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神なき世界で悪魔にモテたので、ついでに人類救済します。  作者: ナナツメ蜜柑


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24/31

寒い村で何も起きないはずがない

 北へ進むにつれて、世界は露骨に不機嫌になってきた。


 風が冷たい。

 地面が固い。

 空がやたらと低い。


「……寒いですね」

 アリシアが、息を白くしながら言った。


「北ですもの」

 セレナは涼しい顔だ。

「文明があっても、寒さははどうにもなりませんわ」


「主」

 ルナが、ジルの外套の中に半分潜り込む。

「寒い」


「見れば分かる」

「もっと」

 ルナは小さな頭をジルにめり込ませる。


「……もう無理だろ」


 背後から、アレンの声が飛ぶ。


「お前ら、もう少し危機感を持て」

「野営したら凍死するぞ」


「それは嫌だな」

 ジルは即答した。


「なら、さっさと村を探せ」

「探してる」


「探してる割に適当すぎる!」



 そして――

 案外あっさり、村は見つかった。


 木造の家。

 低い屋根。

 煙突から立ち上る、頼もしい煙。


「……人の営みだ」

 アレンが、ほっと息を吐く。


「良かった。」

 アリシアも同意する。


「主、ごはん」

「まずは宿だ」


 村に入った瞬間、視線が集まった。


 厚着の村人たち。

 警戒と疲労が混ざった顔。


「……旅人か?」

 年配の男が声をかけてくる。


「そうだ」

 ジルが答える。


 男は、ちらりとルナとセレナを見る。


「……悪魔か」


 一瞬、空気が固まる。


「安心してください!」

 アリシアが慌てて前に出る。

「害はありません!」


「ええ」

 セレナが微笑む。

「この寒さでは、争う体力も惜しいですもの」


「……それはそうだな」


 村人たちは、妙に納得した。



 宿は、一軒しかなかった。


 中は暖かく、

 暖炉の前に集まる客たちは、皆無言で酒を飲んでいる。


「……静かですね」

 アリシアが囁く。


「寒いと喋る気力も減る」

 アレンが言う。


「合理的ですわ」

 セレナが感心する。


「主」

 ルナが暖炉に張り付く。

「動きたくない」


「今日はそれでいい」


 酒と、硬いパンと、煮込み。

 素朴だが、身体に染みる。


「……生き返ります」

 アリシアがしみじみ言った。


「分かる」

 ジルも頷く。


 その時。


「……なあ」

 隣の席の男が、ぽつりと言った。


「お前ら、北に行くのか」


「予定では」

 ジルが答える。


 男は、酒を一口飲み――

 視線を伏せる。


「……なら」

「この村には、長居しない方がいい」


「どうしてですか?」

 アリシアが聞く。


「夜がな」

 男は低く言った。

「最近、変なんだ」



 宿の空気が、わずかに変わる。


「変、と言いますと?」

 アレンが警戒を強める。


「音がする」

「外だ」

「風じゃない」


「獣?」

 ジルが尋ねる。


「違う」

 男は首を振る。

「足音だ」

「……でも、誰もいない」


 暖炉が、ぱちりと鳴った。


「それは」

 セレナが、少しだけ目を細める。

「厄介ですわね」


「……やだ」

 アリシアが小さく言う。

「ホラー案件じゃないですか」


「主」

 ルナが囁く。

「面白そう」


「面白くない」


 アレンが、深く息を吐く。


「……お前といると」

「こういう話に事欠かんな」


「偶然だ」

 ジルは言った。

「たぶん」


「“たぶん”を信用できるか!!」



 その夜。


 外は、吹雪いていた。


 風。

 雪。

 視界は白一色。


 ――その中で。


 確かに、

 何かが、村の外を歩いていた。


 ぎし。

 ぎし。


 規則正しい、足音。


 誰かが、窓の外を見て――

 息を呑む。


「……来た」


 寒さとは別の理由で、

 背筋が冷えた。


 北の村は、

 どうやら一晩では、済ませてくれないらしい。

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