第三十章 教会の邂逅
蝋燭の炎に照らされた教会の奥。
棺に眠るジュリエットを守るように、パリスは立っていた。
そこへ足音高く現れたのは、追放されたはずのロミオ。
パリスの顔が憤怒に染まる。
「モンタギュー! この墓を汚す気か!
ジュリエットの亡骸を凌辱しようなどとは――許されぬ大罪だ!」
ロミオはゆっくりと剣を抜いた。
その瞳にはためらいの影はなかった。
「……好きに言え。どう思おうが構わん」
剣先を構え、低く言い放つ。
「俺はお前を討つ。それだけだ。
──ロザラインのために!」
その名が教会の石壁に響いた瞬間、パリスは目を見開き、顔を蒼ざめさせた。
しかしすぐに憎悪の炎が燃え上がり、棺を振り返って叫ぶ。
「……そうか、すべてはロザラインの企みだったのか!
ジュリエットを破滅に追いやり、ティボルトを殺させ、
キャピュレットの家を混乱に陥れたのも――あの女だ!」
視線をロミオに突き刺し、怒声を放つ。
「そしてお前は、その下僕!
愛を語りながら血に染まる、哀れな傀儡だ!」
ロミオの口元に、揺るぎない決意が浮かぶ。
「傀儡であろうと構わぬ。
それが俺の愛だ!」
パリスは怒りに震え、剣を抜き放った。
「ならば、ジュリエットの無念を晴らす!
ロザラインの陰謀もろとも、ここで貴様を斬り捨てる!」
金属が激しくぶつかり、甲高い音が教会に響いた。
蝋燭の炎が乱れ揺れ、白布の棺を照らす光と影が交錯する。
聖域は瞬く間に、血と憎悪の戦場と化した。




