いのことなんだが……」
「そんな話もありましたね」
遠い昔のことのようだ。今となってはすごくどうでもいい話題だ。
「帰った方がいいのです」
アルマがド正論をぶっ放した。そりゃそうだわな。
「そうですね。とりあえず皆さんはお帰り下さい」
「いや、しかし。我々も皇族としてこの国を守る義務がある」
「その義務はこちらの継承権1位にお任せください」
「殺るっ! 殺るっ! 殺るっ! 殺るっ!」
殺意を漲らせ高速でスクワットを繰り返す継承権1位のピンクの女を指さす。
皇族の皆様は押し黙った。
いつも変質者にお付き合いいただきありがとうございます。
私はいま人間としての尊厳をかけて「なろうテンプレ」を書いています。
途轍もない精力をもった男の異世界転生物語です。
読んでいただけると飛び散ります。
「魔力ゼロの騎士はクリア後の世界を目指す ~聖力って俺だけ仕様が違くない?~」
なにとぞよろしくお願いいたします。




