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3 雨
ぽつり ぽつり と
駅前広場を雨粒が黒く染めていく。
はる君が駅を出たのと、同時に雨が降り出した。
ベンチで寝ていた老人が慌てて屋根の下に移動した。
はる君は、ポケットから携帯を取り出し
「かなちゃわん、今駅前に居るんだけど…雨が降り出して…」
「ふうん…えっ…きゃあ…雨が降ってる…。」
ガチャン……
はる君は確信した。
かなちゃんは僕を迎えに来てくれる。
なんて優しいんだ……。
しばらくすると、ロータリーにかなちゃんの軽自動車が現れた。
はる君の近くに停車し、
「濡れちゃうから、早く乗って」
はる君は自動車に急いだ。
だが、その横を追い越す影。
ひと足先に車に乗り込む ふゆ君
「ありがとう かなちゃん」
「はる君が雨が降ってるって教えてくれたの。
ありがとね。」
自動車ははる君を一人残して去って行った。
ぽつん……
「兄ちゃん、風邪ひくよ。」
老人にゴミ袋を掛けて貰う、はる君…
はる君の心と同じように雨が降る……
ざばぁぁぁ〜〜ん