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神なき世界で悪魔にモテたので、ついでに人類救済します。  作者: ナナツメ蜜柑


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勝ち方を覚えても、使えるとは限らない

 門は、固く閉ざされていた。


 正確には――

 物理的には開いているが、

 社会的に、完全に閉じている。

 何度挑戦しても結果は同じだった。


「……というわけで」

 門番が事務的に告げた。

「現時点では、入都は認められません」


「ですよねー……」

 アリシアが力なく頷く。


「必要書類の不備」

「同行者の身分不明」

「悪魔との同行」

「悪魔が元幹部」


「一番下、余計じゃないですか?」


 入都審査を行う男は一切ぶれなかった。



 門の外、少し離れた場所。


 一行は、見事に立ち尽くしていた。


「……まあ」

 ジルが言う。

「想定内だな」


「想定内で済ませないでください!」

 アリシアが即座に突っ込む。

「完全に詰んでますよ!?」


 ルナは門を見上げる。


「主」

「ん?」

「この街、嫌い」


「同感だ」


 セレナは、顎に手を当てて首を傾げた。


「おかしいですわね」


「どの口が言うのですか」

 アリシアは即答した。


 ジルは、ふとセレナを見る。


「……そういえば」

「前にヴィルディアに来た時は、どうしたんだ?」


 その一言で、

 全員の視線がセレナに集まる。


 セレナは、にこやかに微笑んだ。


「簡単ですわ」


 嫌な予感しかしない。


「入都審査官と――」

「飲み比べをしましたの」


「……はい?」


「三日三晩」

「最後に立っていた方が勝ち」


「勝ったら?」

 アリシアが恐る恐る聞く。


「入都」


「そんな方法が正式に通るんですか!?」


「当時の審査官が、たまたま酒好きだっただけですわ」


「再現性ゼロじゃないですか!!」


 ルナが首を傾げる。


「主」

「ん?」

「今の人、弱そう」


「そういう問題じゃない」


 アリシアは頭を抱えた。


「今回は絶対無理ですね……」


「ええ」

 セレナはあっさり頷く。

「今の審査官、飲めなさそうですし」


「問題はそこですか!?」


 沈黙。


 北風が、冷たく吹き抜けた。


「……どうする?」

 アリシアが小さく聞く。


「裏口があるとは思うが」

 ジルは門を見る。

「それなりに危険だ」


「この街、入るだけで厄介すぎません?」


「秩序ってそういうものだ」


 その時。


「……はぁ」


 深いため息が、一つ。


 今までほとんど黙っていた男――

 アレンが、前に出た。


「お前ら、ちょっと下がってろ」


「え?」


 アリシアが瞬きをする。


 アレンは、門の方へ歩き出す。


「俺が話す」


 その背中は、

 これまでで一番“冒険者らしく”見えた。


 ジルは、少しだけ目を細める。


「お前が動かない時点で」

 アレンは振り返らずに言った。

「誰かが“普通”をやるしかない」


「頼もしいです……!」

 アリシアが感動する。


 ルナは、小声で言った。


「主」

「なんだ」

「この人、正気」


「それがこいつの良いところだ」


 こうして――

 北のシェルター都市ヴィルディア入都をめぐる、

 別の戦いが始まろうとしていた。


 剣でも。

 魔法でも。

 酒でもない。


 最も厄介な敵――

 正規手続きとの戦いが。

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