勝ち方を覚えても、使えるとは限らない
門は、固く閉ざされていた。
正確には――
物理的には開いているが、
社会的に、完全に閉じている。
何度挑戦しても結果は同じだった。
「……というわけで」
門番が事務的に告げた。
「現時点では、入都は認められません」
「ですよねー……」
アリシアが力なく頷く。
「必要書類の不備」
「同行者の身分不明」
「悪魔との同行」
「悪魔が元幹部」
「一番下、余計じゃないですか?」
入都審査を行う男は一切ぶれなかった。
*
門の外、少し離れた場所。
一行は、見事に立ち尽くしていた。
「……まあ」
ジルが言う。
「想定内だな」
「想定内で済ませないでください!」
アリシアが即座に突っ込む。
「完全に詰んでますよ!?」
ルナは門を見上げる。
「主」
「ん?」
「この街、嫌い」
「同感だ」
セレナは、顎に手を当てて首を傾げた。
「おかしいですわね」
「どの口が言うのですか」
アリシアは即答した。
ジルは、ふとセレナを見る。
「……そういえば」
「前にヴィルディアに来た時は、どうしたんだ?」
その一言で、
全員の視線がセレナに集まる。
セレナは、にこやかに微笑んだ。
「簡単ですわ」
嫌な予感しかしない。
「入都審査官と――」
「飲み比べをしましたの」
「……はい?」
「三日三晩」
「最後に立っていた方が勝ち」
「勝ったら?」
アリシアが恐る恐る聞く。
「入都」
「そんな方法が正式に通るんですか!?」
「当時の審査官が、たまたま酒好きだっただけですわ」
「再現性ゼロじゃないですか!!」
ルナが首を傾げる。
「主」
「ん?」
「今の人、弱そう」
「そういう問題じゃない」
アリシアは頭を抱えた。
「今回は絶対無理ですね……」
「ええ」
セレナはあっさり頷く。
「今の審査官、飲めなさそうですし」
「問題はそこですか!?」
沈黙。
北風が、冷たく吹き抜けた。
「……どうする?」
アリシアが小さく聞く。
「裏口があるとは思うが」
ジルは門を見る。
「それなりに危険だ」
「この街、入るだけで厄介すぎません?」
「秩序ってそういうものだ」
その時。
「……はぁ」
深いため息が、一つ。
今までほとんど黙っていた男――
アレンが、前に出た。
「お前ら、ちょっと下がってろ」
「え?」
アリシアが瞬きをする。
アレンは、門の方へ歩き出す。
「俺が話す」
その背中は、
これまでで一番“冒険者らしく”見えた。
ジルは、少しだけ目を細める。
「お前が動かない時点で」
アレンは振り返らずに言った。
「誰かが“普通”をやるしかない」
「頼もしいです……!」
アリシアが感動する。
ルナは、小声で言った。
「主」
「なんだ」
「この人、正気」
「それがこいつの良いところだ」
こうして――
北のシェルター都市ヴィルディア入都をめぐる、
別の戦いが始まろうとしていた。
剣でも。
魔法でも。
酒でもない。
最も厄介な敵――
正規手続きとの戦いが。




