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神なき世界で悪魔にモテたので、ついでに人類救済します。  作者: ナナツメ蜜柑


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地下都市でひと休み

 警備隊長は、深いため息をひとつ吐いた。


「……借りは作りたくない性分でな」


 そう言って、ジルたちを振り返る。


「礼と言うほどじゃないが」

「飯くらいは、奢らせろ」


「……大丈夫ですか?」

 アリシアが思わず聞いた。

「予算的に」


「痛いところを突くな」


 隊長は顔をしかめつつ、続ける。


「だがまあ、個人の奢りだ」

「“街を救った連中に飯を食わせた”くらいの浪費なら、後悔もしない」


「それ、街の金じゃないですか?」

 一拍。

「聞かなかったことにしろ」



 ノクティアのレストランは、賑やかだった。


 岩を削った壁。

 天井から垂れる光石。

 鉄と木で組まれた無骨な内装。


 だが――


「いい匂い……」

 アリシアの目が輝く。


「主、ごはん」

 ルナはすでに席に座っていた。


「地下だから、保存食中心だと思ってました」

「偏見ですわ」

 セレナが当然のように言う。

「地上より食材が安定しますもの」


「どういう理屈ですか……?」


 ほどなく、料理が運ばれてきた。


 蒸し肉。

 香草入りのスープ。

 岩茸のソテー。

 そして――


「……この黒いパン、何ですか?」

「光石粉入りだ」

 店主が答える。

「栄養満点なんだがな」


「味は?」

「慣れだ」


「慣れ……」


 ジルは一口食べて、少し考えた。


「……悪くないな」


「主、ほんと?」

「ああ」


 ルナも食べる。


「……」

「……?」

「……慣れ」


「ですよね!」


 セレナは優雅にワインを口にしながら、満足そうに微笑んだ。


「戦場より、よほど良い食事ですわ」

「比較対象がおかしいです!」



 食後。


「腹が満ちると、街はよく見える」

 ジルが言った。


「それ、名言っぽく言ってますけど」

「気のせいだ」


 一行は、ノクティアの街を歩く。


 市場。

 工房。

 地下農園。

 光石の修理屋。


「地下なのに、洗濯物干してますよ」

「湿気が少ないからな」

 通りすがりの住民が教えてくれた。

「よく乾くんだ」


「地下都市の常識、難しすぎません?」


 別の通りでは、子供たちが走り回っていた。


「鬼ごっこ?」

「影踏みです!」

「やめとけ!やめとけ!!」


 アリシアが全力で止める。


「今日それ関連の事件解決したばっかりですから!!」


「なんで?」

「大人の事情だ」


 ルナは光石の露店で足を止めた。


「主、これ」

「ん?」


「光る」

「……全部光ってるな」


「これ、きれい」


「買うか」

「いいの?」

「旅の記念だ」


「主、やさしい」


「財布が軽くなる音がしますわね」

 セレナが楽しそうに言った。



 やがて、入口付近。


 昇降装置の前で、警備隊長が腕を組んで立っていた。


「もう行くのか」


「ごちそうさまでした。」

 アリシアが言う。


「地下都市、悪くなかったな」

 ジルは周囲を見回す。

「生きてる」


「それが売りだ」

 隊長は小さく笑った。

「また来い。次はもう少し静かな時にな」


「事件がないときですね」


「そうだ」


 セレナが、軽く一礼する。


「ご厚意、感謝しますわ」

「……悪魔に感謝される日が来るとはな」


「貴重な経験」

 ルナは頷きながら言う。


「出発するぞ」

「おう。元気でな」


 装置が動き出す。


 ゆっくりと、地上へ。


 光が遠ざかり、

 地下都市ノクティアは、再び岩の奥に沈んでいった。



「……次は北ですか」

 アリシアが聞く。


 ジルは空を見上げた。

「とりあえず、歩く」


「適当ですね……」


「それで、今までもなんとかなってる」


 神がいない世界でも。

 地下都市を後にしても。


 旅は、だいたい――

 そんな感じで続いていく。

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