終末世界では、面倒事は自生するもの
街道は、やけに素直だった。
まっすぐ。
ひたすら、まっすぐ。
「……逆に怪しくないですか」
「終末なのに?」
「終末だから、です」
アリシアは、ひび割れた地面を見下ろす。
踏むたびに、乾いた音がした。
「主、道、親切」
「世界が最後にくれた優しさかもしれんな」
「更地にすることが優しさですか……」
少し歩いたところで、
アリシアが口を開く。
「で、次はどこに?」
「んー……」
ジルは空を見る。
何も書いてない。
「地下」
「空を見て地下を思いつく?」
「地上は飽きた」
ルナが頷く。
「地下、まだ人、残ってる」
「たぶんな」
「たぶんで旅してるんですか……」
アリシアは少し考えてから言った。
「……それ、ノクティアですか?」
「何だそれ」
「地下都市です」
「じゃあ、それ」
即決だった。
「知ってる人がいるなら、たぶん正解だろ」
「判断基準が軽すぎません?」
「重い判断、嫌いでな」
目的地は決まった。
決まったことにした。
ノクティア。
地下にある、まだ終わっていないらしい都市。
そのまま歩いていると、
風に混じって、変な音がした。
「……叫び声?」
「だな」
「主、うるさい方向、あっち」
丘を越える。
そこにあったのは、
小さな村。
柵は壊れ、
家は半壊。
空には、黒い影。
「こんな世界でも地上で暮らそうなんてな」
「……悪魔ですね」
「しかも、数が多い」
ルナが、じっと眺める。
「主」
「ん?」
「面倒」
「ああ」
ジルは、ため息をついた。
「終末ってさ」
「はい」
「こういうのが、道に落ちてるよな」
「落ちてるって言い方やめてください」
「拾わないと気分悪い」
「拾う義務はないんですよ?」
ジルは、新調した剣に手をかける。
「試し切りには丁度いい。ノクティアは後回しだ」
「ですよね……」
ルナが、腕に絡みつく。
「主、面倒、好き」
「好きじゃない」
「でも、放っておけない」
「それは認める」
村では、
誰かが助けを呼んでいた。
悪魔は、楽しそうに集っている。
――ああ。
終末世界では、
面倒は本当に、
そこらへんに自生しているらしい。
三人は、何の相談もなく、
村へ向かって歩き出した。
地下都市ノクティアへの道のりはまだまだ長そうだ。




