第三十四章 闇の女王
闇に包まれた広間に、二つの影が跪いた。
ロミオとジュリエットは、かつての人間の温もりを失った蒼白な顔で、ロザラインの前に頭を垂れていた。
「おお、ジュリエット。やっと私の可愛い従妹に戻ったな」
ロザラインは玉座に腰掛け、赤い唇に満足げな笑みを浮かべる。
「未来永劫、可愛がってやろうぞ」
ジュリエットは伏し目がちに答えた。
「ありがたき幸せです、ロザラインお姉様」
その声には喜びも涙もなく、ただ絶対の従順が宿っていた。
ロザラインは次にロミオへと視線を移した。
「ロミオよ、よくやった。褒めてつかわす」
その響きは、幼い頃に与えた褒美の言葉と同じだった。
「ありがたき幸せです、ロザライン様」
ロミオは恍惚と呟く。人間であったなら、その目は涙に濡れていただろう。だが今の彼には、涙を流すことすら許されなかった。
ロザラインはその頬を軽く撫で、囁いた。
「これからは未来永劫、そばにいることを許す。これからも、我が力となれ」
「勿体なきお言葉。このロミオ、それ以上の幸せはございません。それだけが、私の望みでした」
彼の言葉には熱狂がこもっていた。
ロザラインはゆるやかに立ち上がり、広間に響く声で宣言した。
「では、私にもその力を与えるがよい。キャピュレットも、モンタギューも……いや、ヴェローナのすべてが未来永劫、我らのものとなるのだ」
ロミオは立ち上がり、背後から彼女を抱きしめた。
白い牙が閃き、ロザラインの白い首筋に突き立つ。
熱い血が流れ出る――だが彼女は苦悶の叫びを上げることなく、甘美な吐息を洩らした。
一度閉じられた瞳が開かれたとき、その瞳には赤い光が宿っていた。
「……これが、闇の力……!」
ロザラインの唇に広がるのは歓喜の笑み。
そして次の瞬間、彼女は広間に響くほどの声で笑った。
「――ハハハハハ!!!」
その笑い声は、夜を震わせ、未来永劫続く支配の始まりを告げていた。




