The moon
一日が終わってゆく。
朱色に染まった雲、本来の色に戻る空。
街は灯りに包まれて、人は俯き家路を急ぐ。
私は歩む足を止め、呼ばれるように振り向いた。
それは、私とあなたの逢瀬の時。
ビルとビルの隙間から、少し覗いた横顔に、私は心、躍らせる。
あなたは日々姿を変え、装いを変えるけど。
それでもあなたがあなたであることを、私は誰より知っている。
煌めく星々が時に美しく映るけど、あなたの輝きには敵わない。
だけどあの日だけは苦しいの。
雨の日も、雲かかる日でもあなたがいるのを感じるのに。
その日だけは感じない。
何も、感じることはできないの。
それは、彼女があなたを支える日。
あなたは休息を許される。
全ては再び始まるの。
私はあなたに会えず、涙する。
あなたの安らげる場所でいたいのに。
けれどあなたは気にもせず、次の日素知らぬ顔で見下ろすの。
彼女がどれだけ偉大かを、日々私に知らしめながら。
私はあなたに恋をする。
届かぬ想いとわかってもなお恋焦がれ、
あなたが呼ぶのを待っている。