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神なき世界で悪魔にモテたので、ついでに人類救済します。  作者: ナナツメ蜜柑


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6/26

悪魔は、意外と段階踏んでくる

 寮で過ごす静かな夜。

 俺は思った。


 ――静かすぎる夜は、だいたいろくなことにならない。


「ねえ主」

「言うな」

「今、変なの来てる」

「言うなって言っただろ」


 防衛隊の寮の窓から見える外壁は、いつも通り――

 なのに、空気が変だった。


 重い。

 湿っぽい。

 そして、妙に落ち着かない。


 その違和感に答えるように、

 遠くで低い警報音が鳴り始めた。


「……警戒信号?」

「まだサイレンじゃないね」


 廊下を歩いてきたアリシアが、足を止める。


「……外縁監視班から連絡です」

「来てる?」

「はい。悪魔の集団が、都市に向かっています」


 あまりこの都市にも長いはできないのかも知れない。

 俺は、素直に言った。


「……寮、手配してくれて助かった」

「え?」


「野宿してたら、今ごろもっと面倒だった」

「……それは……」


 アリシアは複雑そうな顔で。


「職務ですから」

「それでも、感謝してる」


 その直後。


「私、確認に出ます」


「え」

「え?」


 俺とルナの声が、きれいに重なった。


「アリシア?」

「防衛隊ですから。状況確認を――」


「待て」

「止めないでください」


 そう言って、彼女は外套を羽織り、都市の外へ向かった。


「……真面目だね」

「真面目すぎる」


 都市の外。


 結界の外側に一歩出た瞬間、

 アリシアは悟った。


(……近い)


 闇の向こう。

 見えないはずの“何か”が、

 確実に、こちらを見ている。


「……っ」


 剣を握る手が、震える。


「私は……防衛隊……」


 一歩。

 また一歩。


 ――そのとき。


 闇が、動いた。


 形にならない影。

 視線だけが、はっきりと向けられる。


「……悪、魔……」


 膝が、勝手に折れた。


 怖い。

 逃げたい。

 身体が、言うことを聞かない。


「……っ、あ……」


 温かい感覚が、太腿を伝った。


 制服の内側が、

 じわりと、重くなる。


「……いや……」


 恥ずかしさより、

 恐怖が勝った。


 その瞬間。


「はいはい、そこまで」


 聞き慣れた、軽い声。


 気づけば、

 ジルが前に立っていた。


「無理するな」

「……ジル……」


 ルナが、あくび交じりに手を振る。


「今日は様子見の日だから」

「様子見!?」

「うん。向こうもね」


 影は、確かにそこにいた。

 だが、踏み込んではこない。


「……そうだよね__?」


 普段のルナからは想像できない力を覗かせる声音で言うと、

 闇は、すっと後退した。


 アリシアは、その場にへたり込む。


「……私……」


 ジルは、ため息をついた。

 視線はアリシアの下半身に向けられ


「まあ、なんだ。風邪…ひくなよ?」

「……」


 ルナが、にこっと笑う。


「最初はみんな、失敗するよ」

「フォローになってない……」


 こうして、

 都市はまだ無事だった。


 だがアリシアは知った。


 悪魔という存在の恐ろしさを。

 訓練で知っていたはずなのに、目の前にするとどうにもならないことに。


 そして――

 次は、逃げられない距離で来るということを。

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