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あれとこれについて


 きらめくクリスタルの回廊で肥溜め皇子がごにょごにょと話をしていた。


「――というわけで、ラッキーパーソンを探しに来たわけだ」


 ノブナに関する一連の出来事についてはちょっと整理するのが面倒くさすぎるので、なかったことにして肥溜め皇子の話を聞いた。

 ノブナは荒い息を吐き、潤んだ瞳で俺を見つめていた。難しいな。難しい。

 難しいことはひとまず忘れて俺は皇子の言葉に耳を傾けた。

 悩む俺の前で皇子は淡々とステラ皇女に会いに来た理由を語った。

 だが、俺には皇子が何を言っているのかわからなかった。

 肥がどうとか、儀式がどうとか、政治は汚いとか、反吐がどうとか、とにかく聞くに値しないことを話していた。

 これを聞くぐらいなら、時計のチクタク音の中に潜むエロスを追求する方がまだ有意義な時間を過ごせるだろう。待てよ。まだやったことななかったな。

 強制的に同じリズムで音を出すことを強いられる時計ちゃん……エッチじゃん。


『ちく、たく、ちく、たく……まだやるんですかぁ?』

 鞭で時計ちゃんをびしっと叩く俺。

『勝手に止めるな!』

『は、はいいい。ちく、たく、ちく、たく……』

『ふふふ、そろそろ12時だぞ?』

『ちく、たく、ちく、たく……あ! ぼーーん! ぼーーん! ぼーーん! ちく、たく』

『12時の鐘がだいぶ上手になったじゃないか』

『ちく、たく、ちく、たく』

 時計ちゃんは顔を赤らめながらちくたくを続けた。ちくたくは勝手に止めてはいけない。すべての人のために続けなければならないのだ。


 うん、いいね。

 ちょっとエッチな気持ちになったので、もっとストレートにエッチなものを見つめることにした。

 水着だ。宮廷水着師の水着を見つめることにした。

 みんな色とりどりの水着をきていた。デザインも様々だ。いいね。皇子はいい趣味をしている。何を言っているのかわからないけれども、水着の趣味だけは良い。

 なんなら言葉を聞くよりも水着を見つめた方が皇子が何を考えているかわかるかもしれない。

 どれ、ちょっと推測してみるか。

 赤、ピンクの花柄、青の水玉、黒、ストライプ……ああ、なるほどそういうことか。


「なるほど、つまりステラ皇女と協力してダンジョンを攻略したいと?」

「ああ、そういうことだ」


 話は聞いてなかったが、水着の色から大体のことを察することができた。


「ボクと協力を!?」

「ああ、その通りだ。君の力が必要なんだ。今のままでは帝国の未来は危うい。だから……君と共に帝国を守り続けたい」

「そ、それはもしかして……!?」

「結婚しよう!」

「なぁっ!?」


 突然のプロポーズ。肥溜めが求婚した。すごい。

 まあ、水着の色でだいたいわかっていたけどね。

 ステラ皇女は顔を真っ赤にして固まった。可愛いじゃん。


 と、ここまでがあれの話。続いてこれ。


 ガショーンガショーン。

 ガショーンガショーン。

 ガショーンガショーン。

 ガショーンガショーン。

 ガショーンガショーン。


「ガーディアンだ! 大群だぞ! これほどの数は見たことがない!」


 肥溜めが叫ぶ。ロボが大量に現れたのだ。なんでだ。

 プロポーズの結果の前にロボかよ。わけわかんねーなこれ。

 と思いながら周囲を見回して気付いた。

 ずっと素振りをしていたメスブタに向かって叫ぶ。


「メスブタ! 素振りやめ!」

「えっ!? わかったっ!」


 そしてメスブタの近くの壁を見る。


「……ああ、もう」


 壁がごっそり削れていた。素振りで削れたのだろう。

 おそらくダンジョン――遺物――ががりがりと削れたせいでロボが大量に現れたのだ。

 全員が削れた壁に気付き、そしてメスブタを見た。

 メスブタはきょとんとした顔をして、そして笑った。


「壊したっ!」


 屈託のない笑顔。かわいい。かわいいけどそれどころじゃない。

 とりあえずアルフレード皇子あらため肥溜めに方針を伺うか。


「どうしますか? ロボはきっとこちらを攻撃してきますよね?」

「遺物を管理しているのだ。ガーディアンを壊しては皇都の運営に支障が出かねん」

「なるほど、では逃げの一手ですかね?」

「こわしていいかっ!?」

「だめだ。メスブタ、ちょっと静かに」

「わかったっ!」

「いったん起動停止してどうなのです?」

 振り返ると眼鏡をかけたアルマ先生がいた。

「停止方法を知っているのか?」

「知らないのです。なのでとりあえず一体捕獲して――」

「先生、換金はだめですよ」

「ペッ」

 アルマ先生は唾を吐きながら眼鏡をはずした。態度悪いな。

 そうこうしているうちにロボはかなり迫っていた。マズい。

 宮廷水着師たちは肥を連れて逃げようとしている。

 まいったな。

「しょうがない。俺たちも逃げるか」

「そうね。でもニト。あれを」

 ブレアが指さす方を見るとノブナがいた。

「ニト殿ぉおお! ここは某に任せるでござるう!」

 ノブナはロボの前に立ちはだかっていた。オイオイオイ死ぬわアイツ。

 ロボはノブナに手を向けた。そこに光が収束し、光線が――

「メスブタ!」

 俺が叫ぶと同時にメスブタはメテオブーストでノブナの前に回り込み、拳を振りぬいた。


 轟音。


 メスブタの手加減少なめの拳は謎のエネルギーをまとって謎の遠距離攻撃となった。

 ああ、これは皇都への道中で覚えた謎の遠距離攻撃ですわ。

 ロボはがれきの山になっていた。幸い、ダンジョンにダメージはそこまでない。ロボが衝撃を吸収してくれたのだろう。ダンジョンがもっと削れていたら穴の女神が現れたかもしれない。危なかった。


「大破! 大破なのです!」

 アルマは金の山ががれきになったことで絶望していた。そして、得意げなメスブタの後ろでノブナはへたり込み、皇女は赤らめていた顔を青くし、肥と水着は固まり、ブレアは無表情で、俺は頭を抱えた。

「ああ、もう何が何だか」

「あ、ああ……壊してしまったか」


 アルフレード皇子のつぶやきにメスブタは元気に答えた。


「壊したっ!」


 とても可愛らしい笑顔でした。



【お願い】

「もしかして自分は頭がおかしいんじゃなかろうか」と悩み始めた猫村あきらに応援のメッセージをください。大丈夫だよって。

「いや、おかしいんじゃない?」とお考えの方や「どうだろうな?」と判断に迷った方は、ぜひ他の作品も読んでみて下さい。何かわかるかもしれません。

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