ヴィルディア入都
北のシェルター都市ヴィルディアの門前で、一行は未だに寒風にさらされていた。
門は堅牢、兵士は無表情、そして審査官は面倒くさそうな顔をしている。
「……というわけで、入都不可。理由は前話参照」
審査官はもう説明を放棄していた。
「参照って何だよ!」
アリシアが真っ先にキレる。
「ん?具体的には27話と28話あたりじゃないか?」
ジルが真顔で言う。
「真剣に答えないでください!」
セレナは門の横で暇そうに自身の毛先で遊んでいた。
ルナは審査官の頭のくるくると飛び回る。
「だれかぁ助けてください…」
アリシアが空を仰ぐ。
目に入るのは均等に並べられた石の天井だけだった。
審査官がため息をついた。
「悪魔みたいな人間、悪魔、元悪魔幹部、人間、全員入都拒否の教科書的構成だ」
「歴史の教科書で頼む」
ジルが淡々と返す。
「なら、どうすれば入都できるんですか?」
アリシアが聞く。
「簡単だ。保証者を連れてこい。」
その瞬間、全員の視線がアレンに集まった。
アレンは黙って目を逸らした。
「……え?」
アリシアが首を傾げる。
ジルはアレンをじっと見て、短く言った。
「お前、なんか隠してるだろ」
アレンはしばらく沈黙し、ようやく口を開いた。
「……言うと、面倒になるだろ」
「いや、もう十分面倒ですから」
アリシアが即答する。
アレンは諦めたようにため息をつきながら
「俺はヴィルディア出身だ」
一瞬、風が止まった気がした。
「……は?」
アリシアが固まる。
「生まれも育ちも、ここだ」
審査官が目を細めた。
「姓は?」
「アレン・フロス」
審査官が台帳をめくり、顔色を変える。
「……確かに登録されている。住民番号、家族記録、戸籍、全部ある」
「ほう。最初から言えアレン」
ジルが感心したように言う。
「言うわけないだろう!?誰がお前らの保証人なんかになるか!」
セレナが楽しそうに頷く。
「ふふっ。元悪魔幹部の保証人なんて格好の良い響きなかなか無いですわよ?」
「いるかあ!!そんなもん!」
審査官が腕を組んだ。
「住民保証者がいるなら、規定上、同行者として入都可能だ。悪魔の規定はそもそも無いがな」
「やった!」
アリシアが拳を上げる。
「主、遂に野宿脱出」
「ああ。このままノリと勢い、そして雰囲気で突破するぞ」
ジルが珍しく真剣な顔でまっすぐなまなざしを仲間へ向ける。
「さあ、皆さま行きますわよ!いざヴィルディアへ!」
「まてまてまて!!」
審査官が門兵に合図を出す。
「門を開けろ」
巨大な門がギギギ……と音を立てて開く。
都市の灯りが雪の向こうに広がっていた。
「おお……。ここがヴィルディア…」
アリシアが感動する。
「懐かしい。私おすすめの宿がありますの。案内しますわ」
こうして門の向こうに足を踏み入れた一行。
だれかの犠牲なしには進むことのできない、
終末世界だとしても彼らの旅はノリ良く進み続ける―




