3.相談しました。
憔悴したまま帰宅した私を見て、アレンが心配してくる。
「どうしたのリズ。王宮でバカ王にまた無理難題言われた?それとも王妃が因縁つけてきたの?それとも宰相が、仕事を押し付けてきたの?それとも騎士団長が脳筋な事言った?」
「……その全部よ」
私はうなだれたまま答える。
あの4人組は「王宮の四馬鹿」として、国内の貴族なら誰でも知ってるくらい有名だ。
バカ王は「王命」と称して無茶苦茶な命令をし、王妃は自分より若い令嬢や、見目の良い夫人に会うたびに難癖をつけたり、嫌がらせをしてくる。そして思い通りにならないと、癇癪を起こして暴れるのだ。
宰相は優秀ぶっているが、しょっちゅう書類仕事を他人に押し付ける。バカ宰相がやるのは、国王夫妻へのゴマすりと、目立つ外交と、人に仕事を押し付ける事だけだ。以前他国の王子に書類仕事を押し付けて、外交問題になった事がある。騎士団長は騎士団長で、とにかく国王夫妻に阿る事しかしない腰巾着だ。
「とりあえず部屋に戻ろう。詳しい話はそこで聞くよ」
そう言ってアレンは、私を部屋まで連れて行ってくれた。
「それは酷いね」
アレンは話を聞くなり、怒ってくれた。
私は無言でアレンの入れてくれたお茶を飲みながら、どうすれば良いかわからず途方に暮れていた。
「リズ、僕は君と婚約解消なんてしたくないよ。たとえ君を困らせる事になったとしても…」
アレンが真剣な顔で、婚約を望むと言ってくれるのが嬉しくて、元気が湧いてきた。
「私も嫌よ。でも王命で下されてしまったし…」
「あのバカ王の王命なんて、7割方却下されてるじゃないか。そんな絶対的なものじゃないけど、とりあえず…」
「うん」
「義父上達に相談しよう。ちょうどうちの父上も顔見せに来たし…」
「まぁ、お義父様も?」
「うん、君が登城してる間にね」
「じゃあ、急いでお父様たちに会って相談しないと…」
「うん、あの2人が酒宴を始める前に、相談しないとね」
うちの父とアレンのお父様は仲が良く、時々「息子の様子を見に来た」「友人の顔を見に来た」などと称して、飲みに来るのだ。
そして一度飲み始めると止まらず、まともに人の話を聞こうとしない。
そして翌日は二日酔いで、話を聞けない状態になる。
今は一刻を争う事態なので、二日酔いが収まるまでなんて待っていられない。
アレンと2人、駆け足で父の部屋に向かう。
ノックもそこそこに飛び込むと案の定、目を丸くした父とバートン侯爵が、酒の入ったグラスを持っていた。
危機一髪だった。
「何だと!?あのバカ王が、そんな事言ったのか!」
「バカ王の分際で、何様だ!!」
話を聞いた父とバートン侯爵は、顔を真っ赤にして怒り出した。
間に合ったと思ったが、どうやら少し飲んでしまったようだ。
婚約解消を回避する方法を考えてほしかったが、悪態をつくばかりで解決案が出てこない。
その間も、2人の文句は続く。
「大体何が『国の為貴族の義務を果たせ』だ!自分達だって政略結婚を嫌って、婚約解消した癖に!!!!」
「そうだそうだ!自分達だって『真実の愛だぁ!』とか言ってた癖に………あ」
「…………」
「…………」
それまで叫んでいた父達が、突然言葉を止めて、無言で互いの顔を見やる。
「………どう思う?」
「確かに彼女なら…いやしかし」
「父上?」
「お父様?」
アレンと2人、様子のおかしい父達に声をかけるが、無視される。
「うーむ、気が進まないな…」
「しかし他に方法はない。いつものムチャクチャな王命とはいえ、今回は一応国益になるから、おそらく貴族議会でも承認されるぞ?」
「仕方ないな…しかし確か彼女は、国境ぞいの視察に行っているはずだぞ?今から早馬を出して、助力を請うても、1週間くらいかかるぞ?」
「何とか時間を稼ぐしかないな」
「お父様!おじ様!」
大きめの声で呼びかけると、ようやく気づいたらしくこちらを向く。
「おぉどうした、リズ。そんなに声を荒げて」
「お2人ともさっきから声をかけていたのに、全然気づいてくれないからですよ『彼女』とは、誰の事です?その方ならバカ王達を止められるのですか?」
アレンの問いかけに、2人は言葉を濁す。
「あぁ…まぁ…恐らくな」
「問題は間に合うかどうかだ。恐らく数日中に王宮に呼び出されて、セドリック皇太子との再婚約を結ばされるだろう」
「それでもいいです。イチかバチかでも、このまま諦めるよりは!」
アレンの言葉に、全員が腹を決める。
「よしわかった、今すぐ帰って早馬を出そう。我が家で1番速い馬を使う。こちらとは反対の国境だから、まだ我が家の方が近い」
「では私は、時間稼ぎの理由をリズと考えておこう」
方針は決まり、それぞれが行動に移った。
後は祈るしかなかった。




