番外①.潜入捜査するぞ!
「と、とにかく!妹を虐めるような悪女と結婚できん!婚約破棄してエイミーと婚約するぞ!」
改めて宣言すると、生意気な事にアイリーンも言い返してきた。
「私も貴方のような礼儀知らずで、バカというのもおこがましいくらいの、脳みそが蒸発してミジンコ以下の知能しかない男と結婚するなんて、今すぐ絞め殺したいくらい御免ですから婚約破棄は受け入れますけど、妹を虐めたというのは聞き捨てなりません。いつ私が妹を虐めたというのですか?」
「な!お前の発言の方が、よっぽど失礼だろう。いつ俺が礼儀を欠いたというのだ」
扇子で口元を隠しながら、アイリーンが冷ややかな目でこちらを見る。
「人を指さす時点で失礼でしょう。しかも言いがかりをつけるなんて」
「い、言いがかりではない。調べはついているんだぞ!」
「…では聞かせていただきましょうか?私がいつエイミーを虐めたというのか」
冷たい目でこちらを見るアイリーンに、思わず足が震えてしまう。
「王子、しっかり」
「大丈夫です、我々もついてます」
「ジェームズ様、頑張って」
後ろでエイミー達が応援してくれている。
勇気を振り絞って、睨み返す。
「しょ、食事の時にエイミーを呼ばずに、いつも部屋で取らせているだろう。エイミーは寂しがっているぞ」
「そうなんです、いつも私だけ部屋で取らされて…。お姉様達は食堂で家族団らんしてるのに、私だけ仲間はずれで…クスン」
エイミーが俺の後ろから出て、顔を覆って泣いている…何て可哀想なんだ。
「エイミーだけ食事を別にされてるのが、お前の指示だという事はわかっている!妹のこんな姿を見て、可哀想だと思わないのか!?」
アイリーンを非難したが、本人は俺の言葉を無視してエイミーに目を向ける。
「………エイミー」
途端にビクッとして、エイミーが俺の後ろに隠れる。
「私は何度も言ったはずよ『食事を別にとるのは、貴方の為だ』とね。メイド達からも『その方が良い』と、言われている筈よ。言いがかりはよくないわね」
「そ、それは…」
エイミーが後ろで、口ごもる。
すかさずサイラスが、援護射撃に出る。
「どうせメイド達に、そう言えと命じたのでしょう。買収か脅しか知りませんが、正当性を主張する根拠にはなりませんね」
「それはそちらも同じでしょう。買収にしろ脅しにしろ証拠はありません。無い以上、ただの言いがかりですわね」
「ぐっ…」
サイラスが、言い負かされてしまった。
「他に言う事がないなら、言いがかりで婚約破棄を宣言し、公衆の面前で私を侮辱したとして、王家に正式に抗議を…」
「ま、待て。まだ他にもある」
正式に抗議されたとなれば、父上に怒られる。それはマズイ。
慌てて次の虐めを言う。
「ほ、放課後特定の女子達と、何やら空き教室に閉じこもってやっているだろう!エイミーが『参加したい』と言っても『貴方には向いていない』と言って、またも仲間はずれにしていた!」
「だって本当に向いていないんですもの。やめた方がいいと思って言っているんです、エイミーの為ですわ、ねぇ皆様」
そう言って、後ろの生徒達に向かって声をかけると、3人の女生徒が前に進み出た。
「えぇ、私もそう思いますわ」
「エイミー様にはちょっと…」
「刺激が強すぎると思います」
3人共、困ったように笑いながら扇で口元を隠していた。
それがまた、バカにされたように見えて、癇に障った。
「えぇぃ!そういうお前達だって、親切で言っているという証拠はないだろう!?お前達こそ証拠を見せてみろ!」
指差して叫ぶと、4人揃って嫌そうな顔をした。
代表でアイリーンが前に進み出て言う。
「唾を飛ばさないで下さいな、汚い。そんなに言うなら、ご自分の目で思う存分、確かめてみたらいかがです?」
「ようし、言ったな!?そこまで言うなら、直接この目で確かめさせてもらう。首を洗って待っていろ、ワハハハハ」
成り行きだったが、証拠をつかむチャンスを得た。
(証拠をつかんで、一気に婚約破棄してやる!)
勝利を確信し、指差したまま高笑いしていると、音もなく近寄ってきたアイリーンに、扇でぶん殴られた。
「いつまで、人を指差してるんですか?」
「ハイ…すみません」
俺は腫れた頬を押さえて、半泣きで謝罪した。
すると珍しく黙っていたビルが、ボソッと言った。
「断罪してるのか、されてるのか、わからないな…」
とりあえず後ろ足で、蹴っておいた。




