03
さて一先ず錬成が無事に使えることがわかり、生命のポーションが手に入った。
ちなみにイベントリに入れればアイテムのデータが見れる。
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生命のポーション
品質:最高品質
追加効果:CT時効果減少緩和率大
CT:300秒
LBを14%(8%+6%)回復する。
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どんなに頑張って抑えても品質が最高品質――低品質、通常品質、上品質、最高品質の順に効果が上がる――になってしまうのはこの際仕方ない。
追加効果は普通はついていないものなんだけど、パッシブスキルでいつもつけている効果だったので忘れていた。
CTはクールタイムで、CT中に同じ生命のポーションを使用すると効果が減少してしまうデメリットがある。
その代わりポーションは即効性だ。
追加効果のCT時効果減少緩和率大は名称通りにCT中に効果が減少するのを緩和してくれる。
実際の緩和率は大で80%くらいだ。
CT中の効果減少率は50%なので緩和率大だと、非常に有用な追加効果だといえる。
ちなみにパッシブスキルも全開だったので、付与効果なしなら1個分の材料で10個作れたが付与効果が1つ付いているので5個だ。
全部売れれば万々歳だけど、多分無理だろうから1つ売れれば御の字。というか売れないとボクのお腹が大変なことになる。
それにそろそろ日が暮れる……。
今日ボクはどこで寝ればいいんだろう?
……現実逃避をしていても始まらない。
まずはこの生命のポーションを売る。そしてお金を手に入れて食料を買う。
そして寝床を確保だ!
さて問題はボクが売りに行くのは面倒事の予感がしてならないという点。
では誰が? この街に知り合いなんていそうにない。
でもボクは錬金術師。
そう、ボクにはホムンクルスを錬成できるという手段があるのだ!
ホムンクルスはHeart & Heartsでは一緒に戦ってくれるお助けNPCだった。
Heart & Heartsでは必ずどの職業についても一緒に戦ってくれるお助けNPCが必ず1体はいる。
1人で戦うなんて勿体無い! 心と心を通わせた心強い仲間と共に冒険しよう! というコンセプトなのがHeart & Hearts。勿体無いんだってさ。
ソロでボッチなプレイヤーでも1人で戦わなくていいようになるのがこのお助けNPC達だ。
まぁ他のプレイヤーと一緒に戦った方が圧倒的に効率はいいんだけどね。
錬金術師のお助けNPCがホムンクルス。
でもボクは正直ホムンクルスをあまり使わなかった。
ほら、ボクって女性アバターでしょ? みんな優しいんだよね。
性別詐称が出来ないのがVR。それはもう常識といってもいいものだ。
だからまぁ……ね。
というわけでホムンクルスは序盤も序盤で使ったっきり。
正直どのくらいの強さだったのかとか、アクティブスキルで残っているホムンクルスカスタマイズで何が出来たのか、とか全然覚えていない。
でも今は必要だ。
必要なら使うしかない!
というわけで材料集めです。
まずは錬成でホムンクルスのレシピを閲覧する。
錬成を使用すると作れるアイテムの一覧が出てくるのでそれを見ればレシピが載っているというわけだ。
ホムンクルス生成に必要なレシピは……。
・マナ(任意)
終わり。
……まじすか!
と、思ったけど序盤も序盤で使うべきスキルなんだから当然か。もう全然覚えてないからびっくりしちゃったよ。
材料がわかれば、パンっとして、ほい。
マナ――MPは任意だったのでとりあえず9割ほどのMPをぶち込んでみた。ボクのMPは転生を繰り返して得た転生スキルでカンストしている。だから相当な量のマナとなるだろう。
強くて困ることはない。むしろ強い方が何かと対処できそうだし。
……まぁ正直なところホムンクルスは強いという話をまったく聞いたことなかったし、MPの9割をぶち込んでも強い子は作れないだろう。それでもやらないよりはマシだ、と思ったのだ。
路地裏に小さな光が溢れ、それが収まった後に居たのは銀髪で赤い目をした美人さんでした。
スタイルはすとーん、きゅ、ボーン。
耳が長いから妖精種のエルフだね。でもホムンクルスです。
妖精種の美人さんは閉じていた瞳を開くとすぐに跪いて頭を垂れた。
その洗練された動作にちょっと見ほれるくらいだった。
かっけー。
すとーん、きゅ、ボーンでも着ている服はボクの布のワンピースよりは上質そうな長袖とズボン。
まぁ素っ裸で出てこられるよりはいい。むしろ素っ裸だったら大変だったろうなぁ。
とりあえず、ホムンクルスAに名前をつけなくてはいけない。
お助けNPCには専用の固定名がなければ普通はプレイヤーが命名する。
ホムンクルスに固定名があるなんてことは聞いたことがないので今はボクの命名待ちだろう。
「んーと、君の名前はアリスね。よろしく」
「ハッ。この命に代えましてもマスターをお守りいたします」
……なんだか堅い人のようだ。
ホムンクルスカスタマイズで性格っていじれたっけかなぁ。
というかゲーム中では喋ったりしても固定台詞だったからなぁ。この世界ではホムンクルスも人なんだろうなぁ。扱いとかどうしたらいいんだろう?
「えっと……。とりあえず、アリス。君にはこの生命のポーションを売ってきてお金を手に入れてきて欲しいんだ。
出来る?」
「もちろんです。現在の生命のポーションの相場は確か250000ロールほどだったはずです。
買取の場合は店にもよるでしょうが6割から7割となるでしょう。よろしいですか?」
なんかすごく有能ですよ。ホムンクルスすごくない?
その情報ってどこで手に入れてんの? 君今さっき誕生したばっかじゃん。
「えーと……。うん、まぁ6割でもいいかな? 面倒事とか起きないかな?」
「生命のポーションをお預かりしてもよろしいですか?」
「あ、うん」
「失礼致します……なるほど。確かにこれほどの品質の物となりますと、普通に買取を依頼すれば問題になるかもしれません。
それに最高品質の通常の生命のポーションですし、追加効果が凄まじい物です。
これは出所を探られるでしょう」
「あーやっぱり?」
「はい、まず間違いなく」
やっぱりこのままでは危ないようだ。
追加効果は意識すればつけないでも作れるけど、品質に関しては制御できない。
「追加効果はつけないように作れるんだけど、品質は無理かな。
それだとどうだろう?」
「そうですね……。いっそ薄めて品質を下げてしまうのはいかがでしょうか?」
「どうやって?」
「水で薄めます」
「……まじで?」
「はい」
どうやら本当に水で薄めて品質を下げることが出来るようだ。
面倒事を回避するためにも出来るんならやっておくべきだろう。うん、やろう。
「じゃあ追加効果のない生命のポーションを作って水で薄めて売ろう」
「わかりました。材料はどのようなものを集めればよろしいでしょうか?」
ポーションの相場は知っているのに材料は知らないらしい。変なの。
「えっとね――」
材料を教えてあげると美しい顔をきょとん、とさせてから慌てたように咳払いをして材料を探しに行ってくれた。
長い耳が真っ赤になっていて可愛かった。
さてボクも材料を探すかなぁ、と思ったけどホムンクルスカスタマイズの確認をすることにした。
使用すると目の前にウィンドウが出て現在所持しているホムンクルスのデータが表示される。
カスタマイズ項目は多岐に渡るようだ。
消費される物も多種多様でアイテムだったり、MPだったり、両方だったりと色々だ。
カスタマイズ項目にはスキル付与とかもある。
ホムンクルスって結構強くなるんじゃないの、コレ。
ちなみにアリスがなぜ相場を知っていたのかは、所持しているスキルが影響しているみたいだった。
アリスは相場情報というボクが知らないスキルを持っていた。
Heart & Heartsにはなかったスキルだ。
ホムンクルスカスタマイズのスキル付与を確認したところ、思った通りにボクの知らないスキルがたくさんあった。
Heart & Heartsでは出来なかったカスタマイズによって、ホムンクルスはもしかしたら十分な戦力となれるのかもしれない。
……だといいなぁ。
名前だけではいまいちわからないスキルが多いので今のところは保留するべきだろう。
一先ずポーションが売れたら次を考えよう。
「マスター、お待たせ致しました。こちらで本当によろしいんですか?」
「おかえり……うん、大丈夫だよ。ほい」
アリスが戻ってきたので手の中の材料を地面に置かせて、パンってして、ほいっと錬成する。
今回は追加効果を付与させないので個数がさっきより大分多くなった。
合計10個の生命のポーションが完成だ。
「……す、すごいです、マスター……。
私はこのように生命のポーションを生成する方法を知りませんでした」
「そうなの? 錬金術師って知らない?」
「申し訳ありません。わかりません」
「ふーん。まぁじゃあボクのコレは内緒の方向でお願いね」
「わかりました」
アリスの所持スキルには一般教養というスキルがあった。
一般教養がそのまんまの意味ならこの世界の常識をアリスは持っていることになる。
そんなアリスが錬金術師を知らないということは、ボクのこの能力は秘匿すべきだろう。
面倒事の匂いしかしないもの。
「じゃあアリスはこの生命のポーションをそうだなぁ。3つほど薄めて売ってきてくれる?
売れたら念話を飛ばして。何か厄介ごとがあっても念話ね」
「わかりました。お任せください。
薄めて増えた分量はどうしましょうか?」
恭しい態度で3つの生命のポーションを受け取るアリス。
念話は所謂PTチャットみたいなものだ。
アリスのデータを見たときにちゃんとスキルに念話があったので大丈夫だろう。
でも一応確認しておこうかな。使えなかったら嫌だし。
【あーそうだねぇ。適当に捨てていいよ】
【す、捨てるのですか?】
【うん? 飲んでも美味しくないと思うよ?】
【そ、それはそうですが……わかりました】
【じゃあ頑張ってね。あ、あとなるべく早くお願い】
【わかりました。私のもてる限りの速度で行ってまいります!】
やる気漲るアリスにほどほどにね~、と思ったけど口――念話には出さなかった。
捨てるのは勿体無いかとボクも思ったけど、LBは減ってないし容器もない。だからどうしようもないんだ。選択肢がないって悲しいよね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ベンチに座ってお腹の虫の抗議を頑張って無視していると、さっそくアリスから念話が来た。
【マスター、3つ共すぐに売却できました。
倍に薄めては見たのですが、品質がやはり問題となって少し聞かれましたが、うまく誤魔化せました。
総売却額は525000ロールです】
【おぉ~じゃあ……どっか適当な路地裏に入って隠蔽を使ったら教えて】
【わかりました】
正直今のアリスは品切れ状態の貴重なポーションを、しかも高い品質の物を持ち込んできた見逃せない相手だ。
ボクだったらまず尾行をつけて素性を調べて、もっと手に入らないか調べる。
なのでこのままボクと合流するのはいけない。
ちょうどよくアリスは所持スキルに隠蔽があったし、さくっとホムンクルスカスタマイズでLvをあげておいた。
隠蔽のLvをあげるのに消費したのはマナだけだったのがありがたい。まだLv低いからだろう。
この隠蔽でどこまで誤魔化せるかはわからないがやらないよりはマシだろう。
それに隠蔽は保険でしかないし。
【マスター、路地裏に入り隠蔽を使用しました】
【おっけー尾行はいる?】
【私が把握しているだけでも2名ほど】
【じゃあ少し待ってね】
やっぱり尾行がついてたようだ。
ここからはボクの出番だ。
まずホムンクルスカスタマイズでアリスの外見データをいじる。
消費はマナだけなのが非常に助かる。基本データだからかな?
アリスの種族は妖精種のエルフだ。
銀髪で赤目のエルフはそれはそれは目立つ。しかも美人さんだ。
まず銀髪を金髪に変更。
赤目を青に。
種族の変更はマナだけでは無理だったので仕方ない。
とりあえずこれでいいかな?
【アリス、尾行者はどうなってる?】
【隠蔽のおかげで見失っているようですが、隠蔽を解いたら恐らく見つかります】
とりあえず見失ってるなら問題ないだろう。
【じゃあそのままゆっくり歩いて通りに出て。通りに出たら隠蔽解いていいから、たぶん自動で解けちゃうと思うし】
【よろしいのですか?】
【隠蔽状態のアリスにはわからないだろうけど、今アリスの髪と目の色を変えたから多分同一人物とは判断できないと思うよ。
似たようなエルフさんは結構居たしね】
【なんと……そのような……。さすがはマスターです。
隠蔽も格段にLvが向上しておりましたし、これもマスターが?】
【うん、そ~】
【……私は素晴らしいマスターと出会えたようです】
【だといいんだけどねぇ~】
なんだかアリスと話してると自分がすごい人に思えてくるから困る。
今のボクはアクティブスキルを9割以上使用不可能にされてしまって、苦労して集めたレア装備も全てロストしてしまっているんだ。
こんな状態では全然すごくない。
でも今はいい。そろそろお腹が空きすぎて思考が鈍ってきてるもの……。
アリス早く帰ってきてぇ~。
ていうか何かご飯買って来てもらえばいいのかー。
【アリス~】
【はい、マスター! 尾行者はマスターの仰るとおりに誰一人私を認識できなかったようです!
さすがマスターです! すごいです!】
【そっかー。じゃあ悪いんだけど戻ってくる前に適当に何か食べる物買ってきて~お腹空いた~。パンでもいいから食べたい~】
【わかりました!】
なんだかアリスのボクへの忠誠心的なものがかなり上がっているように感じる。
まぁそんなことはどうでもいい。ひもじいよぉ~。アリス、はーりーあっぷ!
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