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神なき世界で悪魔にモテたので、ついでに人類救済します。  作者: ナナツメ蜜柑


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17/26

神が死んだ世界でも陽はのぼる

 朝は、あっさりやってきた。


 空は白く、

 焚き火は灰になり、

 誰も死んでいなかった。


「……起きるぞ」


 それだけで、旅は再開された。


 アリシアは目をこすり、

 ルナは無言でジルの腕に絡み、

 セレナはなぜか一番最初に身支度を終えている。


「悪魔って、朝強いんですか?」

「二日酔いが無いだけですわ」


 それ以上の会話は、必要なかった。


 神が死んだ世界でも、

 朝は平等にやってくるらしい。



 街道は、次第に様子を変えていった。


 舗装は完全に途切れ、

 岩壁は不自然なほど整っている。


「……人工物ですよね」

 アリシアが言う。


「だな」

 ジルは頷いた。


 削られた岩。

 等間隔の段差。

 人の手が入った痕跡。


「都市、近い」

 ルナが呟く。


「人間の匂いを感じますわね」

 セレナが周囲を見渡す。


 その時だった。


「……止まれ」


 ジルが、足を止めた。


「どうしました?」

「人がいる」


 少し先。

 岩陰から、一人の男が現れた。


 革鎧。

 槍。

 胸元には、擦り切れたが確かな紋章。


「……警備兵だ」

 ジルが即座に言った。


「ノクティアの?」

 アリシアが声を潜める。


「たぶんな」


 だが――

 相手は、こちらを見た瞬間に、顔色を変えた。


 悪魔二人。

 剣を持った人間。

 明らかに旅慣れた集団。


「――っ!」


 警備兵は、叫びもせず――


 全力で走り出した。


「待て待て待て!!!」

 アリシアが叫ぶ。


「……あれ」

 ジルが冷静に言う。

「完全に襲撃だと思われてるな」


「そりゃそうですよ!!」


 警備兵は、一直線に走る。

 進行方向は――


「……ノクティアですわね」

 セレナが微笑んだ。


「よし、追うか」

「追うんですか!?」

「追わないと入口分からんだろ」


「結果的に悪者です!!」



 追いかける。


 警備兵は、命懸けだった。


「くそっ……!」

「悪魔だ……!」

「まだ来てる……!」


 後ろを見る。

 ――来ている。


 しかも。


「きゃはは! 人間だ!」

「追いかけっこか!俺たちも混ぜてくれよ!」


 下級悪魔が、湧いていた。


「タイミング最悪です!!」

 アリシアが叫ぶ。


「邪魔ですわよ」

 セレナが一歩前に出る。


 青い宝石が目を引く、右耳のイヤリングに触れる。


 ――ぐにゃり。


 悪魔たちは、急に転んだ。

 足元が溶けたように絡まり、そのまま地面に突き刺さる。


「……え?」

 アリシアが瞬く。


 同時に、ジルが剣を抜く。


「道を塞ぐな」


 ――一閃。


 斬ったのは、首ではない。

 角。

 羽。

 武器。


「ひっ!」

「なんだこいつ!」


「死にたいなら後で来い」

 淡々とした声だった。


 悪魔たちは、即座に散った。


「……」

 セレナが、少しだけ口角を上げる。


「やはり、面白い人間ですわね」


「今は走れ」

「はいはい」



 警備兵は、必死で走り続けた。


 そして――


 地面が、途切れた。

 ここから先は、もう”道”ではなかった。


 巨大な縦穴。

 錆びた足場。

 昇降装置の残骸。


「……ノクティア入口だ」

 ジルが言う。


 警備兵は、そこで振り返り――


「――なっ!?」


 すぐ後ろに立っている四人を見て、悲鳴を上げた。


「お、お前ら!今、援軍を――」


「待ってください!」

 アリシアが両手を上げる。

「襲ってません!!」


「信じられるか!!」


「じゃあ剣下ろします!」

「下ろすな!!衝撃波みたいなので殺す気だろ!?」

「そんな変なものでません!」


 完全に修羅場だった。


 ジルが、ため息をつく。


「……結果的に」

「結果的にって言うな!!」


 セレナが優雅に言った。


「神がいなくても。誤解は元気に生きていますわね」

「主、なつかしい」


 陽は、確かに昇っていた。


 地下都市ノクティアは、目の前だ。


 ――だが、入る前から、ややこしい予感しかしなかった。

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