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08



「――ター様、お時間でございます」

「……ん~、おはよ~」

「おはようございます。入浴の準備などはすでに出来ています。足元にお気をつけください」


 まだ眠くてフラフラするボクの手を引いてくれるクラリス。よく出来た子だなぁ。

 そんなクラリスに連れられてトイレに行って、歯を磨いてすぽーん、とパジャマをアリスに剥がされる。

 今日も朝からテンション高いなぁこの子は。

 そのままお風呂の中ですでに待機していたベスとデュリーに丸洗いされて、朝なのでぬるいお湯に浸かっていればだんだん目が覚めてきた。


 昨日も散々見たけど、みんなそれぞれ個性があって大きかったり小さかったり、でもみんな柔らかくて綺麗。ボクは非常に満足だよ。

 惜しむらくはボクのアバターが女性なことかね。いまいちこう、迸るアレ的なアレにならない。

 でも綺麗なものは綺麗で素晴らしいものは素晴らしい。それは性別が違っても変わらないのさ。


「マスター、本日の予定は私達4人で冒険者ギルドで登録作業を行い、簡単な依頼を試しにこなしてみる、でよろしいですか?

 その間、マスターは如何なさるのですか?」

「ウチらが出とる間にますたぁはんん護衛はどないしはるのどすか?

 危険ほなあらしまへんか?」

「その通りです、マスター殿。最低でも我らのうち1人は残るべきかと」


 アリスとベスがボクの髪を乾かしたりいじったりしている間に今日の予定の話になった。

 アリス達は予定通りに4人で冒険者ギルドに登録に行かせる予定だけど、そうかボクの護衛か。

 ホテルにずっと缶詰というのも飽きそうだし、その場合は1人では不安か。

 ボクは外見だけなら10~12歳くらいにしか見えない。下手したら一桁に見えるかもしれない。東洋人の外見を持つボクは西洋人っぽい人だらけのこの街では幼く見えるかもしれないから。


 この世界の常識なら15歳から成人らしいけど、12歳くらいでもまだ子供だ。これが街で育った子供なら問題ないだろう。

 でもボクはこの街を全然知らないし、昨日も彼女達と色々話をして常識が欠如している事を知られている。その上錬金術師という特異な存在だ。しかも戦闘不可。

 まぁ錬金術師であることはまずばれないにしても、迷子にはなるかもしれない。

 あと彼女達の話では今はどこも治安がそんなによくないから人攫いにかどわかされる可能性が無きにしも非ず。

 ということで4人全員を冒険者ギルドの登録に出すと、ボクは1人になってしまう。


「じゃあもう1人作ろうか」

「なるほど、もう1人ですか!」

「よぉございましたなぁ、デュリー。あんさんん後輩が出来ますよ」

「我の後輩……。素晴らしい響きですな!」

「よかったですね、デュリー。ですが、しっかりと面倒を見なければいけませんよ」

「もちろんですとも! 我にお任せください!」


 なんだか盛り上がっているようだけど、デュリーも冒険者するんだから面倒見てる暇はないと思うなー。まぁ水を差すような余計な事は言わないけど。


 MPも満タンなので今回は9割使ってしまおう。

 昨日のうちに必要な物は作ってしまったし、今日は材料もあまりないからそんなにMPいらないしね。


 両の掌を合わせて、パンっとして、ほい。錬成。

 いつもの光の後に残ったのはボクよりも身長が少し高い程度の小さな体躯。

 頭の上にはふさふさの耳。腰から出ている尻尾もふさふさ。獣人種の犬系だね。

 全体的に灰色で、艶々した美しい髪の毛はふわふわのウェーブがかかっている。

 スタイルはボク並に幼児体型っぽい。着ているのは布のワンピースだけどなんとなく想像が付く。

 開いた瞳は金色をしていた。


 そしてやっぱり即座に跪いて命名待ち。


「君の名前はイービー。よろしくね。

 この子達が君の先輩にあたる子達で、アリス、ベス、クラリス、デュリーだよ。仲良くしてね」

「よ、よろしくお願いします! あたし精一杯頑張ります!」

「よろしくな、イービー! 私が1番ホムンクルスのアリスだ!」

「よろしゅう、イービーはん。ウチがベスどす。そないに堅くならへんやてどもないや」

「よろしくお願いします、イービー。わたくしがクラリスです」

「よろしく頼む。我はデュリー。分からないことがあったら、先輩である我に気軽に聞いて欲しい」

「ははははははい! よろしくおねがいしましゅ!」


 めちゃくちゃ緊張してるし、思いっきり噛んじゃったよこの子。

 他の子達とはまた違った個性ある子だ。

 でもこの子がボクの護衛に残るって……それ大丈夫なのか?

 一応ホムンクルスカスタマイズの情報を閲覧してみて戦闘面では問題なさそう。

 というか……これは……。


「イービー」

「ははははい! ななななんでしょうかマスターさん!」

「いやえっと……そんなに緊張しないでいいよ? とりあえずそこのベッドを持ち上げてくれる?」

「はははい!」


 アリス達4人はボクが指差したベッドと、そんな彼女達よりもずっと小柄なイービーを見比べている。

 まぁどうみてもクイーンサイズのベッドを持ち上げられるとは思えないよね。


「こここれで、いいですか?」

「うん、もういいよ」


 様々な装飾が施されているかなりの重量がありそうなクイーンサイズのベッド――他にもベッドがあるのに、昨日5人でぎゅーぎゅーで寝た――をひょい、と軽々と持ち上げてしまったイービー。

 みんなぎょっとしている。相変わらず半眼がデフォルトのクラリスが目を見開いているのは面白い。


 ……すごいな、これが剛力スキルか。


「……ま、マスター、これは……」

「イービーは腕力強化の上位の怪力のさらに上位の剛力ってスキルを持ってるのさ」

「ご、剛力!?」

「マスター殿! 剛力といえば100万に1人と言われるほどの希少スキルですぞ!?」

「そんなに希少なスキルなんだ。ボクは超有用スキルってだけしか知らなかったな」

「あ、あの、その……ご、ごめんなさい!」

「大丈夫だよ、イービー。君を責めてるんじゃない。むしろ褒めてるんだよ?」

「そそそそんな、あたしなんてあわわわ」


 うん、イービーの事がだんだんわかってきた。この子は自分に自信がないんだねぇ。

 でも同じ9割のMPを使ったアリスとベスですら持っていなかった上位系スキルを初期から所持しているびっくりな子なんだけどなぁ。


 ホムンクルスカスタマイズでスキル付与する際にも、付与できるスキルは初期スキルから始まる。

 ホムンクルスなどのお助けNPCはプレイヤーと違って職業のLvをあげていけば取得できるスキルが増えるってわけじゃない。まずプレイヤーと違って職業がないしね。

 お助けNPCがスキルを取得するにはスキル付与でスキルを取得して、スキルのLvを上げて――使用したり、ホムンクルスカスタマイズなど――上位スキルへと進化させる必要がある。まぁ初期スキルだけでも相当な数あるけどね。


 剛力はそんな進化が必要な上位スキルの中でも2段階進化しないと取得できないスキルだ。

 1段階上がっただけでも性能は雲泥の差になるのに2段階目のスキルを最初から持っているとか……この子は頼りになりそうだ。


 ……性格はまぁ個性ってことで。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 イービーが増えてボクも入れて6人になったので、クラリスに朝食を1人分追加して貰いついでに人数申請も行ってもらう。

 朝食が来るまでにイービーに先輩ホムンクルス全員で色々と教えているのを微笑ましく思いながら、ボクは先ほど気づいた事柄を確認する。


 どうやらホムンクルス生成でイービーを作った事で、ホムンクルス生成が成長したらしい。

 ボクはホムンクルス生成をほとんど使った事がなかったから知らなかったけど、ホムンクルスは人型を作れるだけじゃないみたいだ。

 なんと『ペット』が作れるようになったのだ。


 錬金術師以外の魔法職はホムンクルスではなく、獣型のペットをお助けNPCとする。

 獣型のペットは多種多様で、ホムンクルスも種族が違ったり、個性がそれぞれあったりするようにペットも種類がすごい。

 相変わらずランダム生成っぽいけど、ある程度はボクの意図を汲んでくれるっぽいのはホムンクルス達を見ればわかる。まぁスキル的に?


 あと、ホムンクルスカスタマイズの共有拡張機能にペット専用項目がいくつか追加されているのも気づいた。

 人型では出来なった視覚や聴覚の共有というか、一方的な使用――ボクはペットの視覚と聴覚を使えるが、ペットはボクの視覚や聴覚を使えない――が出来るみたいだ。

 冒険者として活動予定の4人の状況は念話でしか確認できないかと思っていたけど、ペットを使用すれば視覚と聴覚を共有することで便利になりそう。


 あわあわしているイービーに色々教えている4人を眺めながらどんなペットがベストだろうかと考える。

 邪魔にならず、且つ色々便利な子がいいなぁ。

 イベントリ(インベントリー)は人前での使用は当分控えさせた方がいいだろうから、荷物持ちが出来る子がいいかな?

 足も速くて彼女達の助けにもなって……。まぁランダムだろうからその辺は運任せということで。


 魔素のポーションを使ってMPが2割ほどになったのを確認して――パンっとして、ほい。


「「「えっ」」」

「ふわぁ~」


 クラリス以外の3人の声が重なり、イービーは初めて見るボクの錬成に口を大きく開けてびっくりしている。

 クラリスはもう色々と慣れたのか性格上の違いなのか、半眼のままで冷静だ。彼女の目を見開いた顔、楽しみだったのに。


 光の後に残ったのは大型犬サイズのわんこ。

 ぺたっと垂れて閉じた耳と大きな尻尾。

 黒い毛並みは艶々でもふもふしい。

 ボクが乗っても大丈夫そうなくらい体躯はしっかりしている。


「あ、あの、マスター……?」

「うん、ペット型のホムンクルスが作れるようになったみたいでね。作ってみた。この子も君らに同行させるから。

 視覚と聴覚の共有が出来るからボクも君達の状況を詳細に把握できるようになるよ」

「なんと! それは便利です! さすがマスター!」


 アリスの問いに答えれば他の3人も納得したようだ。

 でも1人だけ違う反応を示している子がいる。


「まままままマスターさん! この子すごく可愛いです! かっこいいです! すごいです!」


 そういうや否や生成したばかりで命名待ちなのか、伏せの体勢になったわんこに飛びつくイービー。

 剛力を発動させちゃだめだよ? 絞め殺しちゃうよ?


「イービー、ステイ! ステイだ!」

「はわわわ! だだだ、大丈夫です! ふわふわです! 気持ちいいです!」

「イービーばっかりずるいぞ! 私にも触らせろ!」

「あら、そんならうちも触らせておくれやす」

「わ、我も……」

「……皆さん、まだマスター様の命名が済んでおりませんよ」


 イービーがもふもふを堪能し始めたのを見て、他の3人も追随しようとしたけどクラリスの凍えるような一言でその動きを止める。

 イービーなんかガクガク震えて絨毯の上で正座状態になっちゃってるよ。尻尾が丸まって頭の上の耳もぺたんこだ。

 他の3人も同じように絨毯の上に正座させちゃってるし、クラリスすげー。


 まぁボクはそんなクラリスの凍えるような一言にも動じなかったわんこに名前をつけてしまおう。

 もしかしたら名前をつけるまでは稼動できないのかもしれない。イービーに抱きつかれていた時も無反応だったし。


「さて、君の名前はファーリ。よろしくね。

 あっちで怒られてるのが左からアリス、ベス、デュリー、イービー。

 怒ってるのがクラリスね。仲良くしてね」

「わふ」


 ボクに撫でられてご機嫌そうなファーリに微笑み、クラリスにその辺でいいよ、と適当にお説教を終わらせる。

 その後はみんな暴走することなく、順番にファーリと友好を深めていると朝食がやってきた。


 クラリスが密かにファーリの分も注文を追加しておいてくれたので、1匹だけ待つ事もなく美味しい朝食を堪能する。

 そうそう、ファーリはペット枠なのでホテル側への人数申請は必要ないそうだ。


 でも……食費だけでも結構な額かかっちゃうかなぁコレ。



気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


5/7 誤字修正

5/12 イベントリにルビを追加


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