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追放された雑用係、実は世界最強でした。

掲載日:2025/12/01

「お前は今日限りでパーティーを追放だ、リアム。」


 そんな宣告を受けたのは、王都で最大手の冒険者パーティー《銀狼の牙》に所属していた日の午後だった。


「……理由は予想できますけど、聞いておきます?」


「決まっている。《雑務》なんてスキル、戦闘の役にも立たん!」


 ジルバート――《剣聖》の二つ名を持つイケメンリーダーは、周りに聞こえるように大声で言った。

 周囲の冒険者たちはクスクスと笑い声をあげる。


「リアム君、今までありがとね。でも……まあ、役に立たないのは事実だし」


 聖女のミリアさえ、目を合わせてくれなかった。


「……はい。今までお世話になりました。」


 ぼくはそう言って静かにパーティーを離れた。


 王都を出て三日。

 ぼくは森の奥で巨大な黒竜――魔王軍幹部“深淵竜カラミティ”と遭遇していた。


「人間よ……逃げずに立ち向かうとは感心だ。我を前に震えぬとは……!」


「あ、鱗が剥がれかけてますよ。痛くないんですか?」


「は?」


 ぼくは《雑務:修繕》《雑務:掃除》を同時に発動した。


 ――パァァァァァ……!


 黒竜の巨体が金色の光に包まれ、ひび割れた鱗が高速で再生し、魔力が整っていく。

 ついでに瘴気も消えた。


「な……な……なにをしたのだ貴様……!?」


「掃除と修理を。汚れと傷があると魔力が暴走しやすいでしょう?」


「バ、バカ者! それはもはや《概念の修復》っ……伝説級の……!」


「あ、やっぱり分かります?」


 本来ぼくのスキル《雑務》は、あらゆる“乱れ”を理想の形に整えるチート能力。

 ただエフェクトが地味すぎて誰も気付かなかっただけだ。


「ふ、不敬を承知で言う! 我を家来にしてくれ!!」


「ドラゴンが……? ぼく、ただ気楽に旅したいだけなんですが」


「荷物持ちでも良い!!」


 こうして、巨大ドラゴンを連れて旅する奇妙な冒険が始まった。


 その日の夕刻。

 隣国の町ロサルタでは、突如として“魔瘴嵐”が発生していた。


「魔瘴気だ! 町が呑まれるぞ!」


「聖女ミリア様は!?」


「まだ到着していない!」


 住民が絶望する中――。


「リアムよ、この町……魔瘴の侵食が始まっているぞ」


「そうなんだ? じゃあ空気、ちょっと拭きますね」


「空気を……拭く……?」


《雑務:清掃範囲拡大》


 ――ゴォォォ……!


 ぼくが軽くタオルを振ると、空に渦巻く黒い霧がみるみる晴れていく。


「えっ……?」

「魔瘴が、消えた……?」

「な、何をしたんだあの青年は……!?」


 町人たちは口を開けて固まった。


「よし、綺麗になりましたね。カラミティ、温泉行こっか」


「うむ。だが町の者が皆、ひれ伏しておるぞ」


「え、なんで?」


 ぼくにはさっぱり分からなかった。


「くそっ! なんで急に魔物の数が増えた!?」


 森で苦戦しているのは、かつての仲間《銀狼の牙》。


「以前はもっと魔物が少なかったはず……」

「リアム君が掃除してただけでは……?」


「馬鹿な! 雑務の何が役に立つ!?」


 その瞬間、森の奥から巨大なドラゴンの咆哮が聞こえた。


「グォォォォォ――!」


「ひぃぃぃ! 深淵竜カラミティだ!」


「だ……誰か……助け……!」


 しかしその背中には――人間がひとり、のんきに乗っていた。


「リアム……!?」

「な、なぜドラゴンに!?」

「ていうか仲良さそう!?」


「あ、ジルバートさん。お久しぶりです。」


「お、お前……なぜその怪物と……!」


「家来になりたいって言われまして」


「家来ぇ!?」


 剣聖は膝から崩れ落ちた。


 ドラゴンを家来にしたことで、世界各地から噂が広がった。


「北の大氷海が溶けたのは謎の青年の力らしい」

「魔王軍の進軍が半年止まっていると聞くぞ」

「いや、もしかして《伝説の整理王》では……?」


 その頃ぼく本人は――。


「カラミティ、今日は温泉→甘味屋→昼寝の順で行こう」


「ふふん。人間の生活も悪くないな!」


「ただひとつ問題が……」


「なんだ?」


「どこへ行っても“救世主様”って呼ばれて落ち着かないんだよね……」


「それはお主が強すぎるからでは?」


「いや、掃除してるだけなんだけど……」


 今日ものんびり旅は続く――はずだった。


 三日後。


「リアム殿へ。ぜひ我が城にお越しください。

 ――魔王レヴィアス」


「魔王から……招待状?」


「お主、ついに世界の中心に立ってしまったな……!」


「いや、掃除しに行くだけだけど」


 こうして、ぼくは魔王城へ向けて歩き出した。


 掃除道具と巨大ドラゴンを連れて。

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