第十七章 血に染まる裁き
ティボルトが石畳に崩れ落ちた瞬間、広場は地獄と化した。
キャピュレット家の人々は悲鳴をあげて駆け寄り、その体を抱きしめて泣き叫ぶ。
女たちのすすり泣き、男たちの怒号が入り乱れ、誰もがロミオを指差して叫んでいた。
「ロミオがやった! モンタギューの若造がティボルトを殺したのだ!」
「血で償わせろ! 血で!」
モンタギューの従者たちも引かずに怒鳴り返す。
「違う! ティボルトが先にマキューシオを殺したんだ!」
「ロミオは正義を果たしただけだ!」
石畳の広場は修羅場となり、剣が抜かれかける。
私は物陰からその光景を見守り、胸の奥でほくそ笑んだ。
──混乱こそ、私の望んだ舞台。
ここから先も、すべては私の筋書き通りに進む。
そのとき、ベンヴォーリオが群衆の真ん中に進み出た。
蒼ざめた顔で声を張りあげる。
「聞いてくれ! 俺がすべてを見ていた。
ティボルトがロミオを侮辱し、挑発したんだ。ロミオは戦おうとしなかった!
だがマキューシオが割って入り、ティボルトに討たれ……。
怒りに駆られたロミオが、ついに剣を抜いてティボルトを倒したんだ!」
群衆の声がざわめく。
だがキャピュレット夫人が泣き叫びながら前に出て、ベンヴォーリオを指差した。
「嘘を申すな! 我らが甥ティボルトは潔白!
卑劣なモンタギューの犬が、凶刃を振るったのだ!」
キャピュレット家とモンタギュー家の者たちが互いに罵り合い、怒号はさらに大きくなる。
剣が抜かれ、血が再び流れるのは時間の問題だった。
──その時だ。
重々しい角笛の音が広場に響き、兵士たちが列を成して現れた。
群衆の前に馬が進み出る。
その背にいたのは、ヴェローナを治める大公エスカラス。
黒と深紅の外套を羽織り、胸には金の鎖を下げている。
その眼差しは鋭く、痩せた顔に刻まれた皺が威厳を一層際立たせていた。
「静まれ!」
その声は雷鳴のように響き、広場の喧噪を一瞬で押し黙らせた。
誰もが息をのんで大公の姿を仰ぎ見る。
私は影からその威容を見つめ、胸の奥で冷たい笑みを浮かべた。
私は影からその威容を見つめ、胸の奥で笑みを押し殺した。
──これでロミオは試される。
エスカラスの言葉が、彼をさらに追い詰め、私の望む道へと導いてくれる。




