ひと月遅れのバレンタイン
この物語は【バレンタインの恋物語企画】参加作品です。
ヒロインの小日向瑠奈さん(使用後)
「そう言えば……瑠奈の作ったプチガトーショコラ美味しかったよ」
と彩乃から言われてパスタを巻いていたフォークが止まってしまった。
「うぅ~!なんで今それを言うかな??」
「えっ?! 何で?」
「だからぁ!! 私は学食で差し戻されたんだよ!」
「ああ、そうなんだ、私、現場見てないから」
先月のバレンタインデー
私は生まれて初めて作った“本気チョコ”を、この最大収容人数1300名を誇る当大学の学食で想い人に差し出したのだけど……「キミのはいらない」と突き返されてしまったのだ!
それも秒で!!
傷心の私はそれ以来恥ずかしくて学食に近付けず、ベンチや空き教室でひっそりとランチしていたのだけど……
何とか気持ちにケリを付けて、久しぶりに彩乃と二人、学食に来てみたらこの仕打ちだ!
「もう、ひと月近く前の事なんだからさ!忘れ去られているよ!」
「そんな事無い! こないだサークルの飲み会で入った居酒屋で、『バレンタインデー!午後の悲劇』って噂されてた!」
「サークルの人に?」
「違う!衝立の向うに居たグループに!」
「それは運が悪かったね」
「えーっ?!運が悪いって言うんだ!?」
「しょうがないじゃん!告って自爆したのはアンタだしさ、しかも“あんな”竹下なんかにさぁ……」
私、ため息ついて、止まっていたフォークをクルクル回してパスタを口に運んだ。
「そりゃ、自爆はしたけど……竹下君って“あんな”なの?」
この私の問い掛けに今度は彩乃がため息をついた。
「竹下なんてさ!『オレはスケコマシだ!』って顔に書いてある様なヤツじゃん!」
「そうなの??」
「まったくアンタって子は!……オトコのイロハとか分かってる?」
「そんなの分かんないよ! どーせ私は田舎の女子高出なんだから」
「田舎は関係ないでしょ?」
「あるわよ!県立の女子高だったんだから!」
「県立?私立じゃなくて? なんか歴史ありそうだね」
「古めかしい学校だったわよ。“時が止まってる”って感じの……写真見る?」
「あ、見せて!」
私はスマホをタップしてアルバムのホルダーを開いた。
どこを見られても疚しい写真が一枚も無いのが唯一の強みだ!
「これって、あなたのお母さん?それともおばあさん?」
「なにボケてんのよ!手にスマホ持ってるでしょ?!」
「アハハハ!確かに時が止まってるね!セーラー服に三つ編みお下げの黒縁メガネなんて!いまどきコスプレだってこんな格好しないよ!」
「仕方ないでしょ!私、一年の時から、風紀委員とかやらされて、“取り締まり”や“規範”の役回りで……“はっちゃけ”られなかったんだから! 家帰って、髪をほどいてお風呂に入るまでの僅かな時間に緩くウェーブの掛かった髪で過ごすのが精一杯だったんだから」
「そこまで来ると涙ぐましいね。今のウェービーヘアはその反動?」
「そうよ!高校デビューならぬ大学デビューしようと張り切っていたのに!」
「空回り続きなのね!」
「悪かったわね!」と私は憮然とした。
「でもさ!その写真と今の姿じゃ“使用前”“使用後”レベルだね!」
ここまで言われて、私はさすがに口を尖らせる。
「でも、『可愛い』って言ってくれた人もいるよ!」
この私の“失言”に彩乃の目がキラン!と光った。
「それってどこの誰よ?!」
「……バイトの後輩」
「ああなるほどね!フリーターの女の子なら、気遣いでその位のお世辞は使うよ」
「違うモン!」
「違わないね!お世辞に決まってる!」
「そうじゃなくて!!」
「何よ!」
「だから……オトコの子なんだって……」
「やっとゲロッた!! 前からおかしいと思ってたんだよね!」
「な、何がよ……」
「バイト先に“男子高の王子様”が居るって行ってたじゃん!その子なんでしょ?!」
「う、うん……」
「カレ、高三?」
「高二……」
「それって超優良物件じゃん! アンタみたいな子はこーゆー子と付き合うべきなのよ!」
「それって、自分の精神年齢に合わせてって事?」
「そう!色々初心者なアンタらしくね! その子、アンタの高校時代の写真を見たがるぐらいだから絶対に脈ありだよ! ゆっくりしっかり愛を育むんだね」
「しっかりゆっくり?……」
「そう!慌てずにさ……まずは彼の胃袋からゲット!プチガトーショコラをもう一度作ってバレンタインリベンジだぜ!」
こうして迎えた3月14日。
バイト先の休憩室で彼と二人きりになって……ひとくちサイズだけどとても濃厚なガトーショコラを……私達は甘く味わったのだった。
おしまい
主人公の「名前」は、優しいお姉様のお名前にあやかりました。
イラストは元気で可愛らしくめげない女の子をイメージしました(#^.^#)
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