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神なき世界で悪魔にモテたので、ついでに人類救済します。  作者: ナナツメ蜜柑


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9/26

観察対象が、街を壊しにいっている気がする

 ――私は、間違っていたかもしれない。


 そう思ったのは、

 ジルとルナが街に出て、三分後だった。

 アリシアは、旅への同行を決心するために改めて二人の観察をしていた。


(今日は“観察”よ……)

(落ち着いて、見極めるの……)


 そう心に決めて、

 私は少し距離を取って二人の後を歩いていた。


 目的は、監視ではない。

 ましてや拘束でもない。


 理解だ。


 ジルという人間が、

 どんな人物なのかを知るための――

 純粋な観察。


 の、はずだった。


「主、あれ食べたい」

「朝飯食っただろ」

「別腹」

「悪魔にも胃袋の理屈は通るのかよ」


 屋台の前で立ち止まる二人。


(普通の会話……)

(平和……)


 私は少し、安心しかけた。


「おじさーん、三つ」

「二人だぞ」

「アリシアのぶん」

「いつから同行者扱いに?」


 ルナが勝手に私を指差す。


「仲間でしょ?」

「ま、まあ……」


 屋台の主人が、ちらりと私を見る。


「……嬢ちゃん、悪魔?」

「ち、違います! 人間です!」

「じゃあなんでそんなのと一緒に」


 その瞬間。


「失礼な奴だな、かわいいだろこいつ?」


 ジルが、さらっと言った。


「え?」

「え?」


 私と屋台の主人が同時に声を出す。


「……?」

「……?」


 ルナは一瞬目をあやしく光らせてから、満足そうに頷いた。


「主、わかってる」

「褒めてない」


 その後、なぜか屋台が半額になった。

 店主は青い顔でまた待ってるよ~と言っていた気がする。


(……この人、何者なの……?)


 少し歩いた先。


「主、あれ」

「今度は何だ」


 壊れかけの看板。

 下には人だかり。


「危ないですね……」

「放っとくと落ちるな」


 ジルが軽い身のこなしで、看板を押さえた瞬間。


 ばきっ。


「あ」

「あ?」


 完全に、折れた。


「……主」

「違う、今のは素材が悪い」

「言い訳が早い」


 看板は落下し、

 地面に突き刺さる。


 人だかりが、ざわつく。


「だ、大丈夫ですか!?」

「誰だ今の!」


 ルナが手を挙げた。


「はーい」

「挙げるな!」


 結果、

 なぜかジルが修理を手伝う流れになり、

 周囲から感謝され、

 お礼に果物をもらっていた。


(トラブルなのに、収束してる……!?)


 次。


 市場。


「主、これ呪われてる」

「触るな」

「もう触った」

「触るなって言っただろ!」


 露店の店主が、慌てて叫ぶ。


「それ、返品不可――」

「やっぱり呪われてた?」

「やわらかい呪い」

「柔らかいって何だ!」


 ルナが、指を鳴らす。


 ぱちん。


 呪いが消える。


「はい、呪い消えたよ」

「……え?」

「無料にしとくよね?」

「なぜそうなる!?」


 店主は、頭を抱えていた。


 私も、頭を抱えたい。


(観察……)

(観察とは……)


 決定打は、広場だった。


「主、子供泣いてる」

「ん?」


 転んだ子供。

 膝を擦りむいている。


 ジルが、しゃがみ込んだ。


「大丈夫か」

「……うん」

「痛いよな」


 迷いなく、ハンカチを差し出す。


「傷押さえておけ」


 その仕草は、

 驚くほど自然だった。


 子供は泣き止み、

 母親が何度も頭を下げる。


「ありがとうございます……!」


「気にするな」


 ジルは、すぐ立ち上がった。


 その横顔を、

 私は、じっと見ていた。


(……この人)


 いい人なのか。

 危険人物なのか。

 規格外なのか。


 答えは、まだ出ない。


 ただ一つ、分かったことがある。


 ジルとルナは――


「主、次あっち行こ」

「まだ何か起きるのか?」

「たぶん」


 何もしなくても、何かが起きる。


(……旅)


 私は、静かに決めた。


(この人たちと一緒にいると退屈しないかも)

(悪魔に脅かされる冷え切った世界の中で、温かさを感じる)


 本当は初めから答えなんて分かっていた。

 アリシアは少し笑って

 

 「私もついていきますからね」

 

 愉快な旅が始まる。

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