真実 最後の姿
29人のクラスメイトは、一人の死を知らされる。
「ーーー先日、青木さんが自殺ーーー」
教室がしん…と静まり返った。
(…そんな…!)
赤田しのぶは息を飲んだ。青木葉月は二ヶ月ほど前から「いじめ」にあっていた。自殺も多分そのせいだろう。
「……これでSHRを終わります。」
先生はそう言って、思い教室から姿を消した。
「………ぷ、はははは!」
誰かが笑い出した。それに続けてみんなも笑う。が、その顔は引きつっていた。ただ、本気で笑っていたのは、「いじめ」のリーダー的存在、緑里梅菜だった。
「はは…アイツ自殺だって?…バッカじゃねーの?!ねぇ、桜。」
梅菜に問いを求められた黄土桜は少しビクッとして、
「う、うん。バカだよねぇ〜。」
と、のんきな感じに答えた。
「フフッ、みんなもそう思うよね?…そうよ、自殺したのは私たちのせいじゃないわ。弱い葉月が悪いのよ!」
その言葉には流石に桜も同感だきなかったようだ。「はあ、なにいってんの、コイツ」とでも言いたそうな顔だった。
葉月は元々地味な子で、話しかけづらかった。運動もろくにできなくてドジだ。でも、唯一出来るのは勉強だった。学年ではいつも一番だし、先生にも好かれていた。多分それて梅菜は葉月をいじめたのだろう。なんせ、いつも成績は葉月の次の二番だったのだから。
こんなことがあったから、葉月と喋ったことは少ない、いや、おそらく誰もいないだろう。
だが、私は葉月が自殺する前に、喋ったことがあったのだ。
それは体育の時間だった。先生が「二人ペアをつくりなさい」と言った。私はいつも、親友の紫苑玲夢と組むのだが、今日はたまたま休みだったのだ。
このクラスは29人なので、絶対に一人余る。それがいつも葉月だった。しかし、今日は玲夢がいないので、私はしぶしぶ葉月とペアを組むことになったのだ。
この日はなわとびだった。運動音痴な葉月は言うまでもない、全然出来ていなかった。あやとびで苦戦している。私はだんだんイライラしてきた。そして、こう言った。
「いい?あやとびはね、手をクロスにするの。アンタ出来てないよ。もっとクロスにして、大きく回さなきゃ意味ないじゃん。」
アドバイスをした。流石に梅菜に聞かれたらマズイので、小声で言う。
「…そうかあ、だからいつもとべないんだねぇ。ありがとう、こんなに指摘してくれたの、赤田さんだけだよぉ。私運動音痴だからさ…。」
葉月は照れ臭そうに笑った。
…なんで?なんでそんなに笑っていられるの…?
私は心が熱くなった。いじめられているのに、心はズタズタのはずなのに…葉月は笑っている。私は必死に涙をこらえた。
「どうしたの?大丈夫?」
「大丈夫…。続けよう。」
そうでも言っとかないと、涙がこぼれてしまいそうだ。
いつもは普通の視界が、ちょっとだけ明るくなったような気がした。
…そうだよ。青木さんはちっとも弱くなんかない…。
弱いのは、アンタだよ、梅菜。
アンタがあんなことしなければ、自殺になんかならなかったかもしれないのに…。
それは学校帰りのこと。私の家は、学校からとても遠く、歩くこと30分くらいはあるだろう。それは河原のせいだ。私は河原をボーッと見ていた。
そこで事件は起きていた…。…!あれは…青木さん?!それと、梅菜と黄土!多分葉月を蹴っているのだろう。
(助けなきゃ…!)
でも、足が固まった。…今、助けたら、今度は私がいじめられる…!
…逃げちゃダメだ!ダメなのは分かってる。でも、なんで?
私はただボーッと見ていることしかできなかった。
「…アンタ……消え……ばい…のに!」
途切れ途切れに梅菜の声が聞こえる。そして蹴った。葉月は河原の方へ転がって行く。そして、水に浸かる。…そうだ、青木さんは運動音痴なんだ!助けなきゃ!
今度は足が動いた。走る、走る。梅菜もこればかりはヤバイと思ったのだろう。すぐに葉月を引き上げた。
「ケホッ……ケホッ……」
「青木さん大丈夫?」
私はたずねた。
「しのぶ、アンタ…。」
梅菜は私を睨んだ。
「しのぶ、いい?この河原で葉月を突き落としたこと、誰にも言わないでね。だって、私たち…友達でしょ?」
私は凍りついた。梅菜の顔がとてつもなく怖かったからだ。
「行こうよ。梅菜。」
黄土もツンとした表情で、葉月に誤りもせずに、河原を後にしたのだ。
「青木さん…」
「…大…丈夫。今はそっとさして。」
私はそれが葉月の最後の姿になるとは思ってもいなかった。
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