ヴィルディア編、まずはベンチから
北のシェルター都市ヴィルディアの中は、
外の雪景色が嘘のように暖かかった。
静謐な空気の中に、ぼんやりと浮かぶ街頭が、幻想的な雰囲気を漂わせていた。
「……もう、どうにでもなれ」
アレンはそう言って、都市のベンチに腰を落とした。
「いきなり諦観に入るな」
ジルが隣に座る。
「保証人だぞ。俺、保証人だぞ!?。元悪魔幹部とか、人類救済とか言っている奴らを入都させた住民って、記録にどう書かれるんだよ」
「英雄的な友人関係、とかでいいだろ」
ジルは適当に言う。
「よくない!!」
アレンは頭を抱えた。
セレナは優雅に微笑んだ。
「安心なさい。宴会の席での武勇伝には一生困りませんことよ」
「いらない!そんな武勇伝!」
ルナはジルにくっ付きながら、のんびり言った。
「主、保証人っておいしい立場」
「悪魔基準で語るな!」
アレンはベンチの背もたれに倒れ込むように仰向けになった。
「……まったくこれからこの都市を守ろうって時に」
「……なんでまた里帰りなんかしたんだ?」
ジルはアレンへ問いかける。
アレンは天井を見たまま、しばらく黙ってから言った。
「旅の目的自体がこの都市の衛士隊に入る前の社会勉強だ」
「俺の家は代々、衛士隊に関わる家系だ」
なるほどとジルは納得する。
「それもあって入都が許されたわけだ」
噂をすると先ほどの入都審査官がこちらに向かってくるのが見える。
「アレン・フロス、あとで登録局に来てもらう。追加の書類が山ほどある」
「山ほど!?」
「安心しろ。人類史レベルで山ほどだ」
「安心できる要素どこだよ!!」
「ま、世話になったな次期衛士隊長」
ジルは立ち上がりながらアレンに感謝する。
「とりあえず俺たちは観光から始めるか」
「観光って軽く言うなよ!」
アレンが跳ね起きる。
「北のシェルター都市ヴィルディア。
人類最大の秩序都市。
そして——」
ジルは淡々と続けた。
「面倒事の匂いがする場所だ」
その言葉通り、都市の奥では、何か不穏な気配が立ち込めていた。




