神はいないけど、悪魔は隣にいる
神が悪魔に殺されてから三百年――
世界は崩壊し、人類はシェルターに籠って生き延びていた。
そんな絶望の世界で、ひとり地上を歩く青年がいる。
悪魔を従える異端の存在――“悪魔付き”。
彼の相棒は、可愛くて生意気で、ちょっとセクシーな悪魔少女ルナ。
なぜか彼女は同族の悪魔を次々と倒し、人類救済にノリノリ!?
「神はいないけど、主はいるでしょ?」
悪魔にちやほやされ、
人類には警戒され、
それでも今日も世界は救われていく。
神なき世界で始まる、
悪魔×人間の異世界コメディファンタジー!
神が死んでから、三百年。
世界は順調に――いや、見事に壊れた。
大地には悪魔が溢れ、人類は地下や城壁都市に押し込められ、
地上はほぼ「悪魔専用エリア」と化している。
そんな世界で、俺は今日も元気に歩いていた。
「ねえねえ、主。今の村、助けなくてよかったの?」
「助けたら助けたで、また面倒が増えるんだよ」
隣でぴょこぴょこ飛びながら話しかけてくるのは、悪魔の少女――ルナ。
年齢不詳(本人曰く“数えるのをやめた”)、見た目は可憐、性格は小悪魔。
つまり、タチが悪い。
「でもさー? さっきの人間たち、主のこと見てたよ?
“悪魔を連れてる!”って、めっちゃ怯えてた」
「そりゃそうだろ。どう見ても俺、危険人物だし」
悪魔付き。
それが俺の呼び名だ。
悪魔を従える人間。
正確には“契約関係にある悪魔と行動を共にする異常者”。
人類からは警戒され、
悪魔からは「裏切り者扱い」。
――我ながら、立場が終わっている。
「でもルナは主の味方だよ?」
「急にどうした」
そう言って、ルナは俺の腕にぎゅっと抱きついてくる。
柔らかい感触と、ほんのり甘い香り。
「ちょ、離れろって」
「えー? いいじゃん。減るもんじゃないし」
悪魔は距離感というものを知らない。
知っているが、守る気がない。
「それよりさ」
「ん?」
ルナは指を立て、楽しそうに笑った。
「この先に、同族がいるよ。結構イヤな感じの」
「……またか」
神の死後、悪魔は爆発的に増えた。
だが、全員が仲良しというわけではない。
むしろ――
「人間を食い物にするやつは、気に入らないんだよねぇ」
「お前も悪魔だろ」
「“だからこそ”だよ」
ルナの声が、少しだけ低くなる。
彼女はひょんなことから俺と契約した悪魔だ。
そしてなぜか――
同族の悪魔を狩ることに、妙に積極的だった。
「主、今日もやる?」
「ああ。さっさと終わらせよう」
俺は剣を抜く。
直後、廃墟の奥から姿を現したのは、三体の悪魔。
歪んだ翼、獣じみた爪、濁った魔力。
「げ。見た目、最悪」
「同意」
悪魔の一体が吼える。
「人間が……悪魔を連れているだと?」
「そうそう。俺、ちょっと変わっててさ」
肩をすくめながら、俺は笑った。
「悪魔にモテるんだ」
「はぁ!?」
「主、それ自慢するところじゃないよ!?」
ルナのツッコミを背中に受けながら、俺は前に出る。
「ルナ、支援頼む」
「はーい。今日はサービス多めでいくね?」
次の瞬間、世界が赤く染まった。
悪魔たちが消滅した後、
俺はその場に座り込み、深く息を吐いた。
「……終わったな」
「おつかれ、主」
ルナは満足そうに微笑み、俺の隣に腰を下ろす。
「ねえ」
「なんだよ」
「神はいないし、人間は弱いし、世界はボロボロだけどさ」
「うん」
「主と一緒なら、悪くないよ」
そう言って、悪魔の少女は笑った。
神なき世界で、
悪魔にちやほやされながら、
ついでに人類を救う。
――どうやら俺の人生は、
想像以上に騒がしくなりそうだった。




