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34 キャロル姫のお願い

 次の日、ユリアはキャロルにお茶会に誘われた。

 昨日の一件もあり、参加する気にはなれなかったが、断るわけにもいかず、ユリアはお茶会に出席した。


「ユリア様、昨日の晩餐会は楽しんでいただけたかしら? 早めにお姿が見えなくなったので、少し心配していたのですが……」


 ユリアの心情など知るはずもないキャロルが、柔らかな笑みを浮かべて声をかけてきた。


「昨日は、とても素晴らしい晩餐会にご招待いただき、ありがとうございました。素敵なドレスまでご用意いただいて……。それなのに途中で少し具合が悪くなってしまって……申し訳ありませんでした」


 ユリアは、心配するキャロルに対し、途中で退席したことを丁寧に詫びた。


「あら、体調が? それは大変でしたわ。ごめんなさい、私……エルフナルド様を独占してしまって……。知らなくて……エルフナルド様とダンスを踊っておりましたの」

「キャロル様が謝ることではございません。それに、私、ダンスはあまり得意ではないんです。キャロル様はきっとお上手でしょうね。おふたりのダンスを、ぜひ見てみたかったです」


 自分よりもずっと、エルフナルドの隣が似合うキャロル。

 その二人が踊る姿は、きっととても美しいのだろう。

 ユリアはそう想像し、少し羨ましそうに微笑んだ。


「エルフナルド様のエスコートが本当に素晴らしくて……楽しくて、何曲も踊ってしまいましたの。エルフナルド様って、普段もお優しいでしょう? まさに王子様だわ。そんな方の妻でいらっしゃるなんて……羨ましいと思ってしまいます」


 うっとりとした表情で昨日のダンスの話をしていたキャロルだったが、ふと、少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。


「私たちは……政略結婚のようなもので、そんな羨まれるような関係ではありませんわ……」


 キャロルの切なげな様子に、ユリアはそう答えた。


「ユリア様は……エルフナルド様のこと、お好きではないの?」

「……はい。私は、別に……」


 そう口にした瞬間、ユリアの胸が小さく痛んだ。


 ――自分が好きだと認めても、陛下は私のことを好きではない……。

 それに何より、私たちはそういう関係にはなれない。


 胸が締め付けられるような感覚に、ユリアは思わず目を閉じた。

 キャロルはしばらくユリアの表情をじっと見つめていたが、やがて、にっこりと微笑んで口を開いた。


「でしたら……私にお譲りいただきたいわ。私、ずっとエルフナルド様のことをお慕いしていましたの」


 その言葉に、ユリアは思ったほど驚かなかった。

 初めから、キャロルがエルフナルドをうっとりとした眼差しで見つめていたことは、分かっていたからだ。


「……譲る、などと……私が決められることではございません」

「ユリア様は、エルフナルド様のことをお好きではないのでしょう? でしたら、今夜、私たちが二人きりになれるように……協力していただけませんか?」


 キャロルは真剣な表情で、ユリアを見つめた。


「この後、私には別の公務があり、今日はもうエルフナルド様とご一緒する予定がないのです。明日には、皆様もうお帰りになるでしょう? 夜に公務が終わりますので、その時に最後に二人になれるよう、取り持っていただけませんか?」


 そう言って、キャロルはユリアの手を握り、切実な眼差しを向けた。

 ユリアは、握られた手を見つめたまま、しばらく言葉を失っていた。

 

「……わかりました」


 ユリアは小さくそう答えた。

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