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エデュケーショナルファンタジー  作者: 東雲みずき
29/52

おねがい家庭教師★

 職場の暖炉に火がともるようになり、だんだんと冷え込みを増してきた。


 相変わらず図書館と職場を往復するだけの日々。


 遊ぶ友達も居ないため基本的に勉強漬けだ。


 今日は見かねたクレアに連れられて服を買いに街に出た。日曜日は人が多い。


「初めてあった頃は心配するくらいお子様だったのに、最近は子供らしからぬ生活だよね」


「結構毎日楽しんでマスよ」


「そうかな。不幸に見えるけど。あんたさ、一度お祓いしてもらったほうがいいんじゃない?運悪すぎ。受験もぶっちゃけ運でしょ」


「そうデスかね?」


「だいたいさ、ここだって路上で詐欺に遭うことは滅多にないよ。話を聞けばキメラでもドラゴンでも妙な流れで死にそうになってるし」


「言われてみれば確かに」


「IntelligenceちせいよりもLuckうんのパラメーター上げた方が良いよきっと」


 改めて指摘されてみると、どっちも低い気はする。


「どうすればいいデスかね」


「やっぱりアレだよ。お祈りだよ。あそこに聖女像あるでしょ。図書館の帰りに毎日お祈りしたら?」


「それで良くなりマスかね……」


 エミリーは神頼みはあまりしない。


 都に出てみて分かったが、祈るくらいなら自分で解決しようとするタイプらしい。


 東区の聖女広場には真っ白な聖女の像が建っている。


 クレアは手を合わせた。


「この像、誰が磨いてるのかね。不自然なくらい白くて気味が悪いよね」


 そういえばジュリアと初めて出会ったのもこの像の前だった。


(この像にお祈りかあ)


 エミリーも両手を合わせてみる。


 像から微かな魔力を感じる。多くの人が祈りを捧げた結果だろうか。


(そもそも何をした人なんだろう。……下に生没年が書いてある。ええ……16歳で死んじゃったんだこの子)


 改めて顔を見てみる。


(どことなくマミ姉に似てるな。……でも目が違う)


 そろそろ営業時間だ。エミリー達は足早に広場を後にした。


 酒場に戻ると赤髪の少女と黒髪の女性が待っていた。


「いらっしゃいメアリ!」


「約束してた家庭教師お連れしました」


「はじめまして。ブレンダといいます。甲式魔術学校の三年生です」


「私はエミリー。はじめまして」


「キメラやワイバーンと戦ったと聞いていたので怖い子かと思ってたけど安心しました」


「よろしくデス」


 早速、教えてもらう日を決める。


 魔術学校が休みの土日の昼間しか都合が合わない。


 夜は仕事があるからだ。


「ええっ!エミリーさんはお休み無いんですか?」


「ワイバーンにさらわれた日はお休みデシタ」


「……」


「でもお金貰えるからね。毎日暇よりも毎日仕事があったほうが良いデショ?」


「ま、まあ、そうですかね……。あの……私、宿題を必ず出すんですけど今日出して帰っていいですかね」


「もちろん」


「苦手な科目ってありますか?」


「歴史……」


「じゃあ来週までに帝国の歴史をまとめておいてください。簡単で良いので」


「ハイ。毎日図書館に行ってるのでちゃんと調べておきマス」



                         (つづく)


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